秋元通信

【当社常務:鈴木清が語る】「まごころ便」が拓く、小口輸送の可能性

  • 2019.11.19

秋元運輸倉庫では、「まごころ便」という運送サービスを提供しています。
当社常務:鈴木清が、「まごころ便」を介して診た、小口貨物輸送の現状と課題を考えます。

 
 

「まごころ便」とは

 
「まごころ便」は、特積貨物の品質向上のため、2010年より開始しました。
現在では月間400~500t を輸送するサービスに成長しています。
 
「まごころ便」は、いわゆる路線便に代わるものとして、当社倉庫を発地とし、関東圏へ輸送される特積荷物を、自前の輸送網で運ぶことを目的としてスタートしました。
現在、関東圏に関しては、フルサイズの大型車:8台、増トンタイプの8トン車:4台、4トン車:2台、その他3トン車等:7台の、合わせて21台が稼働、毎日関東一円に配送しています。うち、まごころ便専用車は4台です。その他の車両は、「隙間を埋める」と言っては語弊がありますが、「まごころ便」を適時積み合わせることで、空車率を下げ、積載率をアップする、つまりは生産性向上のために活用しています。
 
積載効率の向上は、運送ビジネスでは大きなKPI(key performance indicator)となります。そのため、当社では、今年1月から自動配車システムの導入テストを繰り返し、6月から稼働を開始しています。
 
「まごころ便」の特徴のひとつは、積み替え回数が最小限に抑えられること。
積み替え回数が多いと、結果、貨物破損の原因にもなります。これは、中継などの都合で、どうしても積み替え回数が増えてしまう路線便との差別化につながると考えています。また今後は、嵩物や長尺荷物も検討していきます。
 
当社倉庫、すなわち東京都港区芝浦、江東区有明という立地の良さも活かし、協力会社の皆様から見て、アクセスが良いことも魅力のひとつだと自負しています。
現在、地元企業とのコラボのもと、神奈川方面の中継サテライトをテスト運用しており、今後、埼玉、千葉方面でも展開を検討しています。
 
 

開発進む、新規物流倉庫の落とし穴

 
これからも物流倉庫の開発は、止まることはないでしょう。
関東の内陸部では、圏央道の開通に伴い、特にインターチェンジ近辺において、次々と新しい物流倉庫の開発が進んでいます。10万坪を超える、いわゆるメガ倉庫が多く、物流倉庫の開発規模は巨大化しています。
 
このような大型供給の中で、当社のような中小企業の物流会社でも手が届く賃料で借りることができる物件も増えてきました。
私はここに大きなビジネスチャンスがあると感じています。そして脅威も感じています。
 
物流倉庫の価値付けは、大きく変わろうとしています。
10年前なら、大型物件であればすぐ決まりました。
しかし、今は違います。
 
人手不足、物流と流通の一体化、通販業界の拡大、ドライバー不足等々といった、物流危機が、物流倉庫の価値付けを変えてしまいました。
 
ごく一部の大手特積会社、大手宅配会社は別です。
彼らは、開発された物流倉庫や、自社開発された倉庫など、立地にとらわれることなく、営業展開が出来ます。
 
しかし、私たちはどうか?
新たに物流拠点を設けるときに、気にすべきことは?
 
第一に思案すべきは、人です。
その立地に、倉庫作業員を始めとする人が集まるのかどうか? 集まったとしても、その人件費に競争力がなければ、戦うのは難しいでしょう。
 
そして、最大の課題は、デリバリーです。
その立地から、全国配送ができるのかどうかです。
 
しつこいようですが、大手特積会社、大手宅配会社は別です。
彼らは、自前で全国の物流網を持っているため、集荷集配の心配はありません。
 
しかし、私ども中小の物流企業は違います。
 
「新たに倉庫は構えたけれども、集荷は来てもらえるのだろうか?」
「競争力のある、適正な運賃で運んでもらえるのだろうか?」
 
こういった心配は、もはや現実のもの…と言うか、最悪のシナリオが、現実のものとなりつつあります。
 
倉庫を新たに構えれば、運賃体系も新規扱いになり、これまでのお付き合いを無視した(された)一見さんと同じ運賃設定になります。
もっと最悪なのは、集荷をしてくれないケースです。
いずれにせよ、輸送コストは上がり、採算悪化に直結します。
 
つまるところ、倉庫の価値付けは、足(クルマ)と手(人)が集まるかどうかに掛かっているのです。
 
繰り返しますが、大手は別ですよ。
しかし、当社のような中小の物流会社では、これは死活問題です。
 
 

『物流はなくならないが、物流業はなくなる?』

 
流通と物流を一元化したアマゾンは、世界最大の物流会社と言えます。
このように、荷主が物流倉庫を構え、自社物流で展開するケースが増えています。荷主企業は、商品拡販をネット通販に求め、そして自社でその仕組を構築する流れが、主流になってきています。
通販によって、お客様と自社との距離を縮め、お客様の手元へと届く最後の輸送行程、つまり「ラストワンマイル」を差別化をすることで、競合他社との差別化を目指しています。
荷主においては、自社物流でのスピードアップが、すなわちサービス向上の最大の武器となりつつあるのです。
 
そうなると、商社、卸、店舗販売は、死に体となります。
私ども、中小の運送業界は、そんなマーケットで生き残ることができるのでしょうか?
 
運送業界のドライバー不足に、通販の急激な拡大が拍車をかけた結果、輸送量は毎年1割強のアップを続けています。
運賃は天井知らずに上昇を続け、集荷拒否は、ますます悪化することでしょう。
 
 

表面化する路線便の限界

 
当社も含め、重宝に活用してきた路線便ですが、ここ最近では、その限界というか、無理が次々と表面化しています。
 

  • 同業者から再寄託で仕事依頼があったが、再寄託先での特積料金か大幅に合わなく断念。
  • 既存荷主から倉庫の増床の依頼を受け、別の倉庫の移転を提案。しかし、移転先での集荷が出来ずに断念。
  • 関西からの長尺貨物で集荷拒否。
  • 関東のある工場では、路線便が長尺物であることを理由に集荷を拒否し、製品が出荷できない事態に。
  • 川崎で嵩物(空フレコン)荷物の料金倍に。
  • 千葉県袖ケ浦市で袋物荷物、500kg以上は料金倍!1トンはチャーター料金で料金値上げ。
  • 大型連休前の集荷制限や集荷拒否。

 
私が今年耳にした情報の一部です。
 
手前味噌ではありますが、「運べない」「運んでくれない」というマーケットからの悲鳴を救う一助に、路線便以上チャーター未満としての、「まごころ便」の存在感が求められてきているのかと考えています。
 
先の情報のいくつかでは、「まごころ便」が解決策となり、当社の成約につながった例もありました。
 
ただし、中小企業である当社が進める「まごころ便」には、限界もあります。
当初、自社で共同輸送ネットワークを構築するつもりでしたが、当社が推進可能な構築スピードでは、マーケットの要望には応えられないことを痛感しています。
今後、小口の特積み会社、宅配会社頼みでは限界があります。
新たな輸送方法の開拓は必須です。
私たち倉庫事業者は、荷主に打開策を提案され、気づいたときには貨物を引かれてしまった…などという、目も当てられない事態が起こることもあるでしょう。
物流企業の中でも負け組、勝ち組の明暗がはっきりすることは明白です。
 
以前の秋元通信では、ラストワンマイル協同組合さんをご紹介しました。
 

「鈴木清が聞く、『ラストワンマイル協同組合という可能性』」
https://amlogs.co.jp/?p=6253

 
ラストワンマイル協同組合というビジネスモデルが、いかに迫力を持ったものなのか?
物流企業の勝ち組vs負け組という構図を透かして、ラストワンマイル協同組合を診れば、その価値は自ずと分かってくることでしょう。
 
 

「まごころ便」が拓く、小口輸送の可能性

 
物流は、社会のインフラであると言われます。
しかし今、物流側が「運べない」、もしくは「運ばない」と言うことで、社会に影響が出始めています。
 
私ども、中小の物流企業はどうすればよいのでしょうか?
当然ながら、無い袖は振れません。
しかし、私どもなりに、やはり努力することは必要なのではないでしょうか。
 
路線便に代わるような、小口輸送サービスを、商売として成立させつつ、お客様にも喜んでもらえるようにするためにはどうしたら良いのか?
 
「まごころ便」は、秋元運輸倉庫という中小企業が、頭を絞って少しづつ進化をさせてきた小口輸送サービスです。
 
ご興味を持たれた荷主企業、物流企業の皆さま、お気軽にお声がけいただければ幸いです。
 
 


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