秋元通信

経団連発表「Society5.0」を紐解く

  • 2018.11.22

2018年11月13日、経団連は『Society5.0 -ともに想像する未来-』という提言書を発表しました。
 
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/095.html
 
これは、世界的に社会が変革していく今、日本社会がどのように変わっていくべきか、その方向を示した提言書です。中身は専門的かつ先進的な用語も含まれており、率直に言えば少々難解です。
今回は、この「Society5.0」を秋元通信流に紐解きましょう。
なお、本記事では同提言書を学術的かつ網羅的に解説するつもりはありません。あくまで秋元通信流に、おもしろそうなところ、注目されそうなところだけを抽出し、お届けします。
 
 
まず、「Society5.0」とは何か?

Society1.0 = 狩猟社会 (人類誕生期)
Society2.0 = 農耕社会 (紀元前13000年)
Society3.0 = 工業社会 (18世紀末以降。第一次および第二次産業革命を含む)
Society4.0 = 情報社会 (20世紀後半以降。第三次産業革命を含む)
Society5.0 = ?、つまり定義はこれから。第4次産業革命の過渡にある現在です。

 
提言書では、今「世界には大きな変化の波」が訪れているとしています。AIやIoTなどの革新的デジタル技術の登場、世界経済が欧米からアジア(中国、インド、ASEAN)にシフトする経済・地政学的変化などです。この変化について、提言書では「変化にはリスクだけではなく機会が伴う」と言い切ります。
そのリスクを機会に変えるためのアクションプランであり、考え方を称して、Society5.0と呼んでいるわけです。
 
「Society5.0は、創造社会」、提言書はこう言い切ります。
IoT、AI、ロボット、そしてブロックチェーンなどのデジタル革新を、人々の多様な生活や幸せの追求に活用すべきであること。ただしそのためには人々の想像力と創造力を用いて、価値を創造することが必要であると提言書は言います。
 
ちょっと分かりにくいですね。
具体例を挙げましょう。
 
例えば、Society5.0時代の物流では、以下のみっつがポイントとして挙げられています。
 

  1. サプライチェーン全体の情報の共有・最適化
  2. 自動走行、ドローン、ロボットが人員を共有
  3. 物流の枠を超えた新たな価値創造

なんとなく分かるような、分からないような…(笑
ちなみに提言書では、『Society5.0時代の**』と称し、エネルギー、ヘルスケア、金融、行政など9つの業界をピックアップし、その未来図を具体例として示しています。
ここに物流が入ったのは、興味深いですね。
 
話を戻しましょう。
なぜ、Society5.0が必要なのか?
その理由のひとつとして挙げられているのは、日本の人口減少です。人工が減少していく日本において、持続的に価値を生み出し続けるためにはどうすればいいのか?
提言書では、「一人ひとりが生み出す価値の増大(生産性の向上)が急務である」としています。
そのために必要なことは、「制約から解放されること」。
 
例えば、効率重視主義ではなく、価値を生み出す社会を実現すること。大量生産・大量消費ではなく、ひとつひとつのニーズに対する課題解決と価値創造にシフトすべきとしています。
 
例えば、個性を抑圧する社会ではなく、多様性を認める社会、活かせる社会を実現すること。平均化された生き方ではなく、多様な人々が多様な才能を発揮し、多様な価値を追求できる社会へとシフトすべきとしています。
 
そのためには企業も変わらなければなりません。
そのキーワードが、「AI-Ready」と「多様性」です。従来型の業務プロセスやシステムを改革し、AIを活用しやすくすべきというのが、「AI-Ready」。創造的価値観を創出するために、多様性の尊重と積極活用を推進すべきというのが、「多様性」です。
 
具体例として挙げられたのが、終身雇用や年功序列などです。こんな旧時代の制度は捨てて、多様な人材、多様な働き方を認めなさいよ!、と提言書は言っています。
 
 
以下、私見です。
提言書を通して透けてくるのは、個のレベルアップです。企業や行政、社会はチャンスを与えるけれども、創造的で価値ある仕事ができるようになるかどうかは個人の努力や才覚次第であるという厳しいキャリア形成論が、提言書の根底を流れているように感じました。
Society5.0という価値観は、日本社会に対する危機感を煽りつつ、想像と創造というキーワードで国民一人ひとりのレベルアップを要求している点で、私はとても興味深いと思います。
 
本記事で紹介した部分は、Society5.0のごく一部でしかありません。
ぜひご自身で提言書に目を通していただき、自分だったらどのようにSociety5.0という新たな社会に向き合うのか、考えてみることをご提案いたします。


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