秋元運輸倉庫は、2024年5月16日~17日、アジア・シームレス物流フォーラムに、置田運輸さまと共同出展しました。
この振り返りを、前後編に分けてお届けします。
前編の今回は、一般論として、展示会に出展する理由や課題を考えましょう。
「先日、会社としては初めて展示会に出展したのですが、全然結果につながらなくて…」──システム会社であるA社の役員B氏から、こんな相談(というよりは、もはや愚痴でしたが)を受けたことがありました。
「『とにかく展示会に出展してみよう!』という勢いだけで出展を決めてしまいまして…」、どうせ出展するのであればと、A社は、幕張メッセで開催される大型展示会に出展しました。
ブースも4小間にしたとのこと。
「それは奮発しましたね!」と驚く筆者に対し、B氏は、「ええ、おかげでブース設営費やコンパニオンの費用も含めると、1000万円近く掛かりました」と苦笑します。
「展示会前は、『名刺さえたくさん集めて、後は架電しまくればいいや!』と軽く考えていたところがありました」(B氏)
では実際のところはどうだったのでしょうか。
- 展示会では次々に来場者が来たため、来場者との会話内容等をメモする余裕がなかった。結果、「どの来場者が反応が良い見込み客候補だったのか?」が分からなくなってしまった。
- 仕方がないので、名刺交換ができた来場者に対し片っ端から架電をしたが、すべての名刺交換先に電話ができたのは、3ヶ月後だった。
- 展示会から1ヶ月も経過すると、電話した相手もこちら(出展者)のことを覚えていないケースが増えてきて、架電しても話が噛み合わなかった。
「ではさぞかしたくさんの名刺交換ができたのでしょうね?」と尋ねた筆者に対し、B氏が明かした名刺獲得数は、(筆者の物差しで言えば)まるで物足りない数でした。
B氏を含め、ブースに立ったA社社員は、展示会会期中の3日間、昼食も食べられないくらい接客に追われていたそうです。
「だから相当頑張ったと思っていたのですが…、駄目ですか?」、B氏はさらに落ち込んでしまったようです。
「名刺さえたくさん集めれば」というA社の発想は間違っていません。
たくさんの名刺があれば、展示会後の営業アプローチ方法にも選択肢が生まれますので。
一番の課題は、名刺の獲得枚数という展示会出展の目的であり目標を、ブースに立ったA社社員が、きちんと理解していなかったことです。
名刺獲得を目的とするのであれば、なるべく多くの来場者と名刺交換をするべきです。そのためには、ひとり(あるいは「一組」)の来場者と長く話し込むのはNGです。
「後日、ご連絡させていただきます」と適当なところで切り上げるべきでした。
ブースに立つ全員が、ひとり(一組)の来場者と、長々と話し込んでしまうため、一様に時間の余裕がなくなってしまったのです。こうなると、話の内容等をメモすることすら難しくなるのも当然です。
では、A社社員たちは、何を来場者に話していたのでしょうか?
- 営業は、新規営業時にいつも話す内容と同じことを、来場者にも話していた。
- プログラマー等、制作スタッフは、システムの隅から隅まで、細かくデモンストレーションを行っていた。
「そんなにたくさん話していたら、架電、あるいは打ち合わせを行った時に、話すことがないでしょう?」と尋ねる筆者に、B氏はうなずきます。
「さらに言えば、架電した段階で、アポイントを断られたケースも多かったのではないですか?」、筆者の問いかけに、B氏は苦笑します。
これは、本屋に来たお客さまに、本のストーリーをすべて話してしまうことに似ています。
本を買う前にストーリーを教えられたら、もうその本は買う気になりませんよね。
展示会で行うべきトークは、予告編に留めるべきです。
本番は、あくまで展示会後であらためてアポイントを取って行う個別の打ち合わせであるはずですから。
「経験不足であり、準備不足でしたね…」、B氏はしきりに反省してます。
A社はさらに別の課題も抱えていました。
「アポイントが取れて打ち合わせが進行している来場者はともかく、『アポイントが取れなかった』、あるいは『アポイントは取れたが、その後進捗がなかった』来場者への2nd・3rdアプローチをどうすればいいのか分からないんですよ」(B氏)
では、一旦断られてしまった来場者には、どのようにアプローチすればいいのでしょうか。
- 定期的にメルマガを配信する。
- セミナーに招待する。
- 定期的に架電し、御用聞きを兼ねた情報提供を行う。
他にも施策は考えられます。
例えば最近では、業界内の専門的なトピックを深堀り・解説したホワイトペーパーを作成し、配布する企業も増えています。
いずれにせよ大切なのは、「覚えていてもらうこと」です。
秋元通信では、以前AIDMAという購買モデルについて取り上げたことがありましたが、ここでも「覚えていてもらうこと」の大切さを解説しています。
詳細はこの記事をご確認いただきたいのですが、AIDMAのMである「Memory(記憶)」について、販売者側は、「『欲しい』という記憶、製品に対する記憶をリマインドさせること」を目標とすべきであると解説しました。
仮にもブースを訪れ、足を止めて説明を聞き、あるいは名刺交換をしたということは、興味があったはずです。その興味が、「欲しい」に変わるには、時期とタイミングもあるでしょう。
興味が「欲しい」に変わるまで、会社名を覚えていてもらえるように、継続的なアプローチが必要なのです。
と、偉そうなことを論じてきましたが、当社の場合はどうだったのでしょうか?
後編では、アジア・シームレス物流フォーラム出展から得た学びや反省について、置田運輸さまにもご協力いただきご紹介します。
お楽しみに!