秋元通信

年収200億と200万、結婚するならどちら? 従業員の愛社精神は、お金で向上させられるのか?

  • 2022.9.13

愛を取るか、それとも金を取るか…?
 
結婚相手の選択について、究極の選択としてよく挙がる議論です。
一般的には、愛を取る人は尊く、金を取る人は人品卑しいと思われがちではあります。
 
先日放送された某人気TV番組において、デヴィ・スカルノ夫人が語った見解が深いと、ネット上で話題になっています。
 
「年収200億円の男性と、年収200万円の男性から、求婚されたとします。あなたが本当に愛しているのは年収200万円の男性です。さあ、どちらと結婚する?」
 
デヴィ夫人に問われた出演者の女性3人は、皆、愛している200万円の男性と答えます。
すると、デヴィ夫人は、このように説明します。
 
「年収200万円の男性と結婚したら、最初は楽しいかもしれない。だけど、周囲の、もっと豊かな生活を送る人たちと自身の生活を比べ、やがて愛も冷めていく。
対して、年収200億円の男性に対しては、愛はないかもしれないけど、信頼と尊敬はあるはず。それはやがて愛に変化していく」

 
皆さまは、どう思いますか?
 
恋愛論やら結婚観を語るのは、秋元通信の範疇ではありませんが、これって、企業と従業員の関係にも共通するような気がします。
 
 
 

年収3000万円の職業

 
デヴィ夫人の結婚観で興味深いのは、「どちらにしても愛は必要」と指摘している点です。
それが最初からあるのか、それとも後から生まれていくものなのかの違いはあれど、「年収200億円の相手だったら、愛は育つはず」と断定するのが、デヴィ夫人訓話のポイントです。
 
逆に言えば、たとえ年収200億円の相手でも、愛が育つ見込みがなければ結婚すべきではないとも解釈できます。
 
 
デヴィ夫人の訓話を聞き、筆者が思い出したのはヘッドハンティングを行う会社から、ヘッドハンティングされた経験です。
 
「1年後には年収1000万円、3年後には年収3000万円オーバーが実現する。どう、私と一緒に働かない?」
 
彼女は、このように私を勧誘しました。ちなみに、3年後まで残るのは、10人にひとりとのこと。その会社は一般採用を行っていないので、彼女らマネージャーのお眼鏡にかなった人であっても、生存確率は1/10ということになります。
 
私は、彼女のオファーを断りました。
1/10になれるほど、自分が優秀だと思えなかったこともあります。
しかし最大の理由は、彼女の語るヘッドハンターという仕事の内容が、私には楽しそうとも、情熱を注ぎ続けられる仕事とも思えなかったことにあります。
詳細は割愛しますが、プライベートもなく、すべての時間を人脈形成につぎ込み、ときには他人の靴を舐めるような真似までするんだという彼女の言葉に、「その仕事(ヘッドハンティング)は、いくら金をもらっても私は続けられないだろうな…」と思ったのです。
 
 
 

巨大企業は、必ず信頼と尊敬に値するのか?

 
デヴィ夫人の結婚観は、年収200億円の人物は、必ず信頼と尊敬に値するという前提に立っています。しかし、世の中はそんなに単純ではありません。
 
企業も同様です。
年商1000万円の企業よりも、年商1兆円の企業の方が、CSRやSDGs、もしくはESG経営といった観点で優れているとも限りません。
もっと言えば、年商1000万円企業の従業員のほうが、年商1兆円企業の従業員よりも仕事に対する満足度が高いことだってあるわけです。
 
これらのことは、過去にさまざまな不正、不祥事をしでかしてきた企業の例を見れば分かります。
年商の大きい、すなわち経営規模の大きい企業の方が、必ずしも信頼と尊敬に値するとは限らないことを、私たちは経験として学んでいます。
 
 
一方で、一般論ではありますが、中小企業の従業員よりも、大企業の従業員のほうが仕事や帰属意識における満足度が高いことが知られています。
ただし勘違いはしないでくださいね。これは単純に中小企業と大企業の、経営規模の差だけに由来するものではありません。
 
原因はいくつもあるでしょうが、大企業の方が、福利厚生が充実していることが多いことも理由のひとつでしょう。
 
働き方や仕事に対する満足度を向上させ、より従業員が能力を発揮しやすいような工夫も、大企業のほうが手掛けていることが多いです(以前お届けした、Yahooの飛行機通勤許可はその好例でしょう)。
 
企業としてのビジョンやミッションを掲げているのも、大企業の方が多いでしょう。ビジョンやミッションなどの存在は、経営の透明性を促進し、従業員の働きがいにも好影響を与えます。
 
 
 

給料の高さと、従業員の愛社精神の関係

 
「給料を上げれば、従業員は満足するはず」という考え方があります。
あくまで肌感覚ではありますが、私が実際にお会いした経営者や、世のニュース、経済誌などで紹介される経営者らの言葉を見ていると、中小企業の経営者ほど、このような言葉を口にすることが多い気がします。
 
私が以前勤めていたベンチャー企業は、給与が高いことで有名でしたが、同時に離職率が高いことでも有名でした。
こんな例は、たくさんあります。
 
給料の多寡は、愛社精神を生み出すための条件のひとつではあるでしょう。でも、給料が高ければ、愛社精神や、仕事へのやりがいが必ず生まれるかと言えば、それは間違いです。
 
このことを忘れ、給料が高い・安いだけで、コトを論じると、大失敗をします。
 
雇われる側(従業員)は、給料の多寡だけで仕事や就職先を選ぶと、本来自分が出せるはずの能力を十分に発揮できず、会社や仕事に対する不満が日々蓄積し、最悪、うつなどの健康被害に至り、自身の大切な人生を損なってしまう危惧もあるでしょう。
 
雇う側(経営者)は、給料の多寡が、すなわち従業員の愛社精神における唯一の源泉だと考えてしまうと、経営における選択の幅を狭める可能性があります。「この給料じゃ、みんなもやる気を出してくれないよな」「もっと給料を上げることができれば、もっと優秀は人を雇うことができるのに」、このような経営者の考え方そのものが、従業員のやる気を削いでしまう危惧があることを、経営者は肝に命じるべきでしょう。
 
 
 

パートナーとともに成長、発展するという考え方

 
ところで、デヴィ夫人の訓話って、もう一つ、大切な目線が欠けている気がします。
 
「年収200万円の相手と結婚して、私が年収200億円までに成長させてみせる!」という目線です。
まあ、200億円は極端ですけど(そもそも、このデヴィ夫人訓話そのものが極端ですからね)。
 
「この人と結婚すれば、私たちはともに成長し、経済的にも充実した、豊かで幸せな人生を手に入れることができるはず」という目線だってあるでしょう。
 
デヴィ夫人のお考えは、あくまで女性は受け身であり、男性側の経済力こそが要だと言っている…ように聞こえます。
ご自身があれだけTV等で活躍されている、いわば自立した女性を体現している方だけに、このお考え方にはとても違和感を感じます。
 
転じて、就職先・転職先を探す人にとっても「ともに成長・発展する」という目線って、とても大切ではないでしょうか。
 
 
ところで、15年ほど前、ニューヨークはウォールストリート界隈でとても話題になった噂話があります。
 
これは、ある女性が、JPモルガンの当時のCEOに送ったメールと言われています。
 
「私は、とても美人で聡明な女性であり、最低でも年収6千万円以上の結婚相手を探しています。どうすれば、このような結婚相手を見つけることができますか?」
 
一連のエピソードそのものが、どこまで真実かは分からないのですが、この傲慢な女性(とあえて言いましょう)に対し、JPモルガンCEOが投資家として返事をしたとされる内容が、とても示唆に富んでいます。
 
次号では、このネタをもとに、企業における求職者の採用判断、もしくは求職者にとっての転職先探しの難しさを考えましょう。


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