秋元通信

鈴木清が振り返る2022年、「『物流の2024年問題』を乗り越えるために求められる取り組みとは」

  • 2022.12.23

こんにちは。
 
秋元運輸倉庫 常務取締役、そしてイーカーゴ代表取締役の鈴木です。
私は、2021年の振り返りで、中小物流企業の未来について、いろいろと考えさせられる一年だったと申し上げた。
 
鈴木清が振り返る2021年 「物流企業の将来を憂う」
 
2022年は、「物流の2024年問題」が始まっているんだなと実感した年だった。
新型コロナウイルスも収束に向けて動き出し、経済活動の復興も始まった。
一方で、「物流の2024年問題」が、より現実的で肌感覚を伴った問題となっていることが、同業他社から聞こえてきている。
 
新型コロナウイルス感染拡大により消費や生産が落ち込み、国内貨物輸送の荷動きは鈍化した。こうした中、人手不足が一時的に緩和されたが、荷動きも2022年後半から回復基調にあるようだ。
また、世界各地における生産活動の再開も始まり、北米でのコンテナ滞船も改善の兆しがみられ、各地の港湾も動き出してきた。
弊社も海外からの貨物が10月頃から戻り始めてきている。
 
このような状況は喜ばしいことなのだが、反面、恐れてきた人手不足とドライバー不足が再燃し、さらに協力会社の確保が厳しくなっていきそうだ。また、東京港周辺の倉庫は、荷主側で輸入遅延やコンテナ不足を警戒してか、入荷量が出荷量を上回り、在庫が積み増しされ、スペースが非常にタイトになってきている。
 
実はコロナの3年間は荷量が減少したことで、トラックの常用契約を解除されたり、仕事が枯渇した会社も多く、中小の運送会社はトラックを減車したり、保管スペースを縮小したりして経営難を乗り越えて来た。中小の物流事業者は一時的に縮小していたのだ。
 
国内輸送の大半を担っている中小トラック運送業者は、労働時間が長く賃金が低い傾向にある。結果、若い人材が減少し、逆に就業者の高齢化も進んでいる。
長時間の問題は、「長時間働かないと、世間並みの収入が得られない」ということの裏返しでもある。
 
現代の物流は、荷主ニーズやITの進歩などによって、商流と物流は一体となり、輸送、荷役、保管などといった従来の機能やサービスは、物流事業者と荷主の枠を超えて、発展し続けている。
旧来、物流事業者が行ってきたサービスだけでは追いつかなくなり、逆に荷主が求め、自ら実施する物流サービスの一部を物流事業者が担うケースも生まれている。つまり、スペアの効く、手足としての事業活動だけを中小の物流事業者が請け負うわけである。
ECビジネスを展開している企業は、自前物流をさらに展開して完全自動化を目指し、進化を続けている。
中小の物流事業者の活動範囲は、さらにニッチビジネス化していくのだろうか?
 
こうした中、「物流の2024年問題」が中小物流企業に圧し掛かってきているのだ。
「物流の2024年問題」とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する諸問題の総称である。
 
そして対策の一つとして年々増加しているのが、物流業界のM&Aである。
M&Aが増加している大きな要因は、以下4つである。
 

  • 輸送効率の悪化(小口配送の増加)
  • 環境規制の対応
  • 人手不足
  • 労働環境の改善

 
これらの課題は、物流業界で…、特に中小物流企業を悩ませている。これら課題に対する対策は、収益をさらに圧迫することは明白だからだ。
 
運送業で働く時間を減らすということは、収入が減ることを意味している。ドライバーの流出もますますに活発になるだろう。
 
弊社ではドライバーの応募が増えている。
しかし、収入や業務内容を説明すると敬遠され、入社には至らないのが現状である。
 
その他にも、ロシアによるウクライナ進攻や円安による燃料高騰も悩ましい。
トラックの新車購入は、発注後1年以上待たなければならず、修理費用は信じられないほど高額になった。それでも直ればいいほうで、部品調達ができず修理ができなかったり、工場での働き方改革によって修理にかかる時間が1週間以上になることは当たり前になってきた。
 
さらにインボイス制度も悩ましい。
小さな運送会社は、未だに手書きないし手書きに準じるようなやり方で請求書を作成しているところも少なくない。2023年10月からスタートするインボイス制度における適格請求書保存方式に対応できず、今後、取引を敬遠される小規模の運送会社が出てきそうだ。
その他にも、高速料金の値上げと新たにでてきた走行距離課税…
 
これだけのコストアップや、予測不可能なことを抱えて、中小運送事業者の社長は、どう考えるのだろう?
「自分の子どもには同じ苦労はさせたくない」、「廃業か会社を売却するしかない」などと考え始める社長もいるはずだ。
 
結果、時代の潮流に対応できない中小零細のトラック運送事業者では、M&Aによる再編が今後加速度的に進んでいくと予測している。
結果、今までのような「運送会社なんてたくさんあるし」といった暴言は過去のものとなり、トラックの手配に苦労するケースも増えていくだろう。
 
今後の物流業界は、異業種を含めたアライアンスによる業界再編のほか、メガプラットフォーマーの台頭で業界構造が大幅に変化すると思う。
 
プラットフォーマー=物流プロセスをITシステムで統合管理し、オープンに物流サービスを提供すること。
つまり物流業界は、「規模の経済」が働くようになりつつあるのだ。プラットフォーマーとしてより多くの顧客を獲得し、いちはやくビジネス規模の拡大に成功した少数の企業が有利となり、生き残る。ITビジネスでGAFAが生き残ったのと同じ歴史が、ここ物流ビジネスでも繰り返されるのだ。
 
 
では皆さまはどうしますか?
秋元グループも参加している物流不動産協同組合賛助会では、2021年12月に物流事業者による協働物流部会を下部組織として発足した。
現在、協働物流部会は、運送、倉庫、港湾といった専門性のある物流会社8社で構成し、それぞれの企業の相互補完をすることで倉庫や車両の稼働効率を向上させるための活動をしている。結果、それぞれの強みを強化できるようになってきた。
 
各社の営業エリアを超え、会員同士の連携をすることによって、営業範囲の拡大を実現し、今後は協働物流の輪をさらに広げるため、たくさんの企業に参加していただけるように活動していきたい。
 
 

(秋元運輸倉庫 常務取締役 鈴木清)


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