秋元通信

5分でわかる、「持続可能な物流のために必要なデジタル技術」提言書

  • 2024.6.5

運輸総合研究所が、「持続可能な物流システムの構築に向けて ~解決のカギは『デジタル技術』~」という提言を発表しました。
 
これ、とても興味深いです。
提言書そのものは読み応えたっぷりなのですが、「5分で読める」文字ボリュームに合わせ、秋元通信流にざっくりと解説しましょう。
 
 
 

提言書が指摘する課題

 
まず提言書では、物流従事者(物流事業者および荷主)全般の課題として、データ活用に対する意識不足、取り組み不足を指摘しています。
そのうえで、「荷主、消費者等においては、人手不足等による物流の持続可能性についての危機意識、当事者意識が高いとは言い難い」と指摘しています。
 
 

デジタル技術の活用段階

 

  1. デジタル化
  2. 見える化
  3. 共有化・オープン化
  4. データ活用
  5. 自動化

 
 

デジタル技術普及のための方策

 

  • 標準化
  • 基盤づくり
  • 低コスト化

 
 

「何をするべきか?」、ステークホルダーごとの「実施すべき施策」

 

  • 発荷主~着荷主間
    「物流の作業・コストを明示した商取引」を行うこと。
    • ASNデータ(事前出荷情報)の共有
    • 受発注システムを活用した輸送量の平準化 など

     

  • 荷主~物流事業者間
    「物流負荷を軽減する受発注、物流コストの収受」がポイント。
    • トラックの積載効率、荷待ち時間等の把握
    • 実運送車両や貨物情報の見える化  など

     

  • 荷主・物流事業者~消費者間
    「消費者が物流・環境の負荷を理解し、行動選択」すること。
    • 「通販におけるコスト見える化」、「消費者の行動変容を促す政府広報」などによって、物流負荷を考慮したサービスを、消費者が選択できるようにする。

     

  • 物流事業者間
    「情報共有により適時な入出庫、共同輸送効率化」がポイント。
    • 倉庫・車両・貨物、それぞれの情報を見える化し、元請・下請、運送事業者・倉庫事業者・フォワーダー、それぞれの間で物流情報データを共有化し活用する。

     

  • 物流事業者間(幹線輸送)
    「情報共有・公開によりモード比較、選択、手配」すること。
    • 荷主が、鉄道・内航海運を含め、輸送手段を選択しやすくするための情報共有と公開
    • 中継輸送支援のため、SA等の混雑状況の公開 など

     

  • 荷主・物流事業者~行政・学界間
    「データ整備・公開による政策立案、学術研究」がポイント。
    • デジタル化で得られた各種物流データを共有化・オープン化し、政策の効果検証等を促進

 
 

さらなる施策展開に向けて取り組むべき事項

 

  • 運送契約書面化における運送内容・体制・責任範囲の明確化
  • 物流担当役員の明確化
  • 中継輸送促進・拡大のために必要な共同輸送、複合一貫輸送の基盤づくり
  • 企業間連携を実現するための、自立・分散・協調型物流ネットワークの構築、業界別物流プラットフォームの形成、安全性・信頼性の高い物流シェアリング推進のための認証制度
  • 物流の改善と進化、革新を生むための政策
  • 事業者サイドからの物流データの発信と、そのデータを用いた産学連携・産官学連携の促進

 
 

期待される効果

 

  • 【2030年まで】物流システムの全体最適化

    物流情報がデジタル化・見える化されることで、物流全体が最適化される。
    発荷主・着荷主・物流事業者それぞれが、データ活用を通じ、物流の最適化を図れる状態。

  • 【2050年まで】フィジカルインターネットの実現

    物流情報の共有化・オープン化が実現することに加え、トラック・鉄道・船舶の無人運転・無人運行が社会実装されることで、フィジカルインターネットに近い世界が実現している。

 
 
本提言書で指摘するデジタル化は、システム導入・普及、あるいは開発よりも、データ活用に重きをおいています。これは、「物流データの自由化・民主化が進めば、自ずとシステムやプラットフォームの発展がついてくるでしょう」という考えだと筆者は解釈しました。
(繰り返しになりますが)読み応えがある提言書であり、「自分たちは何をすべきなのか?」を考えさせられる内容です。
 
ぜひ、物流従事者の皆さまは一読されることをオススメします。
 
 
 


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