秋元通信

痩せる仕組み

  • 2020.7.17


 
 
4月に「今だから考えたい、筋トレが必要な理由」という記事を配信、運動することの大切さをご紹介しましたが、(書いた自分が言うのもなんですが)意外と、この記事のアクセスが良いんですよね。
 
やはり皆さま、健康に対する関心が高いのですね。
 
ということで、今回はそのものずばり「痩せる仕組み」を考えましょう。
 
 

「痩せる」とは?

 
「痩せる=体重が落ちる」だけに着目するのは、無意味なだけでなく、危険です。
 
例えば、無理な食事制限は骨密度を落とし、骨粗鬆症などの原因になることが知られています。
 
話題の糖質制限ダイエットは、確かにダイエット効果があるようですが、一方でめまいや倦怠感、頭がよく回らないなどの副作用的デメリットを感じる人もいます。
私は趣味で自転車を楽しんでいますが、糖質制限と長時間運動し続けるサイクリングは相性が悪いらしく、以前は健脚でサイクリングを楽しんでいた人が、糖質制限ダイエットを行い始めると、仲間の走るペースについていけなくなるケースを何度も見ています。
 
考えてみれば当たり前で、体を動かすエネルギーとなる糖質を制限するので、身体パフォーマンスが十分に発揮できなくなるわけです。
 
 
「痩せる(ダイエットをする)」とは、健康な身体を維持、もしくは今以上に健康になりながら、余分な体脂肪を落とすことだと考えましょう。
 
人間は、生きているだけでカロリーを消費します。これが基礎代謝です。
例えば筆者の場合、基礎代謝は、1700kcal強となります。
 
食べること、飲むことによって摂取される摂取カロリーを、「基礎代謝+活動代謝」以下に抑えれば、体重は減っていきます。ここが難しいところですね。
 
人間の身体は、空腹状態が続くと、筋肉を分解し、エネルギーとして使い始めてしまいます。つまり、摂取カロリーを抑えようと、食事制限などを過剰にしてしまうと、健康な身体を維持している筋肉を減らしてしまうわけです。
 
私は以前、筋トレ本の執筆を行いましたが、監修を務めたボディビルダーは、「お腹が空くと筋肉が痩せちゃう」と言いながら、トレーニングメニューの撮影中、差し入れのお菓子を頻繁に食べていました。一度に食べる量は一口程度ですが、「そんなに頻繁に食べるんだ!?」と驚きました。
 
 
一方、活動代謝を上げることで、カロリーを多く消費し、脂肪を燃焼させようとするダイエット方法も、皆さま、ご存知でしょう。
 
 
 

脂肪が燃焼する仕組み

 
人が生きていくためには、体内にてエネルギーを生成し続ける必要があります。エネルギーの生成方法には、有酸素性エネルギー代謝と無酸素性エネルギー代謝のふたつがあります。
 
食事をすると、食べ物から摂取された糖質は、ブドウ糖に分解されます。ブドウ糖は、血糖として血液中に存在しますが、血液中のブドウ糖が増えすぎると、中性脂肪に姿を変えて体内に蓄えられます。
 
無酸素性エネルギー代謝ではブドウ糖が、有酸素性エネルギー代謝では脂肪が主なエネルギーとして消費されます。
ダイエットを考えた時、運動強度とエネルギー源の関係は、とても興味深いところです。
というのも、運動強度が上がるほど、エネルギー源としてはブドウ糖が多く消費されますが、脂肪に関しては、適正な強度があるからです。
 
VO2MAXという指標があります。最大酸素摂取量と訳され、1分間あたりで、人が体内に取り込み可能な酸素の最大量を指す指標です。
研究によれば、全身の脂肪酸のエネルギー分解は、65%VO2MAXで最大、20%と85%では低くなるという結果が出ました。
 
ちなみに、トレーニングを続けると、運動時のエネルギー源に占める脂肪の割合が大きくなります。体内での貯蔵量が限られたブドウ糖の消費量が少なく、貯蔵量の多い脂肪をエネルギーとして使いやすくなるため、これがいわゆる「スタミナがつく」という状態となります。
トレーニング習慣を身につけると、痩せやすい身体を手に入れられるというのは、こういう理屈なのです。
 
 
 

では、ダイエット=高強度の運動はNGなのか?

 
「高強度の運動は、脂肪の燃焼効率が低いため、ダイエットには向かない」という説があります。
また同様の理由で、高強度で無酸素運動、例えば100mダッシュを繰り返し行うようなトレーニングは、ダイエットには向かないという説もあります。
 
確かに、運動中の脂肪燃焼効率を考えると、これは正解なのですが。
しかし、最近では、この説は否定されています。
 
というのも、脂肪燃焼は、運動中だけに発生するものではなく、運動終了後も継続するものだからです。
高強度運動を行った場合、運動終了後も脂肪燃焼が長く継続します。つまり、高強度運動が、脂肪燃焼には不利であり、ダイエットには向かないというのは、古い考え方なのです。
 
確かに、ゆっくりとした散歩(時速3km強)などは、脂肪燃焼の効率は良いかもしれません。ただ、その運動効率は、時速8kmでのジョギングの1/4、サッカーの1/5程度しかありません。
つまり、強度の関係は、以下のようになります。
 
サッカー1試合:90分
=ジョギング:約110分
=ウォーキング:7時間30分
 
7時間以上もウォーキングをしていたら、生活に支障をきたします。
したがって、ダイエットのためには、自分に適した強度の運動を、日常生活の中で可能な時間内で行うことが大切なのです。
 
 
 

運動強度を測る上で知っておきたい「メッツ」とは

 
厚生労働省では、運動強度を測る指標として、「メッツ」を提案しています。
メッツとは、安静時を「1」として(基準として)、ある運動(もしくは活動)の強度を示したものです。
メッツに、実際に活動した時間を掛け算すると、その日の活動量が算出できます。
 
これ、とても分かりやすいです。
 

  • 3~3.5メッツ
    歩く、軽い筋トレをする、掃除機をかける、洗車する、子供と遊ぶ(中強度)

 

  • 4~4.3メッツ
    やや速歩、ゴルフ(ラウンド)、通勤で自転車に乗る、階段をゆっくり上る

 

  • 6メッツ
    ゆっくりとしたジョギング

 

  • 8メッツ
    時速8kmでのランニング、クロールで泳ぐ、サーキットトレーニング、バスケットの試合

 

  • 10メッツ
    自転車で時速25~30kmで走る(ドラフティングなし)、ハイインパクトなエアロビクス

 
ちなみに、さまざまな活動におけるメッツの一覧表は、こちらにまとまっています。
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/programs/pdf/mets_n.pdf
 
表中には、「メープルシロップ作り(バケツや木材の運搬を含む):5メッツ」などもあります。この表、見ていると意外と楽しいです。
 
 
 

健康的な生活を送るためには

 
運動だけを行い(活動代謝を増やし)、脂肪を減少させるためには、最低、週あたり10メッツ以上の有酸素運動を行わなければなりません。
ちなみに、運動の方法は、ウォーキングでも、エアロバイクでも、ジョギングでも、運動種目による有意差はないとされています。
 
したがって、自分が運動に割くことができる時間を考え、週に3時間以上割けるのであれば、ウォーキング。2時間程度しか捻出できないのであれば、ジョギングなどと考えると良いでしょう。
 
最近、HIIT(高強度インターバルトレーニング)が注目を集めていますが、これは一回10分程度の運動で、多くのカロリーを消費できるため、忙しい方でも効率よくダイエットすることが可能です。
 
 
最後に、厚生労働省が「健康づくりのための身体活動基準2013」において提言している、「将来予想される『早世』『生活習慣病等への罹患』『生活機能の低下のリスク』を減少させるために、個人にとって達成することが望ましい身体活動・運動体力の基準」をご紹介しましょう。
 

  • 18-64歳の身体活動(生活活動・運動)の基準
    強度が3メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週行う。
    具体的には歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分以上行う。

 

  • 18-64歳の運動の基準
    強度が3メッツ以上の運動を4メッツ・時/週行う。
    具体的には息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行う。

 

  • 65歳以上の身体活動(生活活動・運動)の基準
    強度を問わず、身体活動を10メッツ・時/週行う。
    具体的には横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行う。

 
例えば、「18-64歳の身体活動」にある、「強度が3メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週行う」って、意外とハードルが高いです。
時速4km以上の早足の活動量は、3メッツ。したがって、歩くだけで求められる活動量を確保しようとすれば、8時間以上、歩かなければなりません。しかも、これはダイエット以前の、健康的な身体を維持するための最低条件ですからね…
 
 
さて、今回の記事は、私自身への戒めも含め(笑、執筆しました。
健康な生活のために、参考になれば幸いです。
 
 
 

正しいダイエットと運動のため(本記事の出典および参考情報)

 
運動とダイエット、もしくは脂肪燃焼や運動効率については、さまざまな主張がありますが、信頼できるものは意外と少ないです。というのも、対照実験もきちんと行い、科学的に検証された主張が少ないからです。「私は**で痩せました」のような、個人の成功体験だけを語るケースが多いです。
 
このあたりの情報をきちんと学びたいのであれば、厚生労働省が提供する「e-ヘルスネット」が信頼できます。情報も豊富なので、とても参考になります。
 
記事中でもご紹介した、「健康づくりのための身体基準2013」は、厚生労働省が示した、健康な身体を維持するための指標です。分かりやすく、よくできた指標です。ぜひ、ご参考にしてください。
 

 
 
本記事においては、e-ヘルスネット内のコンテンツ「エネルギー代謝の仕組み」を参考に、代謝や脂肪燃焼を解説しています。
 
 
 


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