秋元通信

本音は別? 女性の退職理由を考える

  • 2016.5.23

※記事中の図表は、クリックで拡大します。

興味深い記事がありました。

「会社の退職理由、8割がウソ!? 女性が本音を隠す3つのテクニック」
http://a09.hm-f.jp/cc.php?t=M212019&c=2&d=f1a1
(ダイヤモンド・オンライン編集部)

全国の10~30代の働く女性300人に聞いた「転職する際、退職理由のホンネとタテマエを使い分けるか」というアンケートの結果 

全国の10~30代の働く女性300人に聞いた「転職する際、退職理由のホンネとタテマエを使い分けるか」というアンケートの結果

「女性の退職理由に関する調査」を行ったところ、8割以上の女性が転職の際、退職理由に本音と建前を使い分けるというアンケート結果が出たそうです。

◇建前の退職理由
No.1 家庭の事情(38%)
No.2 キャリアアップ(21%)
No.3 労働時間や労働環境(12%)
No.4 仕事の内容(10%)

◇本音の退職理由
No.1 人間関係(22%)
No.2 給与(22%)
No.3 労働時間や労働環境(19%)
No.4 仕事の内容(13%)
※共に重複回答あり

なかには、「結婚すると嘘をついた」という強者もいるようで…
結婚していないことが知られたら、かえってよろしくない噂が広まりそうな気もするのですが。

 

 

こちらはエン・ジャパンのアンケート。男女区別なく行われたものです。

こちらはエン・ジャパンのアンケート。男女区別なく行われたものです。

ただし、男女性別の差に隔てなく、退職理由に嘘をつくというのは、よくあることです。
実際、エン・ジャパンが今年2月に行った、男女区分けのないアンケート調査でも、5割近くが退職理由に嘘をついたと答えています。

 

 

 

 

筆者が注目したいのは、退職理由の本音と建前を使い分けることではなく、建前の理由、本音の理由の両方4位に「仕事の内容」が含まれていること。
同アンケートでは複数回答が許されています。つまり本音として「10人にひとりは仕事内容に不満を抱いていたが」、建前として「仕事の不満に対する本心は会社には伝えていない(内容を変えて伝えた)」ということになります。

 

筆者がお世話になっていたお客様企業にいらっしゃった、20代後半の女性の話をしましょう。
一部上場企業の広報部に所属し、40代半ばの男性課長とともに、Web制作のお仕事を頂戴していた筆者の窓口を務めていただいた方です。

ある時より、その女性からWeb制作という仕事に関して、さまざまご質問を頂戴するようになりました。仕事とは直接関係のない内容も含まれており、「ちょっときな臭いなぁ」と思いながらもやり取りをしていたところ、半年ほどして転職したいという相談を受けました。

転職し、HTMLコーダー(ホームページの制作を行うプログラマー)になりたいという彼女。
「何を馬鹿なことを言っているのか!?」、筆者は率直そのように感じました。

筆者の目から診て、彼女は価値のある仕事をしていました。
広報という、会社全体を俯瞰できる立場にあり、またさまざまな新プロジェクトの中心メンバーとして活動させてもらっていました。例えば、まだCSRという言葉が社会に定着していなかった時代に、20代にして彼女は一部上場企業のCSR活動を創り上げる仕事をしていました。つまり、得がたい経験をする機会に、彼女は恵まれていたわけです。

いぶかる筆者に、彼女が告げた言葉が忘れられません。
「お手伝いで終わるのは嫌なんです」

HTMLコーダーを志した背景は、(彼女の言葉を借りれば)お手伝い的に自社WebサイトのHTMLコーディング(プログラム)を行っていたから。ただし、本職ではないので、彼女のコーディング知識やレベルは、とてもプロとして通用するものではありませんでした。
いろいろなことをやらせてもらいながら、でもどれも中途半端に終ってしまうのであれば、ひとつに絞って、プロとして通用するスキルを身に着けたい。そして、それがHTMLコーディングであったと言う顛末です。

そう語る彼女に、筆者はうなずかざるを得ませんでした。

 

友人の話です。
彼女も20代。アパレルメーカーに勤め、系列店で販売をしていました。
ある時から、彼女は本社への異動を希望し始めます。企画を行いたい、と考え始めたのです。本社への異動を希望する販売員は少なくないため、これは容易いことではありません。しかし、彼女は異動のための活動を続け(筆者もいろいろと入れ知恵をしました)、結果として彼女は本社企画室への異動を果たしました。
異動して半年。
彼女は結婚を理由に退職しました。王道とも言える理由ですが、彼女が語った本音は、「雑用ばかりで、期待していたことと違った」というものでした。

 

「意識高い系」というネットスラングがあります。
これは承認欲求が強すぎる学生や若手ビジネスマンを揶揄する言葉であり、ある意味、ここで挙げた彼女たちも「意識高い系」だったのかもしれません。このふたりに限らず、筆者は同年齢のサラリーマンから比べても、能力も意識も高い女性が、転職してしまう様子を何度も目にしてきました。

  • 年齢のわりには、会社において重要な仕事を任されている。
  • 地頭が良い。基本的なヒューマンスキルが高い。
  • 任されている仕事が、新しく前例のないプロジェクトであることが多い。
  • マルチタスクを必要とされている。

そして、彼女たちは必ず、「スキルを身に着けたい」と言います。
ただし、そのスキルというものが、どういうものなのかを明確にイメージできている人は稀です。彼女たちの多くは、「今のままではスキルは身に着けられない」という、そこだけは確信を持っています。

筆者の私見ではありますが、これは会社の問題であり、課題であると考えます。
男性中心の企業文化において、女性が納得できるスキル獲得プランを示すことを怠ってきた日本社会の問題であるとも言えます。
最後に、興味深い統計資料をご紹介しましょう。

雇用動向調査(2014年度 政府統計)から。女性の半年以内離職率への偏重は明らか。

雇用動向調査(2014年度 政府統計)から。女性の半年以内離職率への偏重は明らか。

2014年の男女別/産業分野別に集計された勤務年数と離職者数の関係を示した統計資料があります。
男女合計の離職者数を診ると、もっとも離職者数が多いのが、勤続6ヶ月未満。
しかし、男女別/産業分野別に診ると、男性の場合は「一番退職しやすい勤続年数」が、ばらけていることが分かりますが、女性の場合は、全11の産業分野中7つで「一番退職しやすい勤続年数」=勤続6ヶ月未満となっています。

統計資料は、これだけ明確に語っています。
半年以内で離職する女性が高いことを、単純に、「意識が低い」、「根性がない」などといった、本人の資質の問題に決めつけることができますか?

 

 

 

繰り返しになりますが、これは男性中心にデザインされてきた日本の企業文化の弊害の表れであるように、筆者は思うのです。

次号の秋元通信では、今号に関連し、「女性活用と女性採用」をテーマにお届けしたいと思います。


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