秋元通信

「物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ」(国土交通省)を解説

  • 2026.4.17

国土交通省が、「物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ」提言を策定し、発表しました。
 
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000995.html
 
これは、2026年4月施行の物流効率化法において、規定量以上の貨物輸送を行っている荷主(特定荷主)に選任が義務化される役員である「CLO」(Chief Logistics Officer、物流統括管理者)について、国土交通省が求められる役割や能力、育成までのキャリアパスなど示したガイドラインです。   これを、秋元通信流に解説しましょう。  
 
物流統括管理者の「法令上の責務」

  CLOには、単なる物流部門の長ではなく、経営幹部として以下の法的義務・努力義務を果たす責任があります。
 
  • 中長期計画の作成
    物流効率化に向けたKPIの設定と進捗管理
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  • 3つの努力義務
    「積載効率の向上」「荷待ち時間の短縮」「荷役時間の短縮」
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  • 部門間・社外連携
    開発、生産、販売等の各部門や取引先との調整体制の構築
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ミッション・責任・役割
 
ここで留意すべきこととして、物流とロジスティクスの違いが説明されています。 「同じじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、日本産業規格(JIS Z0111:2006)では、以下のようにそれぞれを定義しています。  
  • 物流
    物流とは、物資を供給者から需要者へ、時間的及び空間的に移動する過程の活動。一般的には、包装、輸送、保管、荷役、流通加工及びそれらに関連する情報の諸機能を総合的に管理する活動。調達物流、生産物流、販売物流、回収物流(静脈物流)、消費者物流など、対象領域を特定して呼ぶこともある。
  •  
 
  • ロジスティクス
    物流の諸機能を高度化し、調達、生産、販売、回収などの分野を統合して、需要と供給との適正化を図るとともに顧客満足を向上させ、併せて環境保全、安全対策などをはじめとした社会的課題への対応を目指す戦略的な経営管理。
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本書では、両者の違いを「物流が輸送等の具体的な活動・機能であるのに対し、ロジスティクスはこれらの上位概念として戦略的な経営管理を指すものとされています」と説明しています。  
本書において、物流とロジスティクスの違いを説明しているのは、従来の物流担当役員との違いを説明するためです。余談ですが、CLOに関する議論の中には、CLOという呼称よりも、CSCO(Chief supply chain Officer)を推す声もありますが、これはCLOに求められる役割が、本来は物流の最適化ではなく、サプライチェーンの最適化であることに由来する意見です。 物流の最適化とは、サプライチェーンの最適化でしかありませんからね。   こういったことを踏まえたうえで、CLOが担うべき役割として説明されているのは、以下です。
 
◯ 4つの責任対象
  • 法規制への対応(コンプライアンス)
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  • 物流全体の最適化(サプライチェーンの持続性確保)
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  • 企業価値の向上(コスト削減から売上拡大への貢献)
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  • 社会的課題への対応(温暖化対策や安全対策)
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◯ 具体的な役割
全社横断的な立場から、利益相反が起きやすい部門間(例:在庫を減らしたい物流 vs 欠品を避けたい販売)の高度な調整・意思決定を行うこと。  
 
求められる知識とチーム体制
 
CLO自身はゼネラリストとしての能力が強く求められますが、すべての専門知識を一人で備える必要はなく、専門チームによる補完が推奨されています 。   ここで言うゼネラリストとは、単に「物流の現場に詳しい人」ではなく、「会社全体の動きを幅広く理解し、経営の視点から物事を判断できる人」を指します。  
 
◯ CLOに必要な知識・知見(キーワード)
  • 経営戦略・財務: 自社の事業価値における物流の役割を把握する。
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  • サステナビリティ: ESG投資や脱炭素、SDGsの視点。
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  • デジタル技術: AI、IoT、ロボティクス等の物流DXに関する基礎知識。
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  • 法務: 物流二法や下請法等の遵守。
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  ◯ 連携すべき関係者 社内の全部門に加え、同業他社との「共同配送」や、3PL(物流アウトソーシング)事業者、テック系スタートアップとの連携も重要です 。   
 
人材の確保と育成
 
CLOをどのように確保し、育てるかについての指針です。
 
◯ キャリアパスの例:
  • スペシャリスト型: 現場から叩き上げの物流専門家 。
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  • ゼネラリスト型: ジョブローテーションで多部門を経験した経営層 。
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  • 外部登用: 他社や物流事業者からのスカウト 。
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◯ 育成の考え方
 
他のCxO(CEO, CFO等)と同等の待遇を確保し、役員志向の人材に対して物流の重要性を訴求することが必要としています。
今後、国としても優良事例の収集や、高度物流人材を育成するための教育プログラムの基準策定などを進めていく方針を打ち出しています。
 
 
さて、以下は筆者の私見です。
  2026年3月3日の日経新聞によれば、CLO의 選任率は特定荷主の約3割に留まり、2割以上の企業が、「議論もできていない」「分からない」と答えています。
 
  • 「物流責任者『CLO』設置率8割迫る 義務化まで1カ月、民間調査」(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC255380V20C26A2000000/
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CLOは高度物流人材に分類される、とてもスキルフルな人材です。
それゆえに現在もCLOをテーマにしたさまざまなセミナーが開催されるほど注目を集めているものの、一方でいざ社内で選任しようとすると「適当な人材がいない…」というジレンマを感じる企業が多いのも実態なのでしょう。
  今まで行われてきた民間の議論では、CLOに関するスキルフルな部分にばかり注目されてきたきらいがあります。対して、国土交通省が発表した今回のガイドラインは、やや現実的なトーンにまで落として CLOを定義していることに意味があると筆者は感じています。
  あくまで筆者の私見であることを強調しておきますが、現実的に市井で議論されているCLOの要件を満たすような人材は、国内に100人もいない可能性があります。 特定荷主に該当する企業は約3,000社と言われていますから、大多数の特定荷主がCLOの要件を満たす人物を選任できないことになります。
 
とすれば、「まだCLOの能力は満たしていないけれども、選任後、CLOの要件を満たせるように成長できる人材」を選任するしかありません。
 
端的に言えば、筆者は、現時点においてCLOに求められるのは人格者だと考えています。
 
現場からの声──これは物流現場はもちろんですが、製造、品質、企画、営業など、社内のすべての部門が対象となります──を傾聴することができること。
 
傾聴したさまざまな声を咀嚼し、法令対応を含めたサプライチェーンの最適化のために必要なことを総合的に判断できること。ただし、このプロセスを十全にこなせる人材がまだ少ないことは、既に述べとおりです。だからこそ、このプロセスはコンサルタント等の外部人材に頼らざるを得ないケースもでてくるでしょう。
 
そして、判断した経営方針を、逆に各現場・各部門に対し、要請し、利害調整を行うことができること。
 
こういったことを総合的に判断すると、今、CLOに求められるのは知識ではなく、とても難易度の高い各現場からの傾聴と利害調整を行うことができる人格者だと考える次第です。
 
 
CLOについては、また何かトピックがあればご紹介しましょう。
お楽しみに。

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