秋元通信

「送料無料」表示は撤廃されるのか?( 「『送料無料』表示の見直しに関する意見交換会」(消費者庁))

  • 2023.11.30

岸田内閣が推し進める「物流革新」政策では、ECや通販における送料無料表示の撤廃を目指しています。
一方で、これまで送料無料をうたっていたEC・通販事業者からすれば、送料無料表示を撤廃することに対して意見もあるでしょう。消費者庁が開催している「『送料無料』表示の見直しに関する意見交換会」では、さまざまな関係者から意見を募っています。
 
現時点で9回開催されている本会、どのような意見が出たのかを、ざっと列記してみます。
 
 
 

第一回 (2023年6月23日)

 
意見発表者:全日本トラック協会

  • 「送料無料」の表現はやめてもらいたい。送料がかかっていることがわかる表現にしてもらいたい。

 
 
 

第二回 (2023年8月9日)

 
意見発表者:アジアインターネット日本連盟

  • 「送料無料」表示の見直しにあたっては、その目的を明確にした上で、目的に対して効果的な対策かどうかを議論して欲しい。

 
 
 

第三回 (2023年8月10日)

 
意見発表者:一般社団法人新経済連盟

  • 送料無料表示(「〇〇円以上送料無料」を含む)の別の表現への置き換えは様々な理由から困難。
  • 物流事業者の苦労は理解するが、送料無料表示が原因だとする主張には合理的根拠がない。したがって、表示を変えても問題解決にはつながらない。

 
 
 

第4回 (2023年8月10日)

 
意見発表者:一般社団法人セーファーインターネット協会

  • 運賃のお客様への転嫁という意味では、送料無料も送料⚫円も大きな差異はない。
  • 「送料無料」表示の見直しにより、「運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映される」ことになる根拠等を示していただきたい。
  • 政策効果を立証できないなら、安易に「送料無料」表示の見直しを求めるべきでない。

 
 
 

第5回 (2023年8月22日)

 
意見発表者:日本郵便株式会社

  • 「送料無料」表示の見直し機運そのものは、歓迎。
  • 「物流の2024年問題」の本質が「送料無料」表示見直しのみの問題かというと疑問。

 
 
 

第6回 (2023年8月23日)

 
意見発表者:公益社団法人日本通信販売協会

  • 送料無料表示を見直す場合、小売業全体で取り組むことを希望する。
  • 法規制化する場合、全事業者・関係者を対象に実効性ある規制を希望する。

 
 
 

第7回 (2023年9月22日)

 
意見発表者:全日本交通運輸産業労働組合協議会、全日本運輸産業労働組合連合会及び全国交通運輸労働組合総連合

  • 物流の危機的状況に対する消費者の理解喚起と行動変容を!
  • 「送料無料」表記は物流の背後にある「労働」への想像力を欠如させる結果になる。

 
 
 

第8回 (2023年10月6日)

 
意見発表者:ヤマト運輸株式会社及び佐川急便株式会社
 
 

※佐川急便の意見
  • 「送料無料」表示が、荷受人(エンドユーザー)の誤解を招くことはある。
  • 出荷人からも「送料無料とはどういう仕組みになっているのか」といった質問を受けることがあるが、「送料を商品代に含んでいるだけなので、当社が特定のお客様だけに対して送料を無償で集荷・配達するということはございません」と回答することがある。

 
 

※ヤマト運輸の意見
  • EC事業者は、「買いやすい」表現の一つとして「送料無料」表示を行っている。
  • 我々は、EC事業者の「売りやすい」、購入者の「買いやすい」を支援していくスタンスであり、「送料無料」表示がされるかどうかで、これが変わるわけでない。
  • 「送料無料」表示だけを取り上げて、単体で議論することは難しい。

 
 
 

第9回 (2023年11月8日)

 
意見発表者:

  • 大石 美奈子氏(消費生活アドバイザー)
  • 河村 真紀子氏(主婦連合会)
  • 河野 康子氏(一般財団法人日本消費者協会)
  • 増田 悦子氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会)

 
 

※大石 美奈子氏
  • 消費者にとって、「送料無料」は魅力的。
  • 一方、「送料無料」という表示によって、「配送事業者の存在・人件費」、「輸送のためのトラック等のインフラ」、「輸送に使われるエネルギーなどの必要性」について、思い至ることができなくなる懸念がある。

 
 

※河村 真紀子氏
  • 通信販売における送料表示の「透明化」はすべき。すなわち、「送料無料」の場合、運送代を誰が負担しているのかを見える化すべき。

 
 

※河野 康子氏
  • 「送料無料」表示を法規制したところで、その効果は限定的。
  • 社会活動を円滑に進めるには人の労働と適正対価は不可欠であるところ、「送料無料」表示が、商品の購入に関わるサプライチェーンで起こりうる負の影響を見えにくくしてしまう可能性には留意すべき。

 
 

※増田 悦子氏
  • 多くの消費者は、「送料無料」だからといって物流を軽視しているわけではなく、本当に物流業界が無料でサービス提供しているとも思っていない。

 
 
 
さて、いかがでしょうか。
ざっと列記しただけですが、それでも(特に物流に従事する皆さまは)いろいろと感じる、あるいは考えさせられることでしょう。
 
筆者は…、別メディアで本テーマに関しては執筆していますので、秋元通信で意見を述べるのは避けておきます。
 
本会のような、政府主導の意見公聴の場では、それぞれ意見を述べる人(企業)もそれぞれの立場だったり下心だったりを隠して発表するので、本質が見えにくくなりますね。
 
来年の通常国会では、「物流革新」政策に対し、いよいよ法制化が議論されます。
今後の動向に注目しましょう。
 
 
 


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