秋元通信

「浮いてるうんちは、必ずしも不健康ではない」、うんちに関する最新の研究を紹介

  • 2023.9.30

こんな記事がありました。
 

 
 
「浮いてしまううんちは不健康」、実は筆者もそう思い込んでいました。
「うんちが浮く」のは、うんちが水よりも比重が軽い状態にあるからです。そしてその原因は、うんちに含まれる脂肪にあると考えられてきました。
 

  • 膵臓の病気や、小腸の切除などにより、脂肪の吸収能力が低下してしまった人。
  •  

  • 日常的に脂肪を多く含む食事をしている人。

 
こういった人のうんちが、水に浮いてしまうと考えられてきたのです。
 
 
ところが、研究の結果、うんちが水に浮くのは、うんちに含まれるメタンガスや水素ガスの量に依存することがわかってきました。
メタンガスと水素ガス、いずれも腸内細菌が生成するものですが、水素ガスが多いと下痢になり、メタンガスが多いと便秘になりやすいと言われています。
 
 
マウスによる実験では、腸内に細菌がいない無菌マウスのうんちは、常に水に沈むことが分かりました。そして、腸内細菌は、宿主たる私たちの健康状態、あるいは精神状態にすら大きな影響を与えることは、以前秋元通信でもご紹介しました。
 

 
健康な人の10~15%は、常に浮くうんちをしているという研究結果もあります。
うんちが浮くのは、必ずしも不健康の証ではないのです。
 
 
 

かつては貴重な資源だったうんち

 
大昔、古代においては、人は適当な場所で用を足していました。いわゆる野糞状態です。
 
古事記では、奈良時代には川の上に「川屋(かわや)」というトイレを設け、排泄物を川に流していたという記述があります。
一説には、この「川屋」が、後に「厠(かわや)」という、トイレを意味する言葉の語源と言われています。
 
鎌倉時代以降、厠にたまったし尿は、下肥(しもごえ)、すなわち肥料として重宝されました。
海沿いの土地では、海藻などを肥料として利用できたため、下肥が必要とされたのは、内陸部です。また水田ではなく畑作で重宝されました。特に都市近郊では、人口の増加に伴い、農作物の生産性向上が求められたため、下肥の価値は高まりました。
人が排出するし尿は、下肥として利用できるため、対価を支払ってでも買い求められる、貴重なものになったのです。
 
し尿が邪魔者扱いされるようになった理由は、いくつかあるようです。
 

  1. 江戸時代以降、人口が増加したため、都市部ではし尿を下肥として処理しきれなくなった。
  2.  

  3. 明治に入り、欧米人が多く日本に来訪するようになってから、生野菜を食べる習慣も日本に入ってきた。(実は、以前の日本では、野菜は加熱して食べるのが前提だった)

 
2.については、「下肥を利用すると、人の体内にいた寄生虫が野菜についてしまう」「そもそも、うんちを使った野菜なんて食べたくない」といった認識も広がっていったとされています。
結果、し尿を用いた下肥は使われなくなり、うんちは邪魔者扱いされるようになったそうです。
 
 
 

SDGsとうんち

 
SDGsでは、17ある目標の6番目に「安全な水とトイレを世界中に」を掲げています。
 
「トイレがなく、道端や草むらなど屋外で用を足す人は、4億1900万人います」と課題提起した上で、「6-2 2030年までに、だれもがトイレを利用できるようにして、屋外で用を足す人がいなくなるようにする」としています。
 
このSDGsの方針に異を唱え、野糞をむしろ推奨する意見もあります。
野糞がNGなのは、衛生環境を悪化させ、伝染病などの原因となるからです。対して、野糞推奨派の意見は…
 
 

  • 人が排出するし尿は、自然環境における食物連鎖のベースとなる存在であり、とても貴重で価値あるものである。
  •  

  • そもそも、正しい野糞を行えば、伝染病の原因とならずに自然環境に貢献できる。

 
このように主張しています。
 
 
これは、ケースバイケースではないでしょうか。
SDGsは、地球上のすべての人のあり方について、最大公約数としてもっとも価値ある選択を示すものであり、当然ながら、例外や、まるで当てはまらない環境、社会、あるいは生き方をしている人やコミュニティもあります。
 
例えば、痩せた土地に住み、農耕が難しい社会では、野糞は生活や経済を変えうる貴重な存在となりえます。
ただ、野糞を推奨しなくとも、適切なし尿処理の方法を推奨したほうが建設的、実践的だとは思いますが…
 
 
うんちは、私たちが常に向き合うものです。
邪魔者扱いせずに、適切な付き合いを行うことが、私たちの健康や、豊かで健全な社会へとつながるのでしょうね。
 
 
 


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