秋元通信

「事務作業ロボット」が活躍する時代が来た!?  / RPAとはなんだ?

  • 2019.2.28

20年ほど前のことです。
当時、私は量販店に対し携帯電話を卸す、商社部門に異動しました。異動した初日、挨拶回りを行い帰社した自分に、上司が申し訳なさそうに言ってきました。
 

「あのさ…、とりあえず新人が担当することになっているから、集計作業お願いできるかな?」

 
聞けば、携帯キャリア別、機種別、量販店別、店舗別の売上台数集計と、そのクロス集計を行って欲しいとのこと。量販店数は30社強、店舗総数は300を超えており、手作業で集計すると2時間はかかります。
 
中途半端に歳を食った新人に、上司も言いにくかったんでしょうね。
しかも、この作業は毎日行って欲しいとのこと。毎日集計に2時間かかるなんて、とてもじゃないですがやってられません。
 
これが、私がExcelVBAを独学し始めたきっかけです。
ちなみに、手作業だと2時間かかる作業も、ExcelVBAだと5分弱で終了するようになりました。
 
 
「この作業をプログラムがやってくれれば楽なのに…」と思ったこと、読者の皆さまも感じたことがあるのではないでしょうか?
しかし、ExcelVBAのように、専門的なプログラミングを学ぶことには尻込みする方も多いことでしょう。
 
今、そういった不安を持つ方でも、業務を簡単に自動化できるRPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)が注目を集めています。今回は、RPAについて、その入口を解説しながら、私どもの多くが直面している働き方の課題について考えていきましょう。
 
 
『日本人は優秀である』
多くの方が、このように思っているのではないでしょうか。
確かに、第二次世界大戦の敗戦国である日本が戦後遂げた急成長は、欧米諸外国を驚かせました。
インスタントラーメン、乾電池、青色ダイオードといった発明は世界中に浸透しましたし、ドラえもんやドラゴンボールといったアニメは、世界中の子供達の人気を集めています。
 
しかし…
こと、働き方における生産効率の面では、日本人は大きく諸外国に劣っています。
 
先進国の中で、日本の時間あたり生産性は20位。ひとりあたりの労働生産性は21位です。
ひとりあたりの労働生産性については、アメリカの2/3にとどまり、G7の中では最下位に甘んじています。しかも、これは最近のことではなく、1970年以降日本はずっと20位前後をうろうろとしているのです。
 

『労働生産性の国際比較 2017年度版』(公益財団法人日本生産性本部)より
※クリックで拡大します。
 

 
なぜ、日本人は労働生産性が低いのでしょうか?
いろいろと原因は考えられますが、筆者が思うのは、日本人って人に気を使いすぎじゃないでしょうか?
 
例えばファックス。
正直に言えば、ファックスってもういらないと思いませんか?
ファックスで送信するために、パソコンで作成した書類をいちいちプリントアウトする手間。
ファックスで受信してしまったがために、わざわざシステムに手入力しなければならない手間。
一部のファックス大好き人たちのために、関連する多くの関係者がファックスの呪縛から逃れられずにいます。
 
私ども物流業で言えば、時間指定というのも「気を使いすぎ」の一例かもしれません。
配車マンにとっては悩ましい時間指定も、時間指定をする方(配送先)からすると、「この時間だと都合が良いから」という比較的軽い気持ちで指定しているケースがあるでしょう。
 
締め切り時間を過ぎた発注に、「困るんだよな…」と思いつつも対応してしまうのも、いかにも日本人的な対応でしょう。
 
 
こういった「気を使いすぎ」事例は、決して悪いことではありません。少なくとも、こういった心持ち、相手を思いやって「ちょっと手をかけてあげよう」と思うおもてなしの気持ちは、日本人が誇るべき、細やかなメンタリティと言えます。
 
日本人の労働生産性の低さは、こういった例外処理を業務に取り込みがちなこと、「もう少し**してあげたい」「**すれば、お客様は喜んでくれる」といった「塵も積もれば山となる」業務に一因があるものと考えられます。
 
 
話が変わります。
昨年冬の決算説明会において、ソフトバンクグループの孫正義氏は、通信事業に関わる約6800人を新規事業に配置転換することを発表しました。現時点での従業員数が約17,000人ということですから、なんと4割に相当する人数です。
この配置転換を実現するために、孫氏が挙げたのが、RPAとAI(人工知能)です。このふたつを用いて業務効率を上げることで、既存事業である通信事業から新規事業へと人員をシフトすると発表しました。
 
RPAとAIは、オフィスワークの現場、働き方を変えるものとして、日本のみならず世界的に注目と期待を集めています。
RPAがどのように役立つのかは、ソフトバンクの活用事例を見るのが分かりやすいです。
 
『RPAによるソフトバンク流「働き方改革」』を見る。
 
ソフトバンクでは、43部門で約2000のRPAロボット(デジタルレイバー)が活躍しているそうです。詳しくはリンク先をご覧いただきたいのですが、業務システム間のコピペ作業が月約100時間から0時間に削減、システム入力作業が月約760時間から約69時間へ削減など、華々しい成果が掲載されています。
 
ただし、内容をよく見ていただくと、ものすごく難しい業務をさせているわけではないことが分かります。コピペや再入力など、事務処理業務にありがたいな反復単純作業が多く見受けられます。
そう、RPAとはこういった「塵も積もれば山となる」業務を得意としているツールなのです。
 
RPAは、工場で言うところの産業用ロボットの役目を、オフィスで行うツールです。産業用ロボットと違い、リアルなボディがあるわけではありません。PCの中で活動するロボットだと考えれば分かりやすいでしょう。
産業用ロボットも、複雑なことができるわけではありません。溶接を行うロボット、仕分けをするロボットなど、分業化されたプロセスのごく一部を行うのが産業用ロボットであり、例えば自動車工場などでは複数の産業用ロボットが、人間と分業をしながら働くことで一台の自動車を作り上げていきます。
 
RPAも同様です。
お客様から受領した発注データのcsvを、Excelに転記する。
Excelから基幹システムへデータを取り込む。
基幹システムから伝票をプリントアウトする。
こういった業務を行う、それぞれの「デジタルレイバー」を用意する必要があります。「レイバー」とは労働者のこと。「デジタルレイバー」とはロボットを格好良く言い換えた言葉と捉えると分かりやすいでしょう。RPAとはツール全体の呼称であり、デジタルレイバーとは、RPAによって生み出された作業ユニットを指します。
分業された作業ごとに、デジタルレイバーをあてがう必要があるわけです。
 
デジタルレイバーの特徴を挙げましょう。

  • 人が作業するよりも、はるかに早くて正確。
  • 24時間働くことができる。
  • 基本的には単純作業しかできない(意外とお馬鹿さん)。
  • ExcelVBAなど違い、複数のアプリケーションを横断して作業できる。
  • 完全自動化を目指すことはできない。人と分業するのが基本。

 
誤解を恐れずに言ってしまえば、人が行う単純なPC作業を、そのまま記録して再現するのがRPAの特徴です。
また、その作業がふたつ、みっつと複数あれば、その数だけデジタルレイバーを原則用意する必要があります。
さらに、自律的な判断はRPAにはできません。それができるのはAIです。
 
言ってしまえば、RPAとは、作業が早くてすごく正確だけれども、自分で考えることができない、マニュアルがないと何もできない新入社員のような存在をイメージすると近いでしょう。
 
ただし。
RPAは単純作業をとても得意としていますから、先に挙げたような「気を使いすぎ業務」の「塵も積もれば山となる」を任せるにはうってつけなわけです。
 
 
労働生産性を上げるために、業務改善を行うのは正しいです。
しかし、業務改善には時間と痛みが伴いますし、不要不急、重要度が低いと考えられる業務は切り捨てる必要があります。
ところが、この切り捨て業務の取捨選択が難しいです。特に中小零細企業ほど、お客様に対する「気を使いすぎ業務」が多く、業務の切り捨てが難しい現実があります。
大企業に比べ、中小零細企業の業務改善が難しい理由のひとつですね。しかし、RPAは「気を使いすぎ業務」の多く(※全部とは言えませんが)をそのまま自動化します。
極論ですが、業務改善をしなくとも労働生産性の向上を実現できる、それがRPAの迫力なのです。
 
今後、生産性向上を目指す企業にとって、RPAはより大切な選択肢になっていくでしょう。
今はまだ、価格や機能がこなれていない感じもあるRPAですが、事務所でロボットが活躍する時代は、すでに始まっています。
すぐそこに迫っている未来に備え、ぜひRPAに関心を持ってくださいね。
 
 
 

参考/出典

 
『労働生産性の国際比較 2017年度版』(公益財団法人日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2017.pdf
 
 
『通信事業の人員を4割削減へ ソフトバンクの「成長戦略」』 (ITmedia)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1811/05/news138.html
 
 
 


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