秋元通信

どうやらこれからの物流のあり方が見えてきたみたい…、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」中間取りまとめを読み解く

  • 2023.2.17

2022年9月、経済産業省、国土交通省、農林水産省は、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」(以下、検討会)を設立しました。以後、5回の会合を重ね、2023年2月8日に「中間取りまとめ」を発表しました。
本記事では、この「中間取りまとめ」の内容をご紹介していきましょう。
 
 
 

そもそも、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」は何を目的としているのか?

 
トラックドライバーの人不足、物流の2024年問題、あるいはロシアによるウクライナ侵攻に伴う物価高など、物流は現在さまざまな課題にさらされています。
 
検討会では、課題解決に向けた取り組みについて、「物流事業者や一部の荷主のみでの取り組みには限界がある」と断言しています。
そこで、物流事業者だけではなく、荷主(発荷主および着荷主)および消費者も含めて、各々が担うべき役割を今一度見直すことで、物流が現在直面している課題をクリアし、持続可能な物流へと変革することが検討会の目的となっています。
 
 
 

検討会が訴える、物流クライシスに対する認識不足への危機感

 
「中間取りまとめ」では、「物流の危機的状況に対する荷主企業や消費者の理解の醸成が不十分」として、危機感を訴えています。
 
その例として挙げられているのが、物流の2024年問題に対する認知度です。産業全体で5割程度で、「物流危機について耳にしたことがある」という消費者でも5割程度というのは、確かに課題ですね。結局のところ、こういった認識不足が、送料無料という誤った認識や、物流事業者への(悪意はないかもしれませんが)ちょっとした要求(時間指定、再配達、キャンセルなど)へとつながるわけですから。
 
「中間取りまとめ」で注目すべきは、ペナルティ制度に言及した点です。
 

  • 「貨物輸送の前提となる貨物の内容や納品時期等については、発荷主と着荷主との間で決定されるため、物流事業者が独自に貨物輸送の効率化を図ろうとしても実施困難な場合が多い」
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  • 「現行制度は主に発荷主企業を対象としたものが多く、着荷主企業の物流改善を主目的としたものは存在しない」

 
この、物流事業者側からすれば当たり前な現状認識を、経産省・国交省・農水省が発表した公式資料において明記してくれた時点で、この「中間取りまとめ」は画期的でしょう。
 
政策の方向性として、大局的には、「ガイドライン等についてインセンティブ等を打ち出して有効に機能するようにするとともに、類似の法令等を参考に、規制的措置等、より実効性のある措置も検討すべき」として、インセンティブと規制的措置、いわばアメとムチの必要性を打ち出しています。
 
一方で、「経営者層の意識改革を促す措置の検討」という章では、「既存法令を参考に、荷主企業が経営者層を中核として物流改善に取り組むことに資する措置について検討すべき」とはありますが、こちらにはインセンティブについての言及しかありません。「中間取りまとめ」全体を読んでも、ムチ、すなわちペナルティ制度については、深掘りしていません。
 
ここまで書くのであれば、「長時間に及ぶ待機時間や、過剰かつ無償での手積み手卸し等を物流事業者に要求する荷主企業に対しては、規制的措置を設けるべき」くらいに踏み込んで欲しかったです。
 
 
「中間取りまとめ」では、そのほかにも物流コスト可視化の必要性、店着価格制の課題、多重下請け制度の是正やモーダルシフトの推進など、具体性のある課題解決のポイントが挙げられています。
 
ただし、あくまでこれは「中間取りまとめ」であって、最終的にどのような提言を検討会が行うのかを確定するものではありません。
 
今後の動向に、注目しましょう。
 
 
 


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