秋元通信

若者の運転免許離れ、その理由を考える

  • 2022.9.13

こんなニュースが話題になっています。
 
運転免許のある若者、650万人も減少! 未来の「物流人材」に大ダメージ、もはや普通免許を無償化すべきか
 

「この20年間で10代、20代の若者の運転免許保有者数(当該年度時点)は650万人以上減っている。改めて衝撃的な数字だ。もうMTだ、AT限定だの話ですらなく、運転免許を取得する若者そのものが減っている」

 
まあ、そうでしょう。
当社では、高校生を対象としたインターンシップを実施してきました(コロナ禍により、ここ最近は実施できていませんが)。参加してくれた高校生に、「免許を取りたい?」と聞いても、「ぜひ取りたいです!」と答える高校生は少数ですし。
 
 
 

免許取得の理由、その変遷

 
駐車場経営大手で、最近ではカーシェアビジネスの展開でも知られるパーク24が、2020年に実施したアンケートから、免許の取得理由をご紹介しましょう。
 

クルマの運転免許を取得した理由

 

  1. 免許の取得が当たり前だと思っていた (32%)
  2. 運転がしたかった (32%)
  3. 運転できないと生活に困る (21%)
  4. 仕事で使う必要がある (9%)
  5. 身分証明書として使う (3%)
  6. 身近な人に進められた (3%)
  7. その他(1%)

 
このアンケートは、パーク24が提供するドライバー向け会員サービスの会員9千人強に対して実施されたものです。つまりは、それなりに普段からクルマを運転している方を対象にしたアンケートであることは留意する必要があるでしょう。
 
さらにアンケートを深掘りしていきましょう。
 
免許を取得した年齢は、18歳が最多の42%。
以下、19歳(14%)、20歳(18%)と続き、21歳になると6%と大きく下がります。
 
確かにそうでしょう。
高卒、大卒、いずれにせよ、在学中に免許を取得しないで、働きながら免許を取得するのもなかなか大変でしょうし。大学生にしても、就職活動を開始する3年生~4年生になると、免許を取得する時間を取るのも難しくなってくるのでしょう。
 
また、免許の取得理由についても、20代以下では「運転したかった」が41%でトップ、次に「免許の取得が当たり前だと思っていた」が22%となっています。
他年代では、「免許の取得が当たり前だと思っていた」がトップですから、現在の若者たちにとって、「免許の取得は当たり前ではない」と思っている人が多いことになります。
 
 
 

50年前の運転免許取得理由は?

 
1971年に行われた自動車を保有した理由のアンケートの結果をご紹介しましょう。
「運転免許の取得理由」ではないので、単純比較はできませんが、参考にはなります。
 

  1. 仕事に必要(71%)
  2. クルマが好き(24%)
  3. レジャーに必要(16%)
  4. 家族が購入希望(11%)
  5. 通勤通学に必要(11%)

 
ちなみに、本アンケートにおいて、運転免許の取得率は59%、自家用車の保有率は35%でした。1971年というと、モータリゼーションが上昇期に入る寸前、もしくは入り始めの頃でしょう。
また、このアンケートでは、55%が「クルマがなくとも特に不便は感じない」と答えています。
 
当時、東京メトロで言えば、開業していたのは、銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線だけでした。有楽町線が開通したのが1974年ですが、これも池袋~銀座一丁目の区間だけです。
つまり、現在よりもはるかに公共交通機関が乏しかった時代ではあるのですが、半数以上の人が「クルマなんて必要ないよ」と思っていたというのは、興味深いです。
 
 
 

免許離れが加速する理由

 
2020年、1971年に実施されたアンケートを見比べると、必要性の有無が運転免許だったりクルマの保有におけるポイントになっていることが分かります。
1971年に自家用車を保有していた人の7割が、「仕事で必要」、すなわち「自家用車を仕事で利用している」というのも驚きではあります。
 
現在、20代以下の4割が免許の取得理由として、4割が「運転したかった」と答えているということは、現在の運転免許は、「必要に迫られて取得するもの」から、「より趣味性の高いもの」へと変化していることが分かります。
 
と言うことは…
運転免許の取得率向上のために必要なのは、趣味性を演出することかもしれません。
 

  1. クルマ、もしくはクルマを運転することが、遊びとして費用対効果の高いものにすること。
  2. クルマを活用した趣味嗜好を、より多く提案できること。

 
私見ではありますが、若者のクルマ離れ(≒運転免許取得率の低下)最大の理由は、クルマという遊びの費用対効果が悪いことだと考えています。
免許取得に30万円、クルマ購入に(中古車だとして)50万円、維持費に年間30万円つぎ込むことを考えると、「だったらオンラインゲームに100万円課金したほうが、いい目が見られるんじゃないの??」と思う若者がいるのは当然でしょう。
 
一方で、カーシェアやカーリースの普及が広がっているのは、若者のクルマ離れに抑止効果を発揮する可能性があります。
先日、友人の息子さん(18歳)が、カーリースでライズ(トヨタ)を契約していました。月々の支払いは2万円ほどだそうですが、整備費用や税金込みですから。新車をガチで購入するよりも、はるかに費用対効果が高いことは明白です。
 
2.も、最近では実用的なコンパクトカーや、荷物も積めて、多人数も乗れる小型SUV(フリードやシエンタなど)が人気です。1970年代~90年代に、多くのメーカーがラインナップしていた走りやデザインを重視したクルマは、現在あまりありません。80年代に一世を風靡したプレリュードなどのデートカーと呼ばれるジャンルのクルマは、今や絶滅しましたし。(筆者はローリング族などの世間に迷惑を掛ける人やクルマを容認しているわけではないことは、一言付け加えておきます)
 
実は、現在の自動車メーカーの戦略は、「実用的なもの」という逃げの戦略であって、「クルマの使い方を提案する」という意味では不足しているのかもしれません。
 
 
話を戻しましょう。
冒頭に取り上げたニュースが主張するように、運転免許取得者が減ることが、トラックドライバー不足に直結するとは私は思いません。無関係ではないでしょうが、その関係性にはかなり距離がありますし、ドライバー不足にはもっと深刻な要因がたくさんあるからです。
一方で、自動車産業を基幹産業とする日本において、運転免許取得者の減少は、自動車産業の衰退、ひいては日本経済の衰退につながりかねません。
 
このようなことをもろもろ考えると、クルマと運転免許に対するマーケティングであり販売戦略は、過渡期にあるのでしょう。
前述のカーシェア・カーリースの普及、自動運転・無人運転の開発と実現などは、その具体的なファクターなのでしょうね。


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