前回に引き続き、全国都市交通特性調査(旧全国都市パーソントリップ調査)をご紹介しましょう。
今回は、移動手段としての自動車の利用状況をご紹介しましょう。
若者の免許取得率が下がっていることは、広く知られています。
20代の免許取得率は、2005年:89%から、2015年:84%へと減少しています。ただし、16歳~74歳までの免許取得率は上がっています(2005年:79%→2015年:84%)。
74歳までの免許取得率を挙げたのは、75歳から認知機能検査を行い、結果が芳しくない方には免許返納を促すからです。
こういったことを勘案すると、自動車で移動する機会も減っている(あるいは、電車、バス、自転車、徒歩など、他交通手段の利用頻度が増えている)ように推測されるのですが、実はそうでもありません。
本調査を紐解くと、特に地方における自動車依存傾向がはっきりとわかります。
全国で診ると、平日における移動の1/3が自動車(35.0%)です。
休日になると、自ら運転せず、誰かの運転する自動車に同乗する方が大きく増加します(平日:10.1%→休日:25.3%)。
「自ら運転」+「同乗」のトータルだと、休日には約6割の方が自動車を利用しています。
自動車の利用率は、都市部よりも地方の方が高くなっています。
都市部での自動車利用率は、平日:約3割、休日:約5割となっています(ともに、自ら運転+同乗)。
対して、地方では、平日:約6割、休日:約7割となっています。
都市部では、鉄道+バスの利用率が高くなっています(平日:約3割、休日:2割弱)。倒して、地方における鉄道+バスの利用率は、平日:7.4%、休日:4.3%であり、都市部の状況とは大きく乖離しています。
このあたりは、公共交通インフラの充実度も影響しているのでしょう。
自動車の利用頻度には、それほど大きな経年変化はありません。
- 全国の自動車利用割合(自ら運転+同乗)
平日 2005年:45.3%→2015年:45.1%
休日 2005年:63.6%→2015年:61.7% - 都市部の自動車利用割合(自ら運転+同乗)
平日 2005年:33.9%→2015年:32.1%
休日 2005年:54.1%→2015年:50.7% - 地方の自動車利用割合(自ら運転+同乗)
平日 2005年:56.5%→2015年:58.8%
休日 2005年:72.7%→2015年:72.3%
この結果だけを見れば、自動車離れは感じられません。
一方で、自動車を保有しているかどうか、免許を持っているかどうかで、外出回数を比較すると、差があることが分かっています。
全国で診ると、免許を持っている人の平日外出回数:2.34回に対し、免許を持っていない人の平日外出回数は、1.85回です。
休日も比較すると、免許あり:1.86回、免許なし:1.34回となっています。同様に自動車の保有も、外出頻度に影響を与えることが分かっています。
自動車免許の有無、自動車保有の有無が、外出頻度に影響するとなると、免許返納を行った高齢者は、ますます外出しなくなることになります。
外出の頻度は、健康寿命とも関連します。まして、公共交通インフラが不足する地方では、免許を返納した高齢者は、ますます外出しなくなるでしょう。
このあたりの調査結果を勘案すると、もしかすると自動車の自動運転・無人運転がより求められているのは、都市部ではなく地方であるかもしれません。
無人運転自動車(バスやタクシーを含む)が、低コストの公共交通インフラとして充実すれば、免許のない(もしくは返納した)高齢者の外出をうながす移動手段として、期待できます。
ちなみに、都市部で免許を持っていない人は、自動車の代わりにどの交通機関を利用していると思いますか?
鉄道やバスを利用すると思いがちですが、実は違います。
増えているのは、自転車と、特に徒歩です。
- 免許あり
鉄道:30.8% 自転車:12.5% 徒歩13.0% - 免許なし
鉄道:24.2% 自転車:17.9% 徒歩:39.2%
免許がない人は、免許がある人に比べ、3倍歩く頻度が多いことになります。もう一つ興味深いのは、免許がない人は鉄道の利用頻度も低いことです。
あくまで推測ですが、都市部在住の免許がない人は、行動範囲が狭いのかもしれません。
今回、全国都市交通特性調査は、2015年の調査結果をご紹介しました。最新調査は昨年実施されており、その結果は来年以降公表されます。
新型コロナウイルスが、私たちの生活に与えた影響も見えてくるでしょう。
最新結果が公表されたら、また秋元通信でご紹介しましょう。