秋元通信

厚生労働省の飲酒ガイドラインを紐解く

  • 2024.3.29

2024年2月19日、厚生労働省は「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表しました。
 

 
意外なんですけど、厚生労働省がこういった指針を発表したのは初めてのことだそうです。
このガイドラインをご紹介しましょう。
 
 
 

「純アルコール量」という指針

 
本ガイドラインを発表した目的については、以下のように書かれています。
 

「アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用されることを目的としています」

 
「不適切な飲酒を減らす」とありますが、本ガイドライン中では「考慮すべき飲酒量(純アルコール量)」は示されますが、「適切な飲酒量」は示されていません。
なかなか、酒飲みには厳しい内容になっています。
 
 
本ガイドラインでは、「純アルコール量」という数値で、飲酒量の指針を示しています。
 

純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(※アルコールの比重)

 
このような数式で算出できます。
 
 
例えば、アルコール度数が5%のビール500mlにおける純アルコール量は以下のように算出されます。
 
500ml × 5% / 100 × 0.8 = 20g
 
また、アルコール度数の高いストロング系酎ハイ500mlの純アルコール量は以下のとおりです。
 
500ml × 9% / 100 × 0.8 = 36g
 
 
 

「不適切な飲酒量」ってどれくらい?

 
ガイドライン中には、以下の記述があります。
 

「令和6年度開始予定の健康日本21(第三次)では、「生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上)を飲酒している者の減少」を目標とし、男女合わせた全体の目標値として10%を設定し、健康づくりの取組を推進することとしています」

 
つまり、男性の場合は一日あたりビール1000ml、女性の場合はビール500mlの晩酌が習慣化しているのはヤバいですよ、ということですね。
 
またガイドラインでは、純アルコール量と疾病別の発祥リスクの関係も図示しています。
 
 

※本図は、ガイドラインから転載しています。

※本図は、ガイドラインから転載しています。


 
これを見ると、一日あたりに許容される飲酒量は、以下のようになります
 

  • 男性
    一日あたり、純アルコール量20g、アルコール度数5%のビール500ml相当
  •  

  • 女性
    一日あたり、純アルコール量11g、アルコール度数5%のビール275ml相当

 
これまた厳しいですね。
 
本ガイドラインでは、諸外国のガイドラインが定める純アルコール量も紹介されています。
もっとも厳しいのはイギリスで、一日あたりアルコール度数5%のビール400ml程度。
逆にもっとも緩いのは韓国で、日本の2倍量の純アルコール量が設定されています。
 
 
 

健康に配慮した飲酒の仕方

 
本ガイドラインでは、「健康に配慮した飲酒の仕方」を紹介しています。
 

  • 自らの飲酒状況を把握すること
    医師に相談すること、あるいはAUDITという自己診断テストを行うことで、飲酒習慣を自己認識することを勧めています。
  •  

  • あらかじめ量を決めて飲酒すること
  •  

  • 飲酒前または飲酒中に食事をとること
  •  

  • 飲酒の合間に水や炭酸水などを飲んで、アルコールをゆっくりと分解・吸収できるようにすること
  •  

  • 休肝日(※週のうちにアルコールを接種しない日)を設けること

 
「あらかじめ量を決めて飲酒すること」は…、筆者は自信がないですね。
「今日はジョッキ2杯しか呑まないぞ!」なんて、あらかじめ決めても、守る自信がないです…
 
でも、「飲酒の合間に水や炭酸水などを呑む」ことは、できそうな気がします。
お店で呑むときは、チェイサーを必ず頼むようにするということですね。
 
 
また、本ガイドラインでは「避けるべき飲酒等」も挙げています。
 

  • 一時多量飲酒(特に短時間での多量飲酒)
    具体的な数値として、「1回の飲酒機会で純アルコール量60g以上」を挙げています。
    アルコール度数5%のビールだと1500ml、アルコール度数15%の日本酒だと500mlに相当します。
  •  

  • 他人への飲酒の強要
    当然駄目ですね。
  •  

  • 不安や不眠の解消を目的とした飲酒
    アルコール依存症へのリスクを高め、また飲酒によって眠りが浅くなり、結果的に睡眠リズムを乱す原因になると指摘しています。
  •  

  • 病気療養中の飲酒や、服薬後の飲酒
    病気療養中の飲酒は免疫力が低下する可能性があること。また服薬後の飲酒は効果の低下や副作用の発生リスクを指摘しています。
  •  

  • 飲酒中あるいは飲酒後の運動・入浴など
    血圧の変動が高まり、心筋梗塞などのリスクを高めることから、飲酒後は運動や入浴など、身体に不断のかかる行動は避けるべきと指摘しています。

 
 
 

居酒屋業界などからの反応

 
本ガイドラインに対しては、さまざまな反応が起きています。
 

 
居酒屋チェーンによっては、「なぜ、コロナ禍明けで、ようやく客足が戻ってきた今、このようなガイドラインを出したのか?」という恨み節もあれば、「問題はない」と断言するところもあるようです。
また、低アルコール飲料、あるいはノンアルコールドリンクのラインナップを増やすことを検討する、あるいは料理のラインナップを再検討すると答えた飲食チェーンもありました。
 
本ガイドライン発表前から、「アルコール依存症を増やす」として批判されてきたストロング系酎ハイについては、販売停止を検討、あるいは実施した飲料メーカーも出てきています。
おそらく、近い将来、ストロング系酎ハイはなくなるのではないでしょうか。
 
 
「酒は百薬の長」という言葉がありますが、これは今、はっきりと否定されています。
健康のため、そして健全な生活を日々過ごすためには、お酒との付き合い方を再考すべき方もいるかもしれません。
 
 
 


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