秋元通信

働き方改革に求められること 【第7回あきもと情報交流会レポート】

  • 2019.9.30

2019年9月4日、第7回目となるあきもと情報交流会を開催いたしました。
今回のテーマは、「有給をススメる方法」。
 
今春施行された働き方改革関連法を解説しつつ、働き方改革の課題について考えています。
本記事では、そのさわりをご紹介しましょう。

※画像はすべてクリックで拡大します。
 
 


 
NTTコム リサーチとNTTデータ経営研究所が、今春行った働き方改革に関するアンケート調査では、興味深い結果が出ています。
 
「働き方改革を行っている」と答えた方は、約半分でした。
従業員1000名以上の会社では、約7割が「取り組んでいる」と答えていますが、企業規模が小さくなるほど取り組み率は下がり、従業員100名以下の会社では約3割まで低下します。
 
実際に働き方改革に取り組んでいる方に聞いた、働き方改革の影響が興味深いです。
「有給がとりやすくなった」(37%)、「労働時間が減った」(30%)、「プライベートと仕事の両立ができるようになった」(12%)といったポジティブな感想の反面、「昇進意欲が下がった」(7%)、「部下へのマネジメントがしにくくなった」(8%)、「勤続意向が低下した」(7%)といったネガティブな意見もあります。
 
特に注視すべきなのは、4人にひとりが「収入が減った」(25%)と答えていることです。
 
これは仮定ではありますが、働き方改革を行っている企業の一部において、残業時間を削減することが、収入減少に直結し、結果として労働意欲の低下や転職へのきっかけなるという、負のスパイラルが発生している可能性が推測されます。
 

「働き方改革を行うことで、離職者が増える」

 
こんな馬鹿馬鹿しいことはありませんが、しかし、これも働き方改革の現実ではないでしょうか。
 
筆者は、この原因のひとつに、働き方改革の正しい目的や導入方法が理解されていないことにあると考えています。
 
 


 
働き方改革について、あらためて確認しておきましょう。
 
 
厚生労働省が運営している、「働き方改革特設サイト」には、以下のキャッチコピーが記載されています。
 

『働き方のチェンジは業績UPのチャンスですよ!』

 
「業績UP」とは、売上を上げ、利益を獲得することです。
少なくとも、コスト削減だけでは、本当の業績UPにはつながりません。
私は思うのですが、働き方改革=残業減少と勘違いしている人(会社)も多いのではないでしょうか?
残業削減は、たしかに働き方改革における大切な要素のひとつです。
しかし、残業削減は、いわば働き方改革におけるアクションプランであり、「なぜ働き方改革を行うのか?」という目的が抜け落ちてしまっては、大きな失敗をしてしまうことになりかねません。
 
 
情報交流会の中では、以下のようにお話ししました。
 

  • 「残業時間を削減する」だけでは、会社が衰退する。
  • 働き方改革=「社員に楽をさせるため」ではない。
  • 「もっと働け!」から「賢く働こうよ ^_^ 」こそが、働き方改革のツボ。

厚生労働省Webサイトに記載されている、「『働き方改革』の目指すもの」を確認しておきましょう。
 
「我が国は、『少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少』『育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化』などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
 
『働き方改革』は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています」
 
この文章そのものが、とても分かりにくいです。
だから、働き方改革が誤解・曲解されてしまうんじゃないかとも思うのですが。
 
お叱りを恐れずに、大胆にまとめてしまうと、こんな働き方改革って、こういうことじゃないでしょうか。
 

「介護や育児など、さまざま事情があっても、働くことができる環境を創り上げていかないと、少子高齢化が進み、労働人口が減っていく日本の将来は暗いですよ。
『未来は明るいぞ!』と思えるような、夢と希望を抱くことができる日本にしていきましょうよ!!」

 
普通に考えて、残業時間をただ削減したら、企業の生産性は下がってしまいます。
「残業減らしても、生産性は落とすなよ!」と会社に言われたら、社員はモチベーションが下がり、ストレスを溜めてしまいます。これでは、日本の明るい未来なんて、ありえないです。
 
つまり、生産性を落とさずに労働時間を削減し、なおかつ社員の収入も下げない。もちろん、企業も、より儲かるようになる仕組みを考える必要があるわけです。
これを実現しなければ、働き方改革は成功しないではないでしょうか。
 
社員の残業時間を減らし、働き方改革を体の良いコスト削減の道具にしてしまう企業は、先に挙げた「働き方改革を行うことで、離職者が増える」という負のスパイラルに陥ります。
 
当たり前ですよね。
企業だけが儲け、社員に痛み(残業代削減による収入減少)を与えるようでは、フェアではありませんから。
 
働き方改革を実現するためには、こんなことを考え、実践する必要があるのではないでしょうか。
 

  • 全社員が、「あなたの会社の働き方改革」に対する理念を理解、共感できること。
  • 労働生産性を向上させる具体的な武器であり、アクションプランが提供されること。
  • 社員がスキル向上を目指すモチベーションとなるインセンティブとビジョンを用意すること。

言うは易く行うは難し。
 
でも、今春施行された働き方改革関連法によって、残業時間の上限記載、有給の5日間確実な取得など、働き方改革実現に向けた包囲網は、確実に狭まりつつあります。
 
ここで対応ができない企業に、もはや未来はないのかもしれません。
 
 
 

情報交流会の様子

 
※画像はすべてクリックで拡大します。また、拡大後は、キーボードの矢印キー(←/→)で、画像を遷移することが可能です。
 
 


 
 

出典

 
「働き方改革」の実現に向けて (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
 
働き方改革2019 (NTTコムリサーチ / NTTコム リサーチ と NTTデータ経営研究所 による共同企画調査)
https://research.nttcoms.com/database/data/002134/


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