なぜ、お酒を飲んだ後の締めのラーメンってあんなに美味しいんでしょうね??
かく言う筆者も、これまで何度「締めのラーメン」の誘惑に負けたことか…。
お酒を飲む機会が増える年末年始。
今回は、「締めのラーメン」が美味しい理由を、科学的に解説します。
お酒を飲むと、満腹なはずなのにお腹が空く。この不思議な現象には、3つの理由があります。
-
脳が「飢餓状態だ!」と警報を鳴らす
お酒(アルコール)が入ると、肝臓は毒であるアルコールの分解にかかりきりになります。すると、普段行っている「糖分を作る作業(糖新生)」がストップし、血糖値が下がります。
さらに、アルコールは脳の「AgRPニューロン」という神経細胞を直接刺激します。この細胞は、本来「餓死しそうだ!食べろ!」と命令するスイッチ。結果、脳は「命の危機だ!」と勘違いして、手っ取り早いエネルギー源である「炭水化物(麺)」を猛烈に要求するのです。 -
「脂っこいもの」を欲する悪魔のループ
こってりとしたラーメンが食べたくなるのにも理由があります。アルコールを摂取すると、脳内で「ガラニン」という物質が増えます。このガラニンは「脂肪を食べたい」という欲求を高めるのですが、恐ろしいことに脂肪を食べるとさらにガラニンが増えます。
「飲む→脂が欲しい→食べる→もっと飲み食いしたくなる」という無限ループ…、これが締めのラーメンへの欲求が高まる原因です。 -
身体は「水と塩」を求めている
お酒の利尿作用で、身体からは水分と塩分(ナトリウム)がどんどん抜けていきます。脱水状態の身体は、生存本能として「水と塩」を求めます。
「水分+塩分+炭水化物+脂質」。
このすべてを一杯で満たしてくれるラーメンは、酔った脳にとってはすべての要求を満たす完全食に見えてしまうのです。
以前、筆者は「ラーメンは身体に悪そうだから、蕎麦にしておこう」と、ざる蕎麦を締めに食べたことがあります。
しかし、イマイチ物足りなかったんですよね…。
理性的に考えると、ラーメンの代わりに蕎麦を締めにするというのは正解です。
蕎麦にはアルコール分解を助けるビタミンB1やナイアシンが豊富に含まれているからです。
しかし蕎麦では、酔った脳を満足させることは難しいです。なぜならば、体内では糖質スパイクという現象が悪さをしているためです。
-
原因1.脳が欲しがる糖質スパイクが起きなかった
「糖質スパイク(血糖値スパイク)」とは、食後に血糖値が急激に上昇する現象のことです。通常、これは血管を傷つけるため健康には良くないとされます。
しかし、飲酒によって低血糖状態にある脳は、「一刻も早く血糖値を上げてくれ!」と警報を上げています。
ラーメンの場合
精製された小麦粉は消化吸収が早く、食べた直後に血糖値を急激に上昇させます。これが糖質スパイクです。
酔った脳は「燃料が来た!助かった!」と強烈な快感を感じ、満足します。
蕎麦の場合
蕎麦は血糖値の上昇が緩やかな低GI食品の代表格です。
身体に優しくゆっくりと糖分が吸収されるため、酔った脳は「まだ燃料が来ないぞ!もっと食わせろ!」と誤った警報を発し続けます。
つまり、蕎麦は身体には優しいけれど、「今すぐ血糖値を爆上げしてほしい」という脳のドラッグ的な欲求を満たしてくれなかったわけです -
原因2.「ガラニン」が無視された
前述の通り、お酒を飲んだ脳内ではガラニンという脳内ホルモンが、「脂肪を摂取しなさい」という命令を出しています。
しかし、かけ蕎麦や盛り蕎麦には、脂質がほとんどありません。
脳が「脂をくれ!」と叫んでいるのに、さっぱりした出汁と蕎麦だけが送られてきたため、脳内の報酬系回路が満たされず、「コレジャナイ感(物足りなさ)」として残ってしまったのです。
日本ではラーメンですが、世界を見渡すと「飲んだ後の締め」の文化はさらにカロリー過多な料理が溢れています。
-
脂と炭水化物の塊が定番な欧米
アメリカでの定番はピザです。チーズと生地の塊で、塩分と脂質を一気に補給します。
ドイツ・イギリスで人気なのはドネルケバブです。たっぷりの肉とソースで、深夜の胃袋を満たします。
欧米では「酔ったら脂っこいもの」という本能に忠実なスタイルが主流のようです。 -
科学的に理にかなったアジアの締め料理
- 韓国では、「ヘジャングク(酔い覚ましスープ)」があります。牛の血や豆もやしが入ったスープで、身体を労る文化が根付いていると言えるでしょう。
- 中国・香港では、消化に良いお粥が定番だとか。
考えてみると、日本のラーメンは「アジア的な汁物」と「欧米的な脂っこさ」を併せ持つ、ハイブリッドな存在と言えるかもしれません。
美味しい「締めのラーメン」ですが、代償は小さくありません。
まず、飲んだ後は、肝臓がアルコール分解で忙しいため、ラーメンの脂質や糖質は処理されにくく、そのまま脂肪細胞へ直行します。「締めのラーメンはより太りやすい」と言えます。
また、食べてすぐ寝ると、緩んだ胃の入り口から胃酸が逆流し、食道を焼きます。つまり逆流性食道炎の危険があります。
飲んだ翌朝の胸焼けは、この逆流性食道炎が原因であるケースが多いそうです。
ラーメンの誘惑に勝つための、科学的に正解な締めをご紹介します。
-
「豆もやし」のスープ(または味噌汁)
豆もやしに含まれるアスパラギンは、アルコール分解酵素の働きを助け、代謝をスピードアップさせてくれます。韓国のヘジャングクは、理想的な締めと言えます。 -
シジミのお味噌汁
定番ですが、シジミに含まれるオルニチンは肝臓の解毒作用をサポートします。 -
デザートにハチミツやフルーツ
意外ですが、果物に含まれる果糖(フルクトース)には、アルコールの分解を早める効果があるという研究があります。
寝る前にスプーン1杯のハチミツを舐めるのも効果的なんだとか。 -
二日酔いには、卵料理
もし二日酔いになってしまったら、朝食は卵を食べましょう。卵に含まれるシステインが、二日酔いの元凶である毒素(アセトアルデヒド)を退治してくれます。
飲んだ後の「締めのラーメン」が美味しいのは、脳が正常に働いている証拠(あるいは正常にバグっている証拠)と言えます。
ただし、本稿で解説したとおり、リスクも大きいですね…。
「飲んだ後には、必ずラーメンを食べる」という知人がいますが、これはNG。
しかし、心の底から楽しむことができた飲み会で、仲間から「締めのラーメン行きましょうよ!」と誘われたのに、断るというのも忍びないです。
そういう時には、せめて「スープは残す」「全部食べない」といった対策を行い、しっかりと水分補給をしてから早めに就寝しましょうね。







