秋元通信

詭弁に惑わされないために 【前編】

  • 2020.11.12


 
 
 
あるお客様との間で、トラブルが発生した時のことです。
トラブルの原因は、お客様が契約していた、あるシステム(以下、システムAとします)の仕様でした。当時、私はそのシステムと接続する、別のWebアプリケーション(以下、アプリケーションBとします)を開発していたのですが、システムAの仕様が原因で、アプリケーションBの開発が、途中頓挫しそうになったのです。
 
確かに、システムAが抱える、問題の仕様に気が付かなかった私も、うかつだったかもしれません。ただ、問題の仕様は、極めてイレギュラーなものであり、そういった仕様の存在を想定するのは困難でした。さらに言えば、私どもにはシステムAの仕様書は開示されず、お客様の「これこれこういう風にプログラミングすれば、システムAとアプリケーションBは接続できるはずだから」という言葉を信じ、開発していました。
 
私どもに非がないとは言えません。
しかし、問題の多くは、システムAの仕様書を開示していただけなかったお客様の判断と、システムAの不可解な設計にありました。
 
問題解決のため、お客様に対し、事の次第を説明していたミーティングの席でのことです。
説明を続ける私に対し、お客様側の役員が、猛烈に怒り始めたのです。
 

「うちの社員だったら、仮にお客様が悪くても、『悪いのはお客様です』なんて絶対に言わないぞ!
それを堂々と主張するなんて、貴様の会社の社員教育は、そもそも間違っているに違いない。
そんな社員教育をしている会社だから、こんな大問題に発展したんだ!!」

 
 
さて、このお客様の主張は、間違っているのでしょうか?
間違っているとしたら、どこがどのように間違っているのでしょうか?
 
こういった、無茶苦茶な理屈で相手を言いくるめようとする人はいます。
これを詭弁と呼びます。
でも、詭弁って、「何かがおかしいのは分かるけど、どこがおかしいのか、うまく説明ができない」ということも、これまたよくあることです。
 
今回は、詭弁を学び、そして詭弁を弄(ろう)する人に対し、対抗する方法を、前後編に分けて考えましょう。
 
 
 

詭弁とは

 

詭弁

  1. 道理に合わないことを強引に正当化しようとする弁論。こじつけ。
  2. <sophism>論理学で、外見・形式をもっともらしく見せかけた虚偽の論法。

出典:デジタル大辞林

 
 
詭弁の例を挙げましょう。
 

ある家が、「ここで犬にウンチをさせないでください」と看板を掲げていたとします。ある日、看板の前で、ウンチをしている犬と、その飼主を見つけました。
 
「そこでウンチをさせないでください」、注意する家主に対し、飼い主は、このように反論しました。
 
「犬に日本語が読めるわけないだろう!」

 
 
これは、双方に詭弁(論理的な破綻)があります。
 
まず、飼い主の側から。
犬に日本語が読めないのは当たり前です。したがって、「ここで犬にウンチをさせないでください」という看板は、飼い主に対して設けられたものであるのは明確です。いわゆる、屁理屈というやつですね。
 
一方で、家主の方にも問題はあります。
「ここで犬にウンチをさせないでください」と看板を掲げたところで、それを飼い主、犬の双方が実現するのは極めて困難です。なぜならば、飼い主から犬に「ここでウンチをしちゃダメだよ」という説得を試みたところで、聞くわけがないからです。
「ここで犬にウンチをさせないでください」ではなく、「ここでウンチをさせたら、きちんと後始末をしてください」という看板だったら、理が通るのですが。
 
詭弁には、いくつかパターンがあります。代表的な例をふたつ挙げましょう。
 
 
 

詭弁のパターン:「燻製ニシンの虚偽」

 
燻製、もしくは塩漬けしたニシンって、すごく臭いそうです。
強い匂いで、弱い匂いを隠そうとする行為から、いかにもそれらしい主張や論法を行うことで、本来の議論をそらしたり、論点をすり替える詭弁を、「燻製ニシンの虚偽」と呼びます。
 

A:「俳優の○○って、演技上手いよね」
B:「でも、○○って、女癖が悪いって評判悪いじゃん」

 
演技と女癖の悪さは、直接関係ありません。
これは、論点のすり替えです。
 

A:「○○君が考えた運送安全キャンペーンのプラン、とても素晴らしいと思うが、どうだろうか?」
B:「でも○○君って、そもそも運転免許持っていないよね。免許がない人が考えたアイデアって、イマイチじゃないかな」

 
これは、論点をすり替えた上で、プランの立案能力とはなんら関係のない、個人攻撃も行っています。
 
 
 

詭弁のパターン「ストローマン話法」

 
ストローマンとは、藁人形のことを指します。
相手の主張を歪めたり、誇張した上で、相手の主張を変え、そして変化した後の主張を攻撃する論法を指します。
相手そのものではなく、相手の偽物を作り上げて攻撃対象とすることから、「相手の偽物」を藁人形になぞらえて、ストローマン話法と呼びます。
 

「あの人は、普段から女性のことをじろじろと眺めています。いつか間違いなく、セクハラに発展することでしょう。だから、あの人は、女性のいない職場に異動させるべきです」

 
普段の行動から、やってもいない罪にエスカレーションすることで、相手を攻撃しています。これはダメです。
 
 

A:「新型コロナウイルスが流行しているんだから、外出時はマスクはきちんとつけなきゃダメですよ」
B:「マスクをしていても、交通事故で死ぬことだってあるだろう。だから、マスクなんて無駄だ!」

 
これは問題のすり替えです。
新型コロナウイルスに罹患しないことと、交通事故に合わないように、注意をはらい、交通ルールを守ることは、まるで別の話です。
 

A:「家庭における子供の情操教育って大切だよ。例えば、犬を飼うとか…」
B:「命の大切さも理解していないのに、犬を飼うなんて、もってのほかだ!」

 
挙げた具体例にかみつき、相手の主張の無効を訴えるケースです。
Aは、情操教育の大切さを議論するために、犬の飼育を例示しただけなのに、犬の飼育を否定することで、BはAの主張そのものを攻撃してきました。
同じようなパターンとして、交渉の場において、譲歩するための代案を提示したら、代案を攻撃された、なんてケースもありえます。
 
 
燻製ニシンの虚偽とストローマン話法は、詭弁の代表的な例ですが、詭弁のパターンはこれだけではありません。詭弁には、無数のパターンがあり、例えば、Wikipediaでは、「詭弁」について、29のパターンが例示されています。これを全部把握し、詭弁に対抗するというのは無理です。
 
では、詭弁に対処するためにはどうすれば良いのでしょうか。
また、そもそも、なぜ詭弁に対する対処方法を学ぶ目的とは、何でしょうか。
 
これは、後編に引き継ぎましょう。
お楽しみに!
 
 
 


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