運輸総合研究所が、「持続可能な物流システムの構築に向けて ~解決のカギは『デジタル技術』~」という提言を発表しました。
これ、とても興味深いです。
提言書そのものは読み応えたっぷりなのですが、「5分で読める」文字ボリュームに合わせ、秋元通信流にざっくりと解説しましょう。
まず提言書では、物流従事者(物流事業者および荷主)全般の課題として、データ活用に対する意識不足、取り組み不足を指摘しています。
そのうえで、「荷主、消費者等においては、人手不足等による物流の持続可能性についての危機意識、当事者意識が高いとは言い難い」と指摘しています。
- デジタル化
- 見える化
- 共有化・オープン化
- データ活用
- 自動化
- 標準化
- 基盤づくり
- 低コスト化
- 発荷主~着荷主間
「物流の作業・コストを明示した商取引」を行うこと。 - ASNデータ(事前出荷情報)の共有
- 受発注システムを活用した輸送量の平準化 など
- 荷主~物流事業者間
「物流負荷を軽減する受発注、物流コストの収受」がポイント。 - トラックの積載効率、荷待ち時間等の把握
- 実運送車両や貨物情報の見える化 など
- 荷主・物流事業者~消費者間
「消費者が物流・環境の負荷を理解し、行動選択」すること。 - 「通販におけるコスト見える化」、「消費者の行動変容を促す政府広報」などによって、物流負荷を考慮したサービスを、消費者が選択できるようにする。
- 物流事業者間
「情報共有により適時な入出庫、共同輸送効率化」がポイント。 - 倉庫・車両・貨物、それぞれの情報を見える化し、元請・下請、運送事業者・倉庫事業者・フォワーダー、それぞれの間で物流情報データを共有化し活用する。
- 物流事業者間(幹線輸送)
「情報共有・公開によりモード比較、選択、手配」すること。 - 荷主が、鉄道・内航海運を含め、輸送手段を選択しやすくするための情報共有と公開
- 中継輸送支援のため、SA等の混雑状況の公開 など
- 荷主・物流事業者~行政・学界間
「データ整備・公開による政策立案、学術研究」がポイント。 - デジタル化で得られた各種物流データを共有化・オープン化し、政策の効果検証等を促進
- 運送契約書面化における運送内容・体制・責任範囲の明確化
- 物流担当役員の明確化
- 中継輸送促進・拡大のために必要な共同輸送、複合一貫輸送の基盤づくり
- 企業間連携を実現するための、自立・分散・協調型物流ネットワークの構築、業界別物流プラットフォームの形成、安全性・信頼性の高い物流シェアリング推進のための認証制度
- 物流の改善と進化、革新を生むための政策
- 事業者サイドからの物流データの発信と、そのデータを用いた産学連携・産官学連携の促進
- 【2030年まで】物流システムの全体最適化
物流情報がデジタル化・見える化されることで、物流全体が最適化される。
発荷主・着荷主・物流事業者それぞれが、データ活用を通じ、物流の最適化を図れる状態。 - 【2050年まで】フィジカルインターネットの実現
物流情報の共有化・オープン化が実現することに加え、トラック・鉄道・船舶の無人運転・無人運行が社会実装されることで、フィジカルインターネットに近い世界が実現している。
本提言書で指摘するデジタル化は、システム導入・普及、あるいは開発よりも、データ活用に重きをおいています。これは、「物流データの自由化・民主化が進めば、自ずとシステムやプラットフォームの発展がついてくるでしょう」という考えだと筆者は解釈しました。
(繰り返しになりますが)読み応えがある提言書であり、「自分たちは何をすべきなのか?」を考えさせられる内容です。
ぜひ、物流従事者の皆さまは一読されることをオススメします。