秋元通信

インターネットが生み出した、新たな購買行動モデル「パルス消費」、衝動買いとはどうことなるのか、AIDMAやAISASと比較

  • 2023.6.21

「インターネットが私たちの生活により密接になったことによって、『衝動買い』が増えている」──このお話、皆さまはどう感じますか?
 
「うんうん、なるほどそうだよなぁ…」と思う人。
「確かに、私自身もそうかも?」と共感を感じる人。
 
あるいは、「いや、私は違うけど??」という人もいるでしょう。
 
Googleが研究した結果、従来の購買行動モデルとはことなる、一見「衝動買い」とみなされる購買行動モデルが登場していることが明らかになりました。
 
Googleは、これを「パルス消費」と名付けましたが、「パルス消費は衝動買いとは異なりますよ!」とも言っています。
 
 
本稿では、このパルス消費について、従来の購買行動モデルである、「AIDMA(アイダマ)モデル」「AISAS(アイサス)モデル」とともに解説しましょう。
 
 
 

AIDMAモデルとは

 
AIDMAモデルは、1920年代にローランド・ホール氏(米)が提唱しました。
 
「Attention(注意)」
「Interest(興味・関心)」
「Desire(欲求)」
「Memory(記憶)」
「Action(行動・購買)」
 
AIDMAとは、この頭文字を取った言葉です。
 
そして、「Attention(注意)」を「認知段階」、「Interest(興味・関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」を「感情段階」、「Action(行動・購買)」を「行動段階」とカテゴライズしました。
 
 
AIDMAモデルは分かりやすいですね。
例えば、今、筆者は、超音波式の虫よけ機に興味があります。
 
「より適当な虫よけ方法がないか?」という「注意」があり、それが「薬剤を使わないクリーンな虫よけ方法があるらしい」という「興味・関心」に移りました。
調べているうちに、「これ、欲しいなぁ…」という「欲求」が沸き起こり、そしてこの心理が維持されている状態(=記憶)で、Amazonタイムセールで割引販売されていることを知り、購入という「行動」に移ったわけです。
 
 
 

AISASモデルとは

 
AISASモデルとは、2004年に電通が提唱したものです。
インターネット上(あるいはインターネットが生活に密接していることを前提とした)購買行動モデルです。
 
「Attention(注目・認知)」
「Interest(興味・関心)」
「Search(検索)」
「Action(行動・購買)」
「Share(共有)」
 
「Attention(注目・認知)」「Interest(興味・関心)」まではAIDMAモデルと同じですが、その後、商品検索や情報収集を行う「Search(検索)」が加わる点、そして最後に「これ、購入して良かったよ(あるいは、「悪かったよ」)」というSNS投稿を行う「Share(共有)」が加わっている点が、AIDMAモデルと異なります。
 
ちなみに、このAISASモデルは、「A+ISAS」モデルや「デュアルAISAS」なんていう派生モデルも生みましたが。
これらは本稿では割愛しますね(興味がある人は、Google先生に聞いてみてください)。
 
 
インターネットの普及と発展によって、マーケティング界隈がより注目するようになったのが、「Attention(注目・認知)」と「Share(共有)」でした。
 
いかにして、商品・サービスに注目をしてもらうか?
あるいは、口コミによって、その商品・サービスの価値をいかにして世間に広めるか?
 
インターネットがない時代の情報は、TV・ラジオ・雑誌といったメディアから、消費者に対して情報は一方通行で流れるものでした。
ところが、インターネットの普及は、情報の上流・下流の区分を消滅させました。
 
一般消費者も、重要かつ強力な情報発信源となりうる今、「Attention(注目・認知)」と「Share(共有)」が注目されるようになったのです。
 
 
 

そしてパルス消費へ

 
そもそも、AIDMAモデルにしても、AISASモデルにしても、「Attention(注目・認知)」と「Action(行動・購買)」の間にタイムラグがあることが前提でした。
 
ところが、2019年にGoogleが提唱したパルス消費では、「Attention(注目・認知)」と「Action(行動・購買)」が連続し、かつ瞬間的に行われることが指摘されています。
 
実際、2018年にGoogleが実施した調査では、「何を買うかを決めずに(オンライン、オフライン問わず)お店へ行くという人や、それまで名前を聞いたことがない商品でもためらわずに買う人」が増えているという結果が得られています。
 
 
パルス消費の背景には、インターネットによって社会が情報過多になり、私たちが常にさまざまな、そして大量の情報シャワーにされされ続けている結果として、(意識しているか、意識しているかは別として)常に「Attention(注目・認知)」、あるいは「Interest(興味・関心)」におかれていることを指摘しています。
 
結果、「あ、これいいな!」という商品やサービスに出会った瞬間に、購入してしまうという理屈です。
 
 
 

パルス消費が生じる理由

 
Googleでは、パルス消費が生じる理由として、「お店(購入先)」、「支払い」、「商品(への期待)」という三つの要素を挙げています。
 
 
「お店(購入先)」については、言わずもがなですね。
現在は、リアル店舗だけではなく、Amazonや楽天等のネットショッピングも普及し、そして私たちの生活により密接なものとなりました。
 
筆者が利用しているアニメ動画配信サービスでは、動画を視聴する際に、関連するアニメグッズの宣伝も表示されるようになりました。
 
お店、すなわち購買機会の増加が、パルス消費を加速させているというわけです。
 
 
「支払い」については、現金決済からキャッシュレス決済への移行が背景にあると指摘しています。
 
「EC であれ実店舗であれ、この数年でキャッシュレス決済が急速に普及。これによって、人々も現金と引き換えに商品を得るという感覚が薄らいでいるのです」(※Googleの説明)
 
平たく言えば、「キャッシュレス決済が、財布の紐をゆるくしている」ということなのでしょうが。
これは人によりけりじゃないですかね(と筆者は思います)。
 
 
「商品(への期待)」について、Googleはこのように説明しています。
 
「今や商品が提供するベネフィット(利益、恩恵)が、モノとしての機能を超えて、それを使ったときに得られる、属人的で感性的な期待までをも含むものに変化したことです。(中略)
その人の感性や状況によって、商品の機能に含まれる期待は異なります」
 
こうした社会環境の変化によって、「ひとつひとつの商品をロジカルに選択することは、すでに現実的ではありません」とGoogleは説明しているのです。
 
 
さて、皆さまは、パルス消費についてどう感じたでしょうか?
また、「パルス消費 ≠ 衝動買い」と言われて、納得しましたか?
 
筆者が、自分自身の行動を振り返ったとき、瞬間的に購買行動を起こした場合でも、「ロジカルに選択したケース」と「いわゆる『衝動買い』をしたケース」の2種類があるように感じます。
 
ただし、このふたつ、すなわちパルス消費と衝動買いを明確に線引することは難しいように感じます。
 
 
 
余談です。
 
先に挙げた超音波式の虫よけ機については、筆者は衝動買いだとは思っていません。
ただし、先日買った「夏物ひんやりグッズ福袋」については…、衝動買いでしたね。
 
この福袋、必ずネッククーラーが入っており、他に数点、ひんやりグッズが同梱されているものだったのですが。
実際に入っていたのは、機械冷却式のネッククーラーの他、ペットボトルや缶ジュースをUSB電源から冷却できるカップクーラー、電動式冷却式ヘッドバンド、冷風送風機能付きハンディファンでした。
結果、大満足の福袋でしたが、モノが届くまでは、「あぁ、無駄遣いしちゃったかなぁ…」と後悔と自責の念に襲われておりました。
 
パルス消費と衝動買いと区別するのは、「後悔と自責の念」の有無かもしれません。
 
 
 

出典および参考

 

   


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