秋元通信

Web3.0ってどんなもの?、秋元通信流にカンタン解説

  • 2022.11.15

前回、Web2.0について、このように解説しました。
 

Web2.0は、言わば現象です。
当時注目を集めた(もしくは、「これから注目を集めるであろう」と予想された)サービスや技術を総称し、Web2.0と呼んだわけです。

 
Web2.0によって実現したのは、情報が双方向に流通する世界でした。
それまで(=Web1.0)では、Webを介して情報を発信する側、それを受信(閲覧)する側は、比較的明確に分かれていました。それが、Web2.0では、誰もが情報を発信すると同時に、閲覧する側へと転じていったのです。
 
ただし、Web2.0の世界では、情報は誰かのプラットフォームのもとに一元管理されます。
例えば、全世界で29億人以上いるFacebookのユーザーが投稿した内容、閲覧する情報は、すべてFacebookの管理下にあります。
 
Googleも同じです。
例えば、Googleマップは、今や私たちの生活には欠かせないツールとなっていますが、Googleマップの情報(地図情報だけではなく、口コミなども含めて)は、すべてGoogleの管理下にあります。
 
Web2.0の世界では、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)が、巨大な権力を手に入れました。繰り返しますが、これはデータが、特定の企業に一元管理管理される中央集権型ビジネスモデルだからです。
 
Web3.0では、ブロックチェーンという技術を用いることで、Webに集めるデータを、特定の企業の中央集権型管理から解き放ちます。このようなブロックチェーンを用いた一連の技術であったりサービスのこと、あるいはこのようなサービスがもたらす新たなWeb体験を、Web3.0と呼びます。
 
ブロックチェーンについては…、本気で説明するととてつもないボリュームが必要なのと、技術的にもとてもむずかしい内容になってくるので、ざっくりと説明します。
ブロックチェーンは分散型台帳とも呼ばれます。
今までの、中央集権型のサービスは、言わば集中型台帳だったわけです。じゃあ、「データをどこに分散するの?」というと、ネットワーク上のPCやらサーバやらに分散して、かつ相互に監視しながら正確性や最新性を保つのが、ブロックチェーンです。
 
 
 

Web3.0で注目されるNFT(非代替性トークン)とは

 
ブロックチェーンを使った技術として、一躍名を広めたのは、ビットコイン等の暗号通貨でしょう。
続いて、注目を集めているのがNFTです。
 
NFTの事例をご紹介しましょう。
2020年10月に開催されたSKE48のコンサートにおいて、コンサート中に撮影された写真をNFTとして販売したところ、6500点の写真がわずか30分で完売したそうです。
 
「いや、それって今までも存在したアイドルのブロマイド写真販売でしょ?」と思うかもしれません。違うのは、NFTが「これが本物ですよ!」という証明書であるという点です。
 
それがデジタルにせよアナログにせよ、写真を販売すると、常に複製される危険性を伴います。特にデジタルの世界では、複製しても品質が劣化しない(もしくは劣化を最小限に抑えられる)ため、本物に対し、数百枚、あるいは数万枚単位の偽物が出回る可能性があります。
 
対して、NFTは、紐付けられたデジタルデータに対し、「これは本物ですよ!」という証明書が付帯します。NFTそのものは複製を防ぐ技術ではありませんが、「あなたが保有しているSKE48の写真は本物ですよ!」という証明書(NFT)の存在が、ファンにとってはコレクターズアイテムとしての価値を高め、所有欲を満たす要件として期待されています。
 
 
別の事例をご紹介しましょう。
小学3年生の「Zombie Zoo Keeper」なるデジタルアーティストが発売したNFTデジタルアート(イラストです)が、約100万円の価格で売買されました。
と言っても、約100万円というのは2次流通(※転売とお考えください)でついた価格であって、作品を発表した当初は、1点2,000円程度で販売していたそうです。
 
話が変わりますが、先日環境活動家からトマトスープをかけられるという受難に遭遇したゴッホのひまわりは、約120億円で売買されたと言われています。しかし、120億円という莫大な金額は、前オーナーの懐に入るだけで、ゴッホの遺族等には還元されることはありません。
 
しかし、NFTには、所有者の移転情報を記録する機能があります。
加えて、「これこれこういう条件が満たされたら、○○という処理を行いなさいよ」というプログラムを仕込むことができます。(これをスマートコントラクトと呼びます)
このことによって、最初の所有者があるデジタルアートを転売した場合、あらかじめ設定された手数料が、作者やアーティストらにも還元される仕組みを構築できます。
 
「Zombie Zoo Keeper」氏についても、当然、転売価格の一部が還元されています。
これまた極論ですが、例えばこの売買をGoogleが管理していたとしたら、Googleのさじ加減ひとつで、取引条件が変更される危惧がゼロではありません。
 
しかし、ブロックチェーン上で動くNFTであれば、データや仕組みの改善が極めて難しいため、「Zombie Zoo Keeper」氏のようなデジタルアート・アーティストは、今後、仮に3回目、4回目と転売が行われたとしても、利益を受け取り、そしてアーティスト活動を継続する原資とすることができるのです。
 
 
 

Web3.0の注目サービス 「DAO(ダオ)」とは

 
他にもWeb3.0で注目される技術・サービスはいくつもあります。
ゲームを行いながらお金を稼ぐことができるPlay2Earn(プレイトゥアーン)、中央集権型管理者が不要で運営できる金融サービスDeFi(ディーファイ)などもありますが、本稿ではDAO(ダオ)についてご紹介しましょう。
 
突然ですが、企業の仕組みついて、軽く復習します。
企業は、議決権を持つ株主の意向を汲み、経営陣が企業を経営します。株主は企業に出資し、企業は株主に対して配当などによって利益還元するわけです。
 
DAO(自立分散組織)は、株式会社以来の発明と呼ばれています。
参加者は、組織に対して貢献を行い、貢献に応じて、トークンを受け取ります。
 
ここでいう貢献とは、直接的な行動や活動の実績であるケースもあれば、出資・投資といったお金である場合もあります。
またトークンは、「お金の代わりになるもの」と捉えられがちですが、議決権、配当請求権、株主における投票権、あるいは会員権や利用権である場合もあります。DAO設立時に決めたルールに従った役割を、トークンは果たします。
 
DAOを採用した組織では、例えば参加者が獲得したトークンに応じ、組織の運営に対して発言権を持ちます。すなわち、従来の株式会社のような、経営陣を頂点とした上意下達型の組織ではなく、より多くの参加者が、貢献度に応じて経営に参画できる組織を実現できると言われています。
 
DAOを採用している組織の例を挙げましょう。
 
VitaDAOでは、科学者・研究者らが、自身が得た長寿研究に対する研究成果をVitaに提供することで、VITAトークンを獲得します。VitaDAOは、参加者から提供された知的財産を企業等に提供し、対価として利用料を得て、長寿研究に対する資金を獲得します。
参加する科学者・研究者らは、獲得したVITAトークンを用いて、研究成果を誰に、どのように提供、あるいは商業化するのかの決定権などを得ます。
 
 
あくまで筆者の私見ですが、DAOのような仕組みは、ボランティア団体、非営利団体などで、特に効果を発揮するかもしれません。
このような組織では、(こういう言い方は身も蓋もありませんが)口ばかり達者な古参メンバーが新参メンバーをこき使い、組織の実働を担っているのは発言力が乏しい新参メンバーばかりというケースが間々あります。
また、ボランティア活動をしても、組織が必ずしも参加者の意向に沿った方向に活動の舵取りを行わなわず、結果として参加者の離反を招くといったケースもあります。
 
少し脱線しますが、Web3.0の文脈とは関係なく、DAOのような組織であり組織経営方法論は、既存企業の経営行き詰まりを解消したり、新たな形の組織やプロジェクトを運営するための方法論として、これからより注目されていくかもしれません。
 
 
 

Web3.0は世間に普及していくのか?

 
皆さま、いかがでしょうか?
なるべくかんたんに解説したつもりではありますが、それでも「何を言っているのか、よくわからん…」と感じた人もいらっしゃることと存じます。
当然だと思います。
Web3.0に限った話ではありませんが、こういう先鋭的なテクノロジーの話は、どうしても難しいです。私の筆力が足りない部分もあるでしょう。
 
「習うより慣れろ」という言葉があります。
とりあえず、現時点では「なるほど、こういうもの(サービスやテクノロジー)が生まれつつあるのね…」くらいに捉えておくのが、ほとんどの人にとっての正解ではないかと、私は考えています。
 
実際に、例えばあなたの好きなミュージシャンが、NFTで楽曲を提供するなどとなった段階で、「そう言えば…」と、本稿を思い出していただければすごく嬉しいです。

Web3.0に積極的に取り組もうとしている企業や人々の話を聞いていると、概ねこれから5年間が、Web3.0が社会に実装され、私たちの生活の一部となっていく期間と予測する人が多いようです。
 
どうなるのか、注目していきましょう。
 
 
 


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