秋元通信

話題の「ChatGPT」はライターの仕事を奪い…そうもない

  • 2023.2.28

話題の「ChatGPT」を試してみました。
「ChatGPT」をご存じの方も、そうでない方も、まずは「ChatGPT」のアウトプットをご覧いただきましょう。
 
 

Qus.
トラックドライバー不足が社会課題になっています。解決するためにはどうしたらよいのでしょうか?
 
Ans.
トラックドライバー不足は、物流業界の中でも深刻な問題の1つです。解決するためには、以下のような取り組みが考えられます。
 
1.労働環境の改善
現在、トラックドライバーの労働環境は過酷であるとされています。運転時間の長さ、荷物の積み下ろし作業などが主な問題点です。そのため、労働環境の改善を進めることが必要です。例えば、複数のドライバーで1台のトラックを運行する方法や、ロボット技術を活用した自動積み下ろしシステムの導入などが考えられます。
 
2.賃金・待遇の改善
トラックドライバーの賃金や待遇を改善することで、仕事の魅力を高めることができます。また、安全性を高めるためにも、ドライバーに安心して運転できるような待遇を提供することが必要です。
 
3.若年層の育成・採用
トラックドライバーは高齢化が進んでおり、若年層の育成・採用が急務となっています。そのため、教育・研修制度の整備や、若年層に対するアピール活動の充実が必要です。また、女性や外国人労働者など、多様な人材を採用することも考慮する必要があります。
 
4.テクノロジーの活用は、ドライバー不足を補うために、自動運転技術の導入など、テクノロジーを活用することも考えられます。しかし、安全性や法的課題などの問題があるため、慎重に検討する必要があります。
 
以上のような取り組みが考えられますが、トラックドライバー不足は複雑な問題であり、その解決には時間がかかる可能性があります。しかし、物流業界だけでなく、私たちの生活にも大きな影響を及ぼす問題であるため、様々な分野の関係者が協力して取り組むことが必要です。

 
 
「ChatGPT」は、OpenAIが2022年11月に公開したチャットボットです。ちなみに、GPTは、「Generative Pre-trained Transformer」の略です。
 
質問を行うと、あらかじめネット上から収集された情報をもとに回答を作成、このような優れた自然文で答えてくれると話題になっています。
 
先の「トラックドライバー不足」に関する回答、皆さまはどう思いますか?
まず文章はとても自然です。回答内容、すなわち課題に対する回答のポイントも、的を得ています。
 
ただし、質問の内容によっては、不正確な内容を返すことも多々あるようです。
 
 
 

筆者のことを「ChatGPT」に聞いたら、とんでもない答えが返ってきた

 

Qus.
坂田良平について教えてください。(※筆者です)
 
Ans.
坂田良平(さかた りょうへい)は、日本の声優であり、ナレーターでもあります。1984年2月1日に埼玉県で生まれ、アクセルワンに所属しています。
 
坂田良平は、アニメやゲームのキャラクター役として広く知られています。その中でも代表的な作品としては、「進撃の巨人」のエレン・イェーガーや「鬼滅の刃」の炭治郎などがあります。また、「ハイキュー!!」の影山飛雄や、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の三日月・オーガスなどの役柄も有名です。
 
その他にも、テレビアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の仲代達矢役や、「Fate/Grand Order」のエミヤ役、「ラブライブ!サンシャイン!!」の桜内梨子の弟・駿太郎役など、多数の作品に出演しています。
 
坂田良平は、独特の声色と緻密な演技力が特徴的で、幅広い役柄を演じ分けています。また、ナレーションにおいても、その深みのある声で多数の番組やCMに出演しています。

 
 
誰のことでしょうね?(笑)
調べたのですが、「坂田良平」という声優はいません。
エレン・イェーガー役の声優は、梶裕貴さん。竈門炭治郎役は、花江夏樹さん。他に挙げたアニメと役柄の声優も、すべて別々の人が演じています(同一人物ではありません)。
仲代達矢さんは、声優ではなく俳優ですし、アニメ「あの日た花の名前を僕達はまだ知らない。」には参加されていません。
 
さらに言えば、声優 坂田良平なる人物の特徴として挙げた、「独特の声色と緻密な演技力が特徴的で、幅広い役柄を演じ分けています」というのは、一見ちゃんとした批評のようでいて、よくよく考えてみれば声優さん誰しもに当てはまるような、当たり障りのない形容と言えます。
 
 
 

さらに「ChatGPT」のアラを探してみる。

 

Qus.
「物流の2024年問題」について教えてください。
 
Ans.
「物流の2024年問題」とは、2024年に導入される自動車運転支援技術「高度運転支援システム(ADAS)」に対応した自動車が増えることにより、物流業界におけるドライバー不足が深刻化するという問題です。
 
具体的には、ADAS搭載車は自動的に車間距離や速度調整などを行うため、従来のような高度なドライビングスキルが求められなくなるため、ドライバーの仕事が減少することが懸念されています。その結果、今後数年間で数十万人規模のドライバー不足が生じるとされています。
 
この問題に対応するため、物流業界では自動運転技術の導入や、ドライバーの仕事内容を変えるなど、新しい人材育成・活用策を模索しています。また、ドライバーの労働環境の改善や働き方改革の推進など、業界全体での取り組みも進められています。
 
しかしながら、この問題に対する解決策はまだ模索中であり、今後も物流業界においては様々な課題が生じることが予想されています。

 
 
まさか、「物流の2024年問題」とADASが組み合わされて回答されるとは思いませんでした。また、回答に論理的破綻※が見受けられる点も注目です。
 
 
※「ドライバーの仕事が減少する」から「ドライバー不足が生じる」という点
 
その他にもいくつか質問をしてみましたが、質問に対して正答できる割合は、決して多くないようです。世間の人がある程度把握しているテーマについては妥当な回答が得られるものの、少し専門的な領域に入ると、正答率が下がるようです。
 
ただし、これらは「今現在」の性能であって、今後さらに「ChatGPT」が進化すれば、より正確な回答を返すことができるようになるでしょう。
 
 
 

「ChatGPT」はライターの仕事を奪うのか

 
「ChatGPT」の登場によって、さまざまな課題が提起されています。
 

  • ライターの仕事を奪う可能性
  • 論文などで悪用される(「ChatGPT」が作成した論文を、自分で書いたかのように発表する)
  • 学生の研究などに悪用される

 
最後の課題は、例えば小学生の読書感想文などを「ChatGPT」で作成するような不埒な人が登場する可能性が指摘されています。
 
冒頭に挙げた、トラックドライバー不足に関する回答について、皆さまはどう思いますか?
学生や、あるいは物流企業に入社した社会人一年生レベルであれば、相応に評価できるレベルには達しているとは思います。
しかし、物流企業の課長以上や、専門の物流ライターの回答だとすれば、評価には値しないと筆者は考えます。理由は、回答者の意見や個性がゼロだからです。
 
ライターにせよ、物流従事者にせよ、あるいは他のあらゆる産業でも同様ですが、大切なのは、世の中にある事象について、「私はどうする?」「私はどう思う」を表明できることです。物事に広く精通し、正確な知識を持っていることは大切です。しかし、知識は、その人の行動の糧となって初めて価値を生むものであり、知識の量だけを競っても、本当の目的にはたどり着けません。
 

「知識も大切だが、知恵をもっと出せ。
知識は比較的簡単に手に入るが、知恵は大きな努力と体験がないとなかなか手に入らない」
(安藤百福、日清食品創業者で、チキンラーメンやカップヌードルの開発者)

 
 
このように安藤百福氏は言っていますが、知識を手に入れるのもそれなりに労力を要します。その労力を「ChatGPT」が過去のものにしてくれるならば、人は知恵を手に入れる努力に集中できるようになります。それは素晴らしいことでしょう。
 
「こたつライター」と呼ばれる、TVやラジオ、あるいはネット検索した情報だけをまとめてライティングするような人たちは、仕事を失うかもしれません。そう考えると、「ChatGPT」は、ライターの能力にふるいをかける役目を果たすかもしれません。「こたつライター」のようなライターは仕事を失いますが、分析能力に長け、課題の解析能力が高いライターは、より注目されるようになるでしょう。
 
「ChatGPT」が、今後どんな未来を創り上げるのか、とても興味深いです。
 
 
 


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