秋元通信

「CLO」(Chief Logistics Officer)と物流統括管理者は違います!

  • 2024.5.22

今国会において、物流二法の改正が決定されました。
施行日はまだ未定ですが、おそらく2025年ないし2026年の4月1日となることでしょう。
 
 
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(物流総合効率化法)は、「物資の流通の効率化に関する法律」(流通業務総合効率化法)と改称されました。
 
この流通業務総合効率化法においては、「特定荷主」「連鎖事業者」など、さまざまな聞き慣れない言葉が登場しますが、今回は「物流統括管理者」について、説明します。
 
昨今、注目される「CLO」(Chief Logistics Officer)と物流統括管理者を同じ意味として捉えている方も少なくないようですが…、どうやらこれ、違うようですよ。
 
 
 
 

物流統括管理者とは

 
流通業務総合効率化法では、荷主や元請事業者など、輸送ビジネスにおいて指示命令を出す立場の事業者を「連鎖化事業者」と定義しています。
 
この「連鎖化事業者」のうち、大量の貨物を取り扱う事業者を「特定連鎖化事業者」と定義し、「物流統括管理者」を専任する必要があると定めました。
 
 
物流統括責任者は、物流を効率化するための中長期計画を作成し、国に提出する義務を負います。また、物流統括責任者は政府に氏名と役職を届け出なくてはなりません。
 
 
では、物流統括責任者は、企業内ではどのような立場の人なのでしょうか?
 
流通業務総合効率化法では、物流統括責任者になる人の条件として、「特定連鎖化事業者が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならない」とあります。
 
これ、平社員はムリでしょうが、課長クラスならばギリギリOKではないでしょうか。
 
 
 
 

CLOとは

 
CLOは「Chief Logistics Officer」の頭文字を取ったものです。
これをどのように日本語訳するかと言うと…、なかなか悩ましいです。
 

  • 最高ロジスティクス責任者
  • 最高ロジスティクス管理責任者
  • 物流担当役員
  • ロジスティクス担当役員

 
ざっとネット上を漁っても、いろいろな日本語訳が存在します。
 
CLOと物流統括責任者の違いを論じるためには、まず物流とロジスティクスの違いを理解する必要があります。
 

  • 物流
    生産者から消費者に至るまでの商品の流れ。物的流通。
  •  

  • ロジスティクス
    《軍事用語で兵站?(へいたん)?の意》企業の物流合理化の手段。原料の手当てから販売まで、物流を効率的に管理するシステムをいう。
  •  
    ※出典は、ともにデジタル大辞林

 
比べてみると、ロジスティクスという言葉は、物流の上位に位置することが分かります。
物流を構成する要素は、輸送、保管、流通加工、包装、荷役、情報処理の6つであり、言ってみれば経済活動に対する呼称です。
 
一方、ロジスティクスは、物流を戦略的に捉え、合理化などを実現するための仕組みに対する呼称と言えます。
 
なお、物流の英訳は「Physical Distribution」(物的流通)であって、「Logistics」ではないことも付記しておきましょう。
 
 
CLOと物流統括責任者の違いにも、同様の違いがあります。
 
物流統括責任者が担当するのは、企業の物流プロセスだけですが、CLOにはもっと広い視野で、サプライチェーン全体を見渡し、ときには製品開発や経営といった企業内の全部門に対し助言や指示をする必要があります。
 
一例を挙げましょう。
 
今後パレットの標準規格として、ますます注目が集まる1100mm×1100mmパレットですが、もし現行製品の荷姿サイズが1100mm×1100mmパレットに載らない(あるいは「載せにくい」)場合、企業としては物流標準化の流れに取り残される危惧があります。
 
CLOの役割は、「今の◯◯という製品だけどさ、物流改善のために荷姿を含めた製品デザインを再考してください」と製品開発部や営業部に要望することです。
つまり、CLOには各部門間を横串しで俯瞰できる能力が求められるわけです。
 
 
実際のところは、CLOが物流統括責任者を兼任するケースが多いでしょう。
ただ逆に、物流統括責任者を専任しても、本来のCLOが空席のまま、「これでウチも物流改善への取り組みはバッチリだ!」と勘違いする企業は…、よろしくないでしょうね。
 
 
 


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