秋元通信

【運送ビジネスはいつ破綻するのか?】 14万人のドライバー不足!?

  • 2017.1.30

「2015年度では、14.1万人のドライバー不足が発生するものと予測される」

このようなフレーズを聞いたことはありませんか?
これは、平成20年9月、国土交通省が発表したレポート「輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の検討」における分析報告です。
当時、「トラックドライバーが14万人も将来不足する!?」というフレーズだけが独り歩きし、一般メディアでもたびたび、そして幾分センセーショナルに取り上げられた記憶があります。
 
では2017年の現在はどうなのか?
物流業界の人不足は深刻な課題ですが、そうは言っても14.1万人も、トラックドライバーが不足しているのでしょうか?
 
物流は、社会を支えるインフラです。また、物流は流通に対し、経済活動としての実態を与える大事な役目を担っています。しかし一方で、物流ビジネスは人不足を始めとする、さまざまな課題を抱えています。
「もう運送ビジネスは限界だ」と言った趣旨の発言をする方も業界の内外を問わずいらっしゃいます。
 
【運送ビジネスはいつ破綻するのか?】とは、ずいぶんと大仰なタイトルですが、運送ビジネスの問題点を考える不定期連載として、お届けしたいと考えています。
 
 
さて、本題に戻ります。
「14.1万人のトラックドライバー不足」とは、どれくらいのインパクトなのでしょうか。
2015年3月末における運送会社の数は、62,637社とされます。つまり、1社あたり、2.25人のトラックドライバーが不足する、という計算になります。
「うちは今、ドライバーがいなくてトラックを4台も余らせているよ!」という会社も中にはあるでしょう。しかし、この算出は、従業員が10名に満たない運送会社から、1,000名を超える運送会社までひっくるめて算出です。イメージしづらいですね。
 
筆者の主観では、トラックドライバー不足は深刻な課題ではあるものの、平成20年(2008年)に同レポートで予測された、14.1万人ものトラックドライバー不足は少々オーバーであると考えます。
 
ご説明しましょう。
同レポートでは、2015年における国内貨物総輸送トン数を47億トンとして計算しています。ところが2015年度における実際の自動車貨物輸送トン数実績は、42.89億トンでした。
レポート発行当時の予想を大きく超えて、トラックによる輸送貨物は減少していることになります。
ちなみに、同レポートでは貨物輸送トン数予測をみっつのパターンに分けてトラックドライバー不足を算出しており、もっとも低い貨物輸送トン数=40.9億トンの場合は、トラックドライバー不足は発生しないとしています。
 
ただし、自動車貨物輸送トン数だけでなく、積載率の推移を診ると、現在の運送ビジネスにおける別の問題が浮き彫りになってきます。
 
以下は、国土交通省がまとめる「自動車輸送統計調査」から算出しています。
輸送トンキロの推移を診ると、2008年:3464億トンキロから、2015年:2043億トンキロまで下がっています。約60%の減少です。
しかし、積載率を診ると、2008年には43.4%あった積載率が、2015年には36.3%まで下がっています。
 

2004年から2015年までの自動車貨物輸送トン数/トンキロ/能力トンキロ/積載率(トンキロ÷能力トンキロ)をまとめたもの。  ※クリックで拡大します。

2004年から2015年までの自動車貨物輸送トン数/トンキロ/能力トンキロ/積載率(トンキロ÷能力トンキロ)をまとめたもの。

積載率が下がっていることは意外ではないでしょうか。
貨物量が減り、またトンキロも大幅に減っていることから、トラックが国内貨物の輸送に果たす負担も減っているはずです。しかし実際には、積載率が下がっていることから、貨物量の減少、トンキロの減少ほどには、トラック輸送の負担は減っていないと考えられます。
 
この続きは、またお届けします。
 
 
 

注記と出典

 

輸送トンキロ

輸送トン数は、輸送した物の重量は表されるが輸送距離の概念が含まれていない。
したがって、輸送活動の大きさを表すためには輸送トンキロの概念が生じてくる。例えば、1トンの物を10km輸送したときは1×10=10トンキロであるが、同じ1トンを100km輸送したときは1×100=100トンキロとなる。このように輸送活動を質的に比較するときはトン数とトンキロの両者が必要である。
※「自動車輸送統計年鑑 平成27年度版」から抜粋。

 

積載率

ここでは、「輸送トンキロを能力トンキロで割った数値」を積載率としている。
能力トンキロとは、最大積載量でトラックが走行した時の理論最大値のことである。なお、数値の出典元である「自動車輸送統計年鑑」には、「能力トンキロと輸送トンキロの比較によって輸送効率が算出できる」という説明はあるが、積載率という言葉は存在しないことを付記しておく。
 

「輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の検討」(国土交通省)

http://www.mlit.go.jp/common/000022941.pdf
 

「自動車輸送統計調査」

http://www.mlit.go.jp/k-toukei/jidousya/jidousya.html
同報告書は毎年公開されており、輸送ビジネスを考える上でもっとも基本的な統計調査と言える。
なお、記事中では貨物のみのデータを参考にしているが、同報告書中では貨物のみならず旅客も含まれている。
過去の報告書は、「e-Stat」(政府統計の総合窓口)から検索可能である。
http://www.e-stat.go.jp/

 

「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2016」

http://www.jta.or.jp/index_truckgaiyo.html
運送事業者数は、全日本トラック協会が発行する同書を参考にした。
 
 


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