秋元通信

2024年3月卒予定の大学生・大学院生の就職マーケット(前編)

  • 2024.2.22

2024年3月卒予定の大学生新卒就職状況に関するデータが公開されています。
リクルートが公開しているデータを紐解き、前後編に分けてお届けします。
 
前編となる本稿では、就職活動前、つまり企業の採用動向についてお届けします。
 
 
 

売手(学生)優位だった24年3月卒就職マーケット

 
24年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.71倍でした。
2023年卒の求人倍率は1.58倍。21年卒の求人倍率は1.53倍でしたから、新型コロナウイルスの影響による企業側の採用マインド低下がようやく回復した様子がうかがえます。
 
結果、全国の民間企業の求人総数は、前年の70.7万人から77.3万人へと6.6万人増加(対前年増減率は+9.3%)しましたが、ターゲットとなる大学生の就職希望者は、23年卒44.9万人から45.1万人へと0.2万人の微増でした。
つまり、需要が供給を32.2万人上回っている状態であり、売手市場であったことになります。
 
企業の規模、あるいは業種別の状況もご紹介しましょう。
 

  • 企業規模別の募集状況
    • 300人未満企業で0.88ポイント増加
    • 300~999人企業で0.02ポイント増加
    • 1000~4999人企業で0.03ポイント増加
    • 5000人以上企業で0.04ポイント増加

 
つまり、従業員300人未満の中小企業において、より採用意欲が増したことになります。
中小企業は、大企業に比べ景況感に大きく経営を左右されます。新型コロナウイルスの影響を憂慮し、ここ数年採用を控えていた中小企業も多かったのでしょうね。
 
 

  • 業種別の募集状況
    • 建設業で6.04ポイント増加
    • 製造業で0.38ポイント増加
    • 流通業で2.72ポイント増加
    • サービス・情報業で0.03ポイント増加

 
建設業における採用意欲の増加が目に付きます。
この水準は、リクルートが保有している2010年以降の実績の中で最高値だったそうです。同様に流通業についても、コロナ禍直前の高い水準に近い倍率となりました。
 
一方で、金融業では0.01ポイント減少したそうです。
 
建設業は運送業同様、2024年問題の影響を受けます。
うがった見方かもしれませんが、自社従業員の若返りを目指すことで、2024年問題の回避(あるいは影響の最小化)を目論んだ企業もあったのかもしれません。
 
 
 

「初任給に差をつける」

 
「新入社員の給与は、皆同じ」──実はこれが変わりつつあります。
 

 
報道によると…
 

  • 人工知能(AI)などの先端領域で高い能力を持つ人材については、2019年度から年間給与を最大2割増し
  •  

  • 優秀な人材には19年度から、最短で入社3カ月後の7月から等級を与えるようにする。
    20年度からは、インターン時点で個々の能力を見極め、入社当月の4月から等級を与える。
    →つまり新入社員の間でも給与格差が生じることになる。

 
これ、報道された当時はいろいろと議論が発生した制度ですが、現時点ではどれくらいの企業が採用しているのでしょう?
 

  • 「職種で初任給に差をつけた採用」を行った企業の割合は6.5%。
  • 「個人の専門性や経験で初任給に差をつけた採用」を行った企業は3.3%。

 
 
業種別に見ていきましょう。
 

  • 「職種で初任給に差をつけた採用」を行っている割合が相対的に高い業種は、建設業で9.0%、流通業で8.3%、サービス・情報業で7.5%であった。
  •  

  • 「個人の専門性や経験で初任給に差をつけた採用」を行っている割合は、「職種で初任給に差をつけた採用」を行っている割合に比べて低いが、その中でも高かったのはサービス・情報業の5.9%。

 
このあたりは中身(つまり、「何をもって初任給格差を設定しているのか?」)をより深掘りして確認してみないとなんとも言い難い部分ではあります。
これは、いずれ深掘りしてみましょう。
 
 
次号のメルマガ「秋元通信」では、2024年3月卒予定の大学生・大学院生たちにおける就職活動の様子をお届けします。
 
 

参考および出典

 

 
 
 


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