秋元通信

鈴木清が振り返る2025年、中小物流事業者が直面する「試練」と「格差拡大」

  • 2025.12.25

こんにちは。
秋元運輸倉庫 常務取締役、そしてイーカーゴ代表取締役の鈴木清です。
 
2025年は、ますます中小物流事業者にとって厳しい一年となりました。
まずは、トラック輸送ビジネスについて振り返りましょう。
 
 

厳しさを増すトラック輸送ビジネス、6つのポイント

 

  • メーカーの貨物減少
    製造業の海外シフトや、国内景気の停滞を背景に、原料関連の輸送需要が低迷。
    安定した貨物源の減少は、売上確保を一層難しくしました。
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  • 下請けからの運賃アップ要請
    2024年4月から始まった時間外労働時間の上限規制や、燃料費・物価高騰を受け、傭車先(下請け)からの運賃引き上げ要請が常態化。
    コストは増加の一途を辿りました。
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  • 荷主へのコスト転嫁の厳しさ
    一方で、荷主との運賃交渉(コスト転嫁)は厳しい状況が続いています。
    下請法が改正され、2026年1月から中小受託取引適正化法(取適法)が施行されるものの、長年の商慣習がそう簡単に変わるわけもありません。相変わらず、私どものような中小事業者にとっては、大口荷主・大手企業との交渉は難しいままですし。
    結果、十分なコスト転嫁ができず、収益を圧迫し続けました。
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  • 運賃相場の上昇と格差拡大
    全体的な運賃相場は上昇傾向にありましたが、それは主に新規やスポット案件、または大手物流事業者が獲得する案件が中心であり、影響は限定的でした。
    正直なところ収支のバランスが厳しく、お互いに納得できる落とし所を粘り強く探っています。
    こういった案件は協力会社に再委託することも難しく、結局「儲からない仕事は自社車両でこなす」という不採算業務が増加しています。
    このような運賃格差をより一層感じたのが2025年でした。
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  • 協力会社確保の難しさ
    2025年後半にかけて、特に長距離や特殊な時間帯の傭車がさらに取りづらくなりました。
    どの運送事業者もクルマもドライバーも足りていません。よって、特に繁忙期にはますますクルマが見つからない状況が続いており、短期スポット案件への対応力が低下していることを自覚しています。
    またクルマを確保できたとしても、運賃が合わないケースも増えてきました。
    さらに言えば、「早朝深夜」や「長距離」など、改善基準告示に抵触しそうな案件は、運賃交渉以前の段階で断られることも増えています。
     
    結果、前項で申し上げた「儲からない仕事は自社車両でこなす」に加え、「面倒な案件は自社車両でこなす」状況が増えています。
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  • 地場配達の新規案件の減少
    協力会社確保の難しさに反比例し、地場配達(近距離輸送)の新規案件が伸び悩んでいます。そのため採算性の悪い、旧来手掛けてきた地場案件を手放したくとも、手放せない状況が続いています。

 
 

倉庫ビジネス・物流不動産ビジネスの厳しさを示す3つのポイント

 

  • 大型倉庫の供給過多と案件の短期化
    さまざまなレポートが、大都市圏における大型・高性能倉庫の供給過多を示しています。
    EC需要拡大を見込んだ大型倉庫の竣工が、必ずしも目論見どおりにいっていないのでしょう。
    結果、当社のような中小事業者が運営する既存の中・小型倉庫の相対的価値が低下していることを感じています。
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  • サブリース物件の借主不在
    見かけ上、大型倉庫の供給は順調に伝わっているケースもあります。「満床竣工」をアピールする物流不動産デベロッパーもいますし。
    しかし実態として、床は結構空いているという話も漏れ伝わってきます。今までは、こういった空きスペースもサブリースで埋めることができたのですが、最近ではサブリースの借り主探しも難航していると聞きます。
     
    結果、空室リスクが高まり、固定費の負担が経営を圧迫する事業者も増えていると聞きます。
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  • 短期スポット案件と寄託貨物の減少
    長期・安定的な契約である寄託貨物(保管料収益)の案件が少なくなり、代わりに短期・小規模なスポット案件ばかりが増加しています。
    倉庫稼働率は変動しやすくなり、安定的な収益確保が困難になりつつあります。

 
 
生成AIに尋ねてみたところ、今年は22回も日経平均株価は史上最高値を更新したんだとか(終値ベース)。
このように聞くと、見かけ上は景気が良かったように思えますが、私ども、物流事業者からすると、「景気が良くなっている」という感覚は掴めていません。
 
物量は減り、また人材確保の困難さから、売上を追求することがどんどん難しくなっていますから。
 
「サブリース物件の確保が難しい」という事態は、「看板と内情に乖離を感じる」日本経済の本質を象徴しているような気分にすらなります。
 
 

法律は中小物流事業者を守ってくれるのか?

 
貨物自動車運送事業法、物効法、トラック適正化法など、政府は次々と物流関係の法律を改正・公布・施行していきます。
ただ、これらの政策を我々物流事業者が両手を挙げて歓迎できるかと言えば…、難しいですよ。
 
例えば、改正貨物自動車運送事業法では、トラック運送事業の許可について、5年毎の更新制を導入します。
 
これは過去に脛に傷を負った──つまり行政処分や法令違反など──事実が、更新時に問題になることを意味します。
さらに言えば、一連の法令遵守に向けた社内体制やシステムの整備に関係する負担も、経営には大きくのしかかります。
 
事業許可の更新制度は、法令違反を繰り返し、業界健全化を阻む悪質な事業者を排除し、業界の健全化を目指すものですが、この負担は軽くありません。
 
そもそも、まだ詳らかになっていませんが更新時の審査内容やそのコストってどんな具合なのでしょう??
 
事業継続のために負担すべきコストであるとは認識していますが、そのコスト負担と増加は、特に中小事業者にとっては頭の痛い問題です。
 
 

中小物流事業者が生き残るための3つのヒント

 
まず最初に考えるべきは、「協業」と「協働」です。
1社だけで行えることには限界があります。これからは他社との「協業」と「協働」を推進し、人手不足やコスト負担に対する対応策をより一層模索する必要があります。
 
次に考えなければならないのは、倉庫事業の付加価値を探ることです。
残念ながら、扱うモノによって勝ち組・負け組がはっきりと見えてきてしまいました。
薄利多売のモノを扱う倉庫は、しんどいですよ…。
 
倉庫業は、付加価値の高い商材へとシフトし、また同時に流通加工などの付加価値の高いサービスを行うようにシフトしなければ、今後の生き残りは難しいです。
 
最後に挙げるのは、やはり人財です。
例えば、営業スタッフがいない運送事業者は、荷主との運賃交渉においても後手を踏んでしまいます。
営業がいなければ、優良な新規案件の獲得も難しいですし、そうなれば「事業採算性の低い既存案件に固執しなければならない」という負のスパイラルに陥ります。
 
 
物流産業が労働集約型産業であることが、ビジネスモデル上の弱点となっていることはこれまでも指摘されてきました。
人に頼った「量」のビジネスは、もはや限界なのは言うまでもありません。
 
「量から質への転換」──とても難しい課題ですが、これを目指さなければ私ども、中小物流事業者の未来は暗いままでしょう。


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