秋元通信

予測不可能な現代を表すキーワード「VUCA」とは

  • 2020.4.14

VUCA_アイキャッチ画像
 
VUCA(ブーカと読みます)という言葉をご存知でしょうか。
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったビジネス用語です。
VUCAとは、経済や政治など、ありとあらゆるものが刻一刻と変化し(Volatility)、複雑なカオスと化している(Complexity)今の時代において、これまでの事例や知見が参考にならないような想定外の事象(Uncertainty)が次々と発生していることから、将来が予測困難な状態(Ambiguity)にあることを意味する言葉です。
 
 
 

VUCAが示す現代

 
皆さん、一年前を思い出してください。
 
まさか、東京オリンピックが延期されるなんてこと、想像できましたか?
まさか、新しいウイルスが世界中で猛威をふるい、その結果として経済が大きな打撃を受け、私どもの日常が一変するような事態に陥っているなんてことは、誰も想像していなかったことでしょう。
 
これこそが、まさにUncertainty(不確実性)です。
「まさかこんなことが!?」と思うようなことが起こってしまうのが、現代なのです。
 
 
残念ながら、新型コロナウイルスがいつ収束するのかは、誰にも分かりません。
来年には完成するという、ワクチンが本当に有効なものであれば良いのですが…
新型コロナウイルスは最たる例でしょうが、現代には、Ambiguity(曖昧性)なものが溢れています。
 
Ambiguity(曖昧性)とは、未来予測に限ったものではありません。
例えば、今後の自動車産業も、Ambiguity(曖昧性)の例として挙げられます。
 
今後の自動車開発には、大きくふたつの軸があります。
自動運転と、脱化石燃料です。
自動運転では、GoogleやUberといったIT企業が存在感を発揮しています。
一方、欧州を中心に、2025年~2040年にかけて、ガソリン・ディーゼル自動車の販売中止を表明している国があらわれています。化石燃料を利用するエンジンに代わる筆頭は、EV、すなわちモーターです。つまり、モーターや蓄電池の技術を持った電気系メーカーが、今後の自動車産業の担い手になる可能性があるのです。
 
自動車産業の主役に、IT企業や電気系メーカーが名乗りを挙げるとは…
 
このように、産業の垣根があいまいになりつつあることも、Ambiguity(曖昧性)のあらわれと考えられます。
 
 
Volatility(変動性)とComplexity(複雑性)の例として挙げられるのは、例えばGAFA(ガーファ)でしょう。
 
GAFAとは、世界的な巨大企業であり、マーケットにおいて、支配的かつ独占的なチカラを持つ、Google、Amazon、Facebook、Appleの4社を指します。
 
考えてみてください。
検索エンジンの会社が、世界にこれだけの影響力を持つと想像できましたか?
SNSが、これだけ人々を魅了し、私どもの生活に浸透するなんて、20年前には誰も考えなかったでしょう。
 
社会、経済の価値観であり、常識であり、潮流は、あまりにも早く変わるようになってしまいました。これが、Volatility(変動性)です。
GAFAは巨大で支配的であるがゆえに、その動きを国家単位で規制するのも難しくなってきています。税金の課題、個人情報の課題、マーケットに対する巨大で支配的すぎる影響力など、GAFAの課題は、国家の枠を超えています。しかし、利害関係者が多すぎるがゆえに、対応はカンタンではありません。これも、Complexity(複雑性)の一例です。
 
 
なんだか、面倒くさい話ですね…
でも、これこそがVUCAの時代に生きる私どもの課題なのです。
 
 
 
◇ VUCAは朝令暮改を求めるものではない
 
朝令暮改という言葉があります。
 

〔「漢書食貨志上」より。朝出された命令が夕方には改められる意〕
法令などがすぐに変更されて一定せず、あてにならぬこと。朝改暮変。
出典:大辞林

 
一般的に、朝令暮改は、あまりいい意味では使われません。
余談ですが、かつて私が勤めていた会社の社長は、朝令暮改という言葉を知らず…。
どこで聞きかじってきたのか、「朝令暮改って、経営のスピード感を示す、カッコイ言葉だな!」と勘違いし、あちこちで吹聴して失笑を買ったことがありました。
あれは恥ずかしかったですね…
 
 
VUCAの話をすると、少なからず、朝令暮改的な発想をする人がいます。
 

「要は、臨機応変が必要だってことだろ? 即断即決しなきゃダメっていう…」

 
もしくは、企業として求められるビジョンや経営戦略を否定する人もいます。
将来が予測困難なものであれば、ビジョンや経営戦略を立てても無駄だと考えてしまうわけです。
 
 
VUCAの時代に求められる人材であり組織には、想定外の事態にも耐えうる素養が求められます。
想定外のことに直面しても、慌てず動じず、将来を切り開く行動を選択できる人材であり、組織が求められるのです。
 
しかし、あなたの会社の従業員たちが、各々自分の考えで、てんでバラバラな方向に進み始めたらどうなりますか?
もしかしたら、一個人、一部門に限っては、良い結果が出るかもしれません。
しかし、企業という、人と組織の集合体を考えると、良い結果が出るわけがありません。なにしろ、皆さん、進む方向がバラバラなわけですから。
「船頭多くして船山に上る」というやつですね。
 
組織が同じ方向に向かうためには、状況判断のベースとなる基礎的な考え方、もしくは方向性が必要です。
これが、ビジョンであり経営戦略なのです。
 
 
経営ビジョンや経営理念、経営戦略は、企業にとっては背骨のようなものです。
背骨があるから、人は直立し歩くことができます。逆に言えば、背骨がなければ、きちんと歩くことは難しくなってしまいます。
 
VUCAと表現される、混沌とした現代だからこそ、企業は、企業が目指すべき方向を、きちんと従業員に示すことが大切になってきます。
従業員が企業のビジョンや経営戦略をきちんと理解していれば、各々が自律的に判断を下しても、企業の方向性が大きくブレることはありません。
 
 
まあ、言うは易く行うは難しの典型でもありますけど、これは…
 
本来、企業がビジョンを示す、経営戦略を立てるというのは基本中の基本なのですが。
 
新型コロナウイルス問題に限らず、現代は、これまでになく、困難な時代です。
困難な時代だからこそ、基本を忠実に行うことが大切なのです。
 
 
 

参考・出典

 


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