秋元通信

「1%の積み重ね」で勝ち取った金メダル

  • 2016.8.31

「枕を変えろ! それが、金メダルへの一歩なんだ!」
と言われたら、あなたは信じますか?

不審に思ったあなたは尋ねます。それはどれくらい効果があることなんだ?、と。
「睡眠の質が1%上がります」
このように答えられて、あなたは枕を変えますか?

これを実践し、大いなる結果を獲得した国でありスポーツがあります。
イギリスの自転車競技界であり、その牽引役である「TEAM SKY」です。

今回は、リオ・オリンピックにおいて気を吐いたイギリス自転車競技のキーワード、「人生を左右するのは『1%の積み重ね』」という考え方について、ご紹介しましょう。
おさらいです。
リオ・オリンピックにおける、国別のメダル獲得数は以下のようになりました。

1位 アメリカ 121個 (金46個 銀37個 銅38個)
2位 イギリス 67個 (金27個 銀23個 銅17個)
3位 中国 70個 (金26個 銀18個 銅26個)
4位 ロシア 56個 (金19個 銀18個 銅19個)
5位 ドイツ 42個 (金17個 銀10個 銅15個)

そして、日本のメダル獲得数は、41個。内訳は、金12個、銀8個、銅21個でした。素晴らしい結果です。
ところで、リオ・オリンピックにおけるメダル獲得数を人口で割ったらどうなるのでしょう?

◇人口1千万人あたりの「金メダル」個数
アメリカ 1.46個
イギリス 4.32個
中国 0.19個
ロシア 1.33個
ドイツ 2.07個
日本 0.95個

◇人口1千万人あたりの「金+銀+銅」メダル個数
アメリカ 3.85個
イギリス 10.72個
中国 0.52個
ロシア 3.92個
ドイツ 5.10個
日本 3.24個

イギリスの成績がずば抜けていることが分かります。

人口あたりのメダル獲得数を診ると、イギリスと、本文では触れませんでしたがオーストラリアがずば抜けていることが分かります。実は、どちらも国家レベルで自転車競技の強化を行った実績があります。

人口あたりのメダル獲得数を診ると、イギリスと、本文では触れませんでしたがオーストラリアがずば抜けていることが分かります。実は、どちらも国家レベルで自転車競技の強化を行った実績があります。

アトランタ・オリンピック(1996年)におけるイギリスのメダル獲得数は、金銀銅合わせて15個でした。ここから奮起したイギリスは、ボート競技、自転車競技を中心に、スポーツ振興に予算を注ぎ込みます。例えば、2013年から2017年の予算は、約450億円に及ぶそうです。
リオ・オリンピックにおいて、イギリスは自転車競技で11のメダルを獲得しました。金メダルに限ればイギリスが獲得した11個のメダルのうち、6個が自転車競技での獲得です。イギリスのメダル獲得は、自転車競技が大きく貢献していることが分かります。

 

イギリスの自転車競技を牽引するのは、「TEAM SKY」というプロサイクルロードレースチームです。リオ・オリンピックのトラック競技で金メダルを獲得したブラッドリー・ウィギンスは、2012年にTEAM SKYのエースとしてツール・ド・フランスに出場し総合優勝を果たしました。ロードレース競技に出場し銅メダルを獲得したクリス・フルームは、TEAM SKYの絶対的エースとして、今年を含めて過去3回ツール・ド・フランスの総合優勝を果たしています。

TEAM SKYは2009年、TV局をメインスポンサーとして、イギリスの準ナショナルチームとして発足しました。
ゼネラルマネージャーであり監督でもあるデイブ・ブレイルスフォード氏が掲げた目標は、「5年以内にイギリス人初のツール・ド・フランス優勝」を達成すること。この目標は、5年どころか3年で達成されました。

「すべての行動において1%の改善に取り組む」
これが、ブレイルスフォード氏の理念。シンプルではありますが、辛抱強さが求められる考え方です。

「もっとも効果の高いマッサージジェルを試す」
「感染症を予防するのに最適な手洗いの方法を選手に指導する」

これはすべてTEAM SKYが実践したものです。冒頭の枕の話も、実際にTEAM SKYが行ったことなんだそうです。
ひとつの改善施策における効果は、わずか1%かもしれない。でも、1%の改善を無数に積み上げれば、それは必ず大きな効果への昇華する。
これが、TEAM SKYの改善手法であり、信じる理念でした。

コンサルティングを行っていると、「自分たちでは絶対に思いつかないようなウルトラ級のアイディアで、私(自社)を救ってくれるに違いない」と思っているお客様に出会います。そういうお客様に、地道な施策、例えば4Sの基本である清掃を日々行うようにお話しすると、がっかりされるケースがあります。

「目に見える大きな結果につながらなければ、変化を起こす意味がない」
このようなお客様は、たいがいこのように考えています。

改善をスタートさせる時、「1%プラスの選択」と「1%マイナスの選択」に、ほとんど差はありません。
差がないという事実、そして効果が見えにくいという結果が、改善へのモチベーションを下げ、改善への軽視につながります。
筆者自身もそうなのですが、例えばコンサルティングの成果を誰かに話すときは、まず「目に見える大きな結果」をアピールします。だから、世の中には「目に見える大きな結果」の成功事例がたくさん転がっています。
そのために、勘違いしてしまうのかもしれませんね。
実際に改善を行い、そして結果を出したお客様のほとんどは、小さなことをひとつ、ふたつ、みっつと無数に積み上げたご褒美として、大いなる結果を得ているのですが。

「実際の人生における重要なことのほとんどは、独立したイベントではなく、1%プラスにするか、1%マイナスにするかの選択をした、無数の瞬間の積み重ねである」

TEAM SKYでは、レースはもちろん、練習の時でもパワーメーターという、選手が出した出力を計測する装置を常に自転車に装備しています。選手の出した出力を常にチェック、そして分析し、選手のパフォーマンス向上につながったと思われる要素は、すべて検証していくんだそうです。

近年のサイクルロードレースにおいて、TEAM SKYの強さはずば抜けています。きつい山岳コースで他チームがメンバーを減らし、エースが孤独化していくなかで、TEAM SKYだけは、複数のアシストが残りエースを守り続けます。

「レースよりも練習のほうが、もっと言えばレースに至る日々のほうがずっときつい」
これはTEAM SKYの選手たちの本音だそうです。
日々1%を積み上げる努力を怠らないからこその言葉なのでしょう。これが難しいことは、イギリス自転車競技におけるメダル獲得数や、TEAM SKYの真のライバルたるチームがここ数年現れないことが証明しています。
コンサルタントの端くれとして活動していて、「ウルトラ級のアイディア」を求めるお客様と出会うと、日々の努力の積み上げの大切さを語ることに無力感を感じることがあります。
考えてみると、そのような方(企業)は、日々の努力をしたくないからコンサルタントを求め、そして「ウルトラ級のアイディア」を求めているのかもしれませんね。

いまの世の中、楽して短期的に大きな効果が出るような方法が、そうそうあるわけもありません。
もし、短期的に大きな効果を得ることが結果的にできたとしたら、もともとのスタート時点がとても低かったか、よほど運が良かったか、それとも世間では知られる手法を知らず、これまで実践してこなかったか…、いずれかでしょう。
「1%の積み重ね」、言うことは容易いですが、行うことはとても困難です。
でも、その大切さと効果を信じること、再認識することが、もしかすると数年後の大きなリターンへの第一歩なのかもしれません。

 

参考:
人生を左右するのは「1%の積み重ね」
http://www.lifehacker.jp/2014/02/140210marginal_gains.html

 


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