国土交通省では、2017年10月より年に2回、宅配便における再配達率のサンプル調査を行っています。
同調査をもとに、再配達について考えましょう。
少し昔話を…
2015年10月、国土交通省は、再配達に関する報告書を発表しました。
「宅配再配達による社会的損失は、年間約1.8億時間、約9万人分の労働力に相当する」
※参考 「国土交通省発『宅配再配達の削減』報告書を憂う」(秋元通信)
この報告書と、そしてキャッチとして使われたこの一文は、大きな話題を呼び、物流メディアだけではなく、TV、新聞などの一般メディアでも、しきりと報道されました。
この報告書、そして関連報道をきっかけに、私は「再配達=配達員に申し訳ない」という世論が形成されたように感じていました。
実際、SNSでも友人たちが、「あ~、再配達にしちゃったよ! ヤマトさん、ごめんなさい…」といった、再配達を悔やむ書き込みを行うのを目にしてきたからです。
では、実際に再配達は減っているのでしょうか。
国土交通省のサンプル調査を確認しましょう。
2017年10月 15.5%
2018年4月 15.0%
2018年10月 15.2%
2019年4月 16.0%
2019年10月 15.0%
…、変わっていませんね。
同調査では、都市部、都市近郊部、地方に分けてサンプル調査を行っています。
調査結果を診ると、地方では再配達率が減少しています(2017年10月:13.5%→2019年10月:11.5%)が、都市部、都市近郊部ではあまり変わっていません。
再配達を削減するインフラ環境は、改善しています。
例えば、宅配ロッカー。
ヤマト運輸が進める、「PUDO」(プドー)は、2016年4月の設立以来、宅配ロッカーを増やし続け、現在では6312ヶ所まで設置数を増やしています。
Amazonでは、「置き配」、すなわち玄関や自転車のかご等に、荷物を置いてくる配達を推奨し、かつ広げようとしています。
「Amazonはお客様のご注文時の配送オプションとして提供する「置き配指定サービス」の利便性をさらに向上させることを目的として、「玄関への置き配」を標準の配送方法とした実証実験を東京都3区(江東区、文京区、練馬区)、大阪府3区(都島区、西淀川区、生野区)、名古屋市、札幌市のお客様(一部地域を除く)を対象に、1月27日より順次開始します。
このメールは実証実験の対象となるお客様に送付させていただいております。1月27日より順次、Amazon.co.jpで購入された対象商品の標準の配送方法が「玄関への置き配」となります。なお実証実験期間中でも、期間後でも、置き配を希望されない場合には、ご注文時の画面等を操作していただくことで、対面でのお受け取りその他の配達方法をご選択いただけます」
これは先日、Amazonから筆者に届いたメールの一部です。
練馬区に住む筆者は、Amazonの置き配実証実験の対象となりました。
このように、再配達を減らす試みは、あちこちで行われています。
ではなぜ、再配達率は下がらないのでしょうか?
2017年度 40億1900万個 (前年比107.3%)
2018年度 42億5100万個 (前年比105.8%)
2019年度 43億700万個 (前年比101.3%)
これは、推測ですが。
増え続ける宅配便に対し、対策が追いついていないのではないでしょうか。
- 宅配ロッカー設置に対する助成金や補助金を大幅に拡大する。
- 再配達に対するペナルティ(再配達料の設定)、もしくは一回で受け取りをしたことに対するインセンティブを設ける。
- 置き配に対する社会理解の推進(盗難時補償制度の整備など)。
例えば、このような、より影響力のある施策を考えないと、再配達の削減は難しいのではないでしょう。
あくまで私見ですが、Amazonは折りたたみ型の宅配ボックスを、プライム会員に配ってしまえばいいのに…、と思います。前述の置き配実証実験では、結局顧客満足度を下げるだけではないでしょうか?
国土交通省は、「総合物流施策推進プログラム」内で、宅配便の再配達率を、2020年度までに13%程度まで削減するという目標を掲げています。
実現するためには、よほど思い切った施策を実施しないと無理でしょうね。