秋元通信

在宅勤務制度は「オワコン」なのか?

  • 2025.10.31

イーロン・マスク氏が、在宅勤務に否定的なことは、広く知られています。
 

 
 ひとつ目の記事は、テスラのCEOとして。
 ふたつ目の記事は、トランプ政権下で始動した「政府効率化省(DOGE)」におけるマスク氏の発言を取り上げたニュースです。(ちなみに、マスク氏は既にDOGEを離脱しています)
 
 マスク氏の発言や行動は極端にしても、メディアは在宅勤務を見直す動きがあることを報じています。
 

 
 この記事には、「2024年9月にはアメリカのアマゾン・ドット・コムが世界中の従業員に原則として『週5日出社』を求める方針を示し、波紋を広げた。日本においてもLINEヤフーは週1日(コーポレート部門は月1回)、アクセンチュアは週3日出社の方針を示した」とあります。
 

在宅勤務の今──本当に在宅勤務は減っているのか?

 
 こういった報道を見ると、在宅勤務のオワコン化(※「終わったコンテンツ」の略で、ブームの去ったものを指すネットスラング)を示しているようにも思えます。
 
 しかし、統計調査結果を見ると、どうやらこれは正確ではないようです。
 
 例えば、パーソル総合研究所の調査によると、正規雇用社員のテレワーク実施率は、2022年から続いた減少傾向が2年ぶりに止まり、2024年7月には22.6%、2025年7月には22.5%とほぼ横ばいで推移しています。
 
→参考 「第9回・テレワークに関する調査」(パーソル研究所)
 
 国土交通省の「テレワーク人口実態調査」も確認しましょう。
 雇用型テレワーカー(在宅勤務者)の割合は2021年度にピークを迎えた後、やや低下したものの、2024年度は24.6%と安定的に推移しています。
 
→参考 令和6年度テレワーク人口実態調査(国土交通省)
 
 これらの調査結果は、在宅勤務が新型コロナウイルス対策という一過性の措置ではなく、働き方の選択肢として社会に根付いたことを示唆しています。
 

在宅勤務、その議論のポイントは、「やる/やらない」から「頻度」へ

 
 現在、在宅勤務を巡る議論の核心は、「在宅勤務をやるか、やらないか?」という制度の「有無」ではなく、その「頻度」へと移行していると考えるべきです。
 
 イーロン・マスク氏のような極端な考え方をする経営者はむしろ例外であり、多くの企業は、出社日と在宅勤務日を組み合わせたハイブリッド型の運用へと舵を切り、最適な出社比率を模索する「調整期間」に入っています。
 
 この変化は、パーソル総合研究所調査による最新調査「第十回・テレワークに関する調査」に明確に表れています。
 

  • 在宅勤務実施者のうち、「週に1日以下」の頻度で働く人の割合が、前年の43.6%から49.4%へと増加
  • 前年からの頻度の変化を尋ねた設問では、35.8%が「減った」と回答しており、全体として出社頻度が高まる傾向

 
 この傾向は、多くの企業が在宅勤務のメリットを認めつつも、完全リモートによるコミュニケーション不足や企業文化の希薄化に対する懸念と考えるべきでしょう。
 結果、多くの企業にとって現実的な落としどころが「頻度の調整」、すなわち週に数回の出社を促すハイブリッドワークとなっていると考えるべきです。
 

在宅勤務をめぐる経営側のジレンマ

 
 企業側が「完全リモートによるコミュニケーション不足や企業文化の希薄化」を本気で憂慮するのであれば、在宅勤務を廃止すれば良いのですが。
 これができないのは、在宅勤務を希望する人が多いからです。
 
 先の調査によれば、在宅勤務実施者のうち、今後も制度の継続を希望する人の割合は82.2%に達し、過去最高を更新し続けています。一度手にした通勤時間からの解放や、プライベートとの両立といったメリットは、多くの従業員にとって不可逆的な価値となっているのです。
 
 こういった従業員の意向を無視すれば、退職や転職に繋がる可能性があります。
 在宅勤務を行っている従業員の中には、育児や介護といった切実な事情を抱えている人もいます。つまり在宅勤務とは、必ずしも従業員の好みの問題ではなく、生活、あるいは人生そのものに根ざしているケースがあるのです。
 
 在宅勤務の禁止と、オフィス出社の義務化を命じられても、「面倒くさいなぁ」で済む人がいることも事実です。
 しかし、在宅勤務を行わざるを得ない人々は、オフィス出社を義務化された場合、退職・転職という選択を取らざるを得ません。
 
 経営層からすれば、対面での円滑な意思疎通や偶発的なアイデア創出といった、数値化しにくい組織の一体感、すなわちオフィス出社への求心力は捨てがたいものでしょう。
 かと言って、在宅勤務を全面禁止した結果、優秀な従業員の離職を招けば本末転倒です。
 
 実際のところ、特に管理職からは、部下の働く姿が見えないことによる労務管理や人事評価の難しさを懸念する声が挙がっているとも聞きます。
 
 このジレンマこそが、「在宅制度は維持しつつ、出社頻度を高める」というハイブリッド型の頻度調整へと向かわせる最大の理由です。
 
 これは在宅勤務制度の後退ではなく、双方のメリット・デメリットを天秤にかけた、企業ごとの最適化プロセスが始まったと捉えるべきでしょう。
 
 在宅勤務制度については、また別の角度から取り上げたく考えています。
 お楽しみに!


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