秋元通信

「アメとムチ」は、どちらが効果的なのか?

  • 2016.3.16

「アメとムチは使いよう」
よく言われる言葉ですが、その使い分けは、とても難しく感じます。

実際のところ、「アメとムチ」は、どちらが効果的なのでしょうか?
もっと言ってしまえば、アメかムチ、どちらか一方ではダメなんでしょうか?
今回は、「アメとムチ」のうち、主に「ムチ」について考えてみます。

おさらいです。
「アメとムチ」とは、アメ = 報酬であり、ムチ = 罰をさし、教育や業務活動の場において、ヒトを望む行動へと誘導しコントロールする方法のことを言います。

「アメとムチ」を議論する上で、引き合いに出されることの多い、マウスを使った実験があります。

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マウスをT字路状のケースに入れます。
マウスは、T字の下側にいます。T字の右側には餌を用意、左側には電気ショックを用意しておきます。何度か同じ実験を行うと、マウスは学習し、右側にしか進まなくなります。

次に別のマウスを使って実験を行いますが、今度は左側にある電気ショックの電流を強くしてみます。
どうなると思いますか?
学習効果が上がるどころか、マウスは強い電気ショックを受けると、その場にうずくまり動かなくなってしまうのです。電気ショック(=ムチ)を恐れるあまり、餌(=アメ)を取りに行くことをしなくなる、無気力なマウスになってしまいます。

 

 

 

ヒトをコントロールする上で、ムチが効果を発揮することは、さまざまな実験で証明されています。ただし、マウスに限らず、ヒトにおいてもムチの強度を上げることが逆効果になることも、実証されています。

では、アメの効果はどうなんでしょうか?
アメは、使い方を誤るとムチになって、逆効果になる場合があります。以下、筆者自身の経験をご紹介しましょう。

話は、筆者が売り込み営業会社に在籍してたときのことです。
当時、私はテレフォンアポインターを20名ほど抱えるチームのリーダーを務めていました。外勤営業を送り込むためのアポ取り電話部隊です。
皆さまも経験あるかと思いますが、「社長いらっしゃいますか?」と電話をかけてくる、あのうざったい営業スタイルを、私も仕事としておりました。

私がリーダーを務めるチームを、Bチームとします。
着任した当時、私はなかなか成績を出せず、Bチームは毎月目標達成できないダメダメチームでした。
隣には、毎月目標を達成している常勝チームがいました。こちらをAチームとします。
アポインターたちは皆アルバイトですが、目標を達成すれば達成金が出ます。時に、その達成金は、時給の倍以上になることもありました。アルバイトでありながら、月に100万円近く稼ぐ猛者もいました。

着任して半年を過ぎたころ、Bチームはようやく目標を達成することができました。
私のもとにいたアポインターたちは、アメである達成金効果もあり奮起、目標達成の回数も増えていきます。

一方、Aチームは、Bチームの活躍と反比例するように成績が下降、ある月、ついに目標達成を落としました。
たったひと月(一回)のことですが、それをきっかけにAチームは、崩壊してしまいます。

達成金をもらえなかったAチームのアポインターは、それをバツだと感じました。
実際、「これまでずっと頑張ってきたのに、たまたま目標を落としただけで、なぜ達成金がもらえないのか!!」と、部長に直談判したアポインターもいました。
Aチームのアポインターたちの士気は、はた目からもはっきりと分かるぐらい下がりました。私はもともとAチームの外勤営業だったため、アポインター全員を知っています。気心の知れた私に愚痴を言い、Bチームに移りたいと言い出す者もいました。

結局、Aチームのリーダーは、成績を復活させるどころか、事態を収束することもままならず、退社してしまいました。
なぜ、このようなことになったのでしょう。
私は、Aチームリーダーのアポインターたちに対する、モチベーション・コントロールに問題があったと考えています。

彼のやり方は、勝つことの価値を喜ぶのではなく、負けることのぶざまさを刷り込むモチベーション・コントロールでした。負けることの恐怖を教える、と言ってもいいかと思います。
Aチームにとって、負けること=バツであり、それも極めて強度の高いバツでした。
いざそのバツを受けた時、前述のマウスのように、無気力になってしまったんでしょうね。

もうひとつ。
勝つことの価値を疎かにした結果、目標達成 = 達成金 = アメであることすら、Aチームのメンバーは忘れていました。
Aチーム崩壊後、私は元Aチームのメンバーも含めて面倒を見るようになりましたが、意識を変えることができず、辞めていったアポインターも数人いました。
「アメとムチは使いよう」という言葉。
アメとムチのどちらが効果的であるのかは、実証されていません。多くの実験、研究は行われているのですが、「使いよう」の加減についても五里霧中にあるのが実際のところです。

「アメとムチ」の使い分けにおける難しさは、多くの方が経験したことがあるのでないでしょうか。

いずれ、今度はアメを主テーマに秋元通信でご紹介したいと思います。


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