秋元通信

「2025年度 物流コスト調査報告書【概要版】」(JILS)を解説

  • 2026.5.13

2026年は、日本の物流ビジネスにおいて歴史的な転換点となるはずです。
物流効率化法や貨物自動車運送事業法、取適法などの法令改正に後押しされ、これほどまでに「物流を改善しよう」という機運が高まったことはありませんから。


その空気感は、統計資料にも現れているのでしょうか?


日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が発表した「2025年度 物流コスト調査報告書【概要版】」を解説しましょう。







売上高物流コスト比率の実態:過去20年で4番目の高水準

2025年度調査(※調査の都合上、主に2024年度の実績値)における全業種平均の売上高物流コスト比率は5.32%となりました。前年度の5.44%からは0.12ポイント低下したものの、過去20年間を俯瞰すると依然として4番目に高い水準にあります。


この背景には、物流事業者からの強い値上げ要請や、人手不足に伴う人件費の高騰があります。単年度の微減に惑わされることなく、長期的な上昇トレンドは継続していると見るべきでしょう。



◯ 業種別の物流コスト比率(2025年度調査)
業種によってコスト構造には差が見られます。


業種大分類 売上高物流コスト比率 前年度比増減
製造業 5.26% -0.11pt
非製造業 5.48% -0.12pt
 (卸売業) 5.57% +0.38pt
 (小売業) 5.40% -0.98pt
全業種平均 5.32% -0.12pt
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マクロ物流コスト:過去最高水準の55.4兆円

個別の企業活動(ミクロ)だけでなく、日本全体(マクロ)の物流コストも膨らみ続けています。2023年度の日本のマクロ物流コストは55.4兆円と過去最高を更新しました。さらに、2024年度の予測値は56.6兆円前後と、さらなる増加が見込まれています。
対GDP比で見ても9.3%と高水準であり、物流コストが国民経済において無視できない重みを持っていることがわかります。




「値上げ要請」はもはや日常に

荷主にとって物流事業者からの値上げ要請は、いまや避けて通れません。


  • 要請の有無
    回答企業の92.8%が値上げ要請を受けています。
  • 応否の状況
    要請を受けた企業のうち、実に97.2%が値上げに応じました。
  • 対象コスト
    最も多いのは「輸送費」で、次いで「荷役費」となっています。

値上げ要請を受諾した企業の割合が非常に高い水準で推移していることが分かります。
ただし、物流事業者側の要請について、満額回答したのか、それとも妥協点を協議し応じたのか、この調査では不明です。


いずれにせよ、物流危機に対する荷主企業の理解が進んだという側面と、応じなければ「運んでもらえない」というリスクに対する認識が広まっていることは確かでしょう。




2024年問題への対応:価格転嫁の現在地

「物流コスト上昇分を自社製品の価格に転嫁できているか」という問いに対し、全業種では「対応できた」が43.6%、「少し対応できた」が45.9%となりました。しかし、業種間で明暗が分かれています。


  • 製造業では、51.2%が「対応できた」と回答。
  • 卸売業では「対応できた」は22.6%にとどまり、32.3%が「未対応」と回答しています。

卸売業は中間に位置する業態ゆえ、コスト増を価格に転嫁しにくい苦しい立ち位置が浮き彫りになっているものと考えられます。






これからの戦略:効率化から「デジタル化」へ

これまで行った物流施策への評価と、今後の物流施策の優先順位についてもレポートされています。


これまで効果が大きかった施策は「積載率向上」や「在庫削減」といった、いわゆる現場の知恵による改善でした。しかし、2025年度の実施予定施策の第1位には「物流デジタル化の推進(AI、RPA、電子化等)」が躍り出ています。



◯ 物流コスト適正化への効果が大きかった施策

  1. 輸配送改善(積載率向上、混載化、帰り便の利用、コンテナラウンドユース、エコドライブなど)
  2. 在庫削減
  3. 配送経路の見直し
  4. 配送頻度の見直し
  5. 保管改善(保管の効率化、ロケーションの見直しなど)

◯ 実施予定の物流施策

  1. 物流デジタル化の推進(AI導入、RPA導入、伝票電子化、物流情報システム導入など)
  2. 物流の共同化
  3. 輸配送改善(積載率向上、混載化、帰り便の利用、コンテナラウンドユース、エコドライブなど)
  4. 自動化・機械化の推進(マテハン・ロボット・自動倉庫などの導入など)
  5. 在庫削減

「物流コスト適正化への効果が大きかった施策」では7位だった「物流デジタル化の推進」が、「実施予定の物流施策」では1位に。
同様に26位(回答数2)だった「自動化・機械化の推進」が「実施予定の物流施策」では4位になっているのが興味深いです。


自動化・ロボット化を含めた物流DXは、コスト削減よりも生産性向上や省人化といった点で注目されているのかもしれません。



例えばフィジカルインターネットに対しては、物流コストの大幅な削減への期待があります。ただし、フィジカルインターネットを実現(社会実装)するまでには、膨大な投資が必要となります。


現状、原油高や人件費高騰などに伴い、物流コストが増加傾向にあるのはとても理解しやすいのですが、今後物流改善が進展することによって、数年後には物流コストは減少に転じるのでしょうか。
それとも、物流コストは高止まりするものの、他のコスト(特に人件費)が圧縮されて、利益に貢献するようになるのでしょうか。


今後の動向を注意していかなくてはなりません。

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