先日、東京ビッグサイトにて、「国際物流総合展2023 INNOVATION EXPO」が開催されました。大盛況だったようです。
- 初日来場者数 12,867名(2021年 5,014名)
- 2日目来場者数 15,155名(2021年 6,009名)
- 3日目来場者数 16,618名(2021年 6,818名)
当社の常務取締役 鈴木清も訪問しましたが、いろいろと感じるところはあったようです。
「自動化の波を感じました。
総体的に見れば、『人手不足』『SDGs』『物流の2024年問題』を取り上げたブース(出展者)が多かったように感じました」(鈴木)
確かに、AGVやAMRといった自動搬送ロボットや、自動フォークリフト、あるいは自動倉庫系の展示が多く、また来場者の関心も集めていたように感じます。
「一方で、物流不動産系の出展は、少し勢いが欠けていたようにも感じました」(鈴木)
日本GLP、野村不動産といった大手不動産ディベロッパーが出展していなかったことに加え、展示内容も物流施設の紹介に留まっていたところが多かったように感じます。
思い返せば、「国際物流総合展2023 INNOVATION EXPO」の本店にあたる、昨年開催された「国際物流総合展」では、物流施設の紹介に加え、各出展者が出資する物流IT、物流スタートアップの展示も意欲的に行っているところが多く見受けられました。
「物流不動産ビジネスが、今後の物流ビジネスを牽引していくんだ!」という気概が溢れていたように感じます。
「今回の出展内容を見ていると、やはり『物流をコントロールしているのはメーカーや小売、卸などの荷主だよなぁ』と感じました」(鈴木)
ご承知のとおり、「物流の2024年問題」を筆頭とした物流クライシスが社会課題として広く認識されつつあります。
そして、その課題を解決するためには、荷主の主体的で積極的な取り組みが必要であることも認識されるようになってきました。
政府の見解を引用しましょう。(少し長いです)
「物流プロセスには、物流事業者のほか、発荷主企業、着荷主企業、消費者等様々なプレイヤーが関与している。発荷主企業と着荷主企業との間では、商品等の受発注にかかる契約がかわされ、着荷主企業の指定する場所に貨物を届ける旨の契約が締結される。それを受けて物流事業者は、貨物を物流施設等に輸送する契約を荷主企業(主に発荷主企業)と結ぶこととなる。
このように、貨物輸送の前提となる貨物の内容や納品時期等については、発荷主と着荷主との間で決定されるため、物流事業者が独自に貨物輸送の効率化を図ろうとしても実施困難な場合が多い」
(持続可能な物流の実現に向けた検討会 中間取りまとめ、2023年2月8日 経済産業省、国土交通省、農林水産省)
端的にまとめれば、「物流ビジネスをデザインしているのは、物流企業ではなく、荷主ですよ」ということですね。
ですから、今回展示会でも、物流企業ではなく、荷主にターゲットをおいている出展者が多くあったように感じました。
「残念ながら、中小物流企業では導入を躊躇してしまうようなソリューション(※システム、マテハン、ロボットなどを総称)が多かったように感じました。
受け身だけで仕事をやっている物流企業では、これらのソリューションを導入するのは難しいでしょう」(鈴木)
ただし、それは荷主側も同じだと、鈴木は指摘します。
「物流ソリューションが進化しても、すべての荷主企業が導入できる、あるいは導入するわけではありません」(鈴木)
最新の物流ソリューションを導入できる企業と、できない(あるいは「しない」)企業の違いは、何を生むのでしょうか?
最新の、そして物流クライシスに効果を発揮するような物流ソリューションを「導入できる荷主企業」、そして「提案できる物流企業」は限られてくるでしょう。
では、ここから漏れた企業はどうなってしまうのでしょうか?
「物流企業に関して言えば、設備装置化への道を辿るしかないでしょう。つまり、先進的な物流改善への取り組みを行う荷主企業や、大手物流企業に言われるがまま、受け身のままに働くわけです」(鈴木)
この状態を、設備装置化と鈴木は指摘します。
そして、物流企業の設備装置化とは、すなわち挿げ替えの可能な存在になってしまうことを指します。
さらに恐ろしいことを鈴木は指摘します。
「極論、運送会社が潰れても、クルマとドライバーは残るわけです。
倉庫会社も同じです。倉は残るわけですから」(鈴木)
設備装置化した物流企業が倒産しても、(細かい話は脇においておくとして)物流リソースがなくなるわけではないことを、鈴木は指摘します。
鈴木は以前から、「物流はなくならないが、物流企業はなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らしてきました。
どうやら、今回訪問した華々しい展示会から、同様の危惧を感じたようです。