秋元通信

クラウドは危険なのか?【前篇】 (IT用語を紐解く)

  • 2018.11.30

「クラウド」(クラウドコンピューティング」というITワードは、もはや社会人の常識と言えるでしょう。多くの方が、意識している/していないは別として、クラウドサービスを利用していることと思います。
 
しかし未だに「クラウドは危険だ!」とおっしゃる方もいます。果たして、クラウドは危険なのでしょうか?
本記事では、ITに詳しくない方でもなるべく分かりやすいようにクラウドを説明しつつ、クラウドの安全性を考えます。
 
クラウドとは、言わば住所のない家のようなものです。
何のための家かと言えば、データやプログラム(システム)を置くための家です。
コンピューターやサーバの黎明期は、ここで言う家(≒サーバ)は手元に置くことが常識でした。自分の部屋や、会社内にサーバを置いておくわけです。これを「オンプレミス」(自社運用型)と言います。
 
やがて、インターネットが普及するにつれて、サーバを賃貸したり預かったりするサービスが登場しました。「預かる」サービスをハウジング、「賃貸する」サービスをホスティングと呼びます。マンションを例にすると、ハウジングとは借地権のうえにマンションを立てるイメージ。ホスティングとはマンションの一部屋を借りるイメージです。
 
これらのサービスを「家」に例えましょう。
オンプレミスも、ハウジング/ホスティングも、基本的に「住所」が分かっていました。つまり、「うちのサーバは、大手町にあるNTTグループのデータセンター内にあるよ」(ハウジング/ホスティング)というように、サーバがどこにあるのかは大原則としてサービス利用者には明らかにされていました。
また、もうひとつ大切なことは、「間取り」です。世の中には、必要に応じて間取りが変わる家は普通ありませんよね?「今日は来客があるからパーティールームを30畳分増やそう!」なんてことはできません。サーバも同じです。契約した時点で、「うちのサーバの容量は*GBですよ」と決まっています。
 
対して、クラウドは「住所が分からない/間取りが変わる」という特徴があります。
これが、クラウドをうまく理解できない人の最初のつまずきポイントです。理解できる/できないではなく、「そういうものなんだ…」と自分を納得させたほうが早いかも知れませんけれども。
クラウドは、ドラえもんの4次元ポケットに似ています。4次元ポケットの入り口は、現実世界であるドラえもんのお腹にあります。でも、ポケットの中身は現世とは異なる異次元にあります。しかも、ひみつ道具の数に合わせて四次元ポケットは自由に伸縮します。
 
まず、「住所が分からない」点について補足します。
クラウドサービスの代表格であるGmailを例に取りましょう。利用している方も多いことと思いますが、Gmailで受信されたメールは、どこのサーバに保管されているのかご存知ですか? 
「Googleのサーバでしょ?」
それは答えになっていません。そのGoogleのサーバは、どこにあるのかご存知ですか? あなたのGmailで受信したメールが収納されているGoogleサーバの住所をご存知ですか?
おそらく、秋元通信読者の方は、ひとりもご存じないと思います。何故かと言えば、それは公開されていないからであり、秘密にされているからです。
 
「えっ?、クラウドって、サーバが置いてある場所の住所が公開されていないだけなの?」
 
はい、半分正解です。ただし、半分ですよ。残り半分の正解は、「間取りが変わる」に関係します。
クラウドにおける間取りの秘密をお話しする前に、ある事例をご紹介しましょう。
 
国内の有名高級ホテルの話です。
同ホテルでは、ホテルオリジナルケーキのネット販売を開始しました。すると、ある問題が生じました。クリスマスケーキの販売時期になると、アクセスが集中してサーバがパンクしてしまうのです。平常時のアクセス数とクリスマス前のアクセス数を比較すると、1000倍以上の差がありました。当時、同ホテルのネット販売システムはオンプレミス、つまりホテル内にサーバがありました。クリスマス前のアクセス数に合わせてサーバを選定すると、1000万円をゆうに超える高性能サーバを購入する必要があります。しかし平常時にはウン十万円クラスのPCサーバで十分。悩ましいところです。
悩んだ同ホテルは、当時まだ世に出たばかりのAmazonEC2(※Amazonが提供するクラウドサービス)を利用しました。クラウドの特徴である「間取りが変わる」に期待したからです。
 
イメージとして分かりやすくするために、実際の店舗をイメージして、「間取りが変わる」をご説明しましょう。
平常時の来店客数は、一日100人だったとします。お店の広さは10坪、レジの台数は1台で十分です。ところがクリスマス前には、平常時の1000倍である10万人の来客があります。なので、お店の広さも1000倍の1万坪、レジの数も1000倍の1000台に増やす必要があります。
現実の店舗であれば、これは不可能です。しかしクラウドではこれが可能なのです。
システムやWebサイトへかかる負荷を検討し、「11月1日から12月15日までは、サーバ容量とCPU処理能力を1000倍にアップして!」ということができるのが、クラウドの特徴なのです。
結果、同ホテルでは、オンプレミスで高性能サーバを用意することと比べると、遥かに安いコストでパンクすることのないネット販売システムを手に入れることができました。
 
 
なぜこんなことができるのか。
少し難しくなりますが、これにはサーバの並列化という技術が貢献しています。並列化とは複数のサーバをつなぎ合わせて仮想的に巨大なサーバを作り上げることです。これによって、理論上は無限に巨大なサーバを作ることができるようになりました。
先に、ハウジングとホスティングをマンションに例えましたが、マンションの場合、貸すことのできる部屋数は有限です。クラウドとは、無限に部屋を増やせるマンションをイメージすると分かりやすいかも知れません。
 
Googleの場合、世界中に分散したサーバでクラウドサービスを展開しています。
あなたのGmailの受信ボックスは、例えばベルリンにあるクラウドサーバ内にあるかもしれませんし、マイアミにあるクラウドサーバ内にあるかも知れません。でも、それは「今」であって、次の瞬間には香港にあるクラウドサーバにあるかもしれません。間取りが変わるということは、同時に場所も変わることだからです。「ベルリン?、マイアミ?、それとも香港のどこかにあるよ」、これでは住所がわかっているとは言えませんね。
 
さて、クラウドの説明だけでこれだけ紙面を使ってしまいました。
「クラウドは危険なのか?」については、次号ご案内しましょう。
 
 
 

補足と注意、そして少しばかりの言い訳

 
本記事は、初心者ないしクラウドに対する知識が乏しい方に対し、クラウドを分かりやすく伝えることを目的としています。
そのため技術的な話はなるべく避け、正確性に関しても少しだけ目をつぶって記事を作成しました。
 
「仮想化のことは書かないの?」
はい、難しいので省きました。
 
また、本文で「間取りが変わる」と説明したオートスケールについては、サービス提供をしていないクラウド事業者(サービス)も存在します。
 
そのあたりは、本記事の目的もご考慮いただき、温かい目で本記事を読んでくださると幸いです。


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