秋元通信

【秋元通信】 給料アップを望まないトラックドライバー

  • 2015.6.30

こんにちは。

沖縄を除き、梅雨まっただ中の日本列島ですが、梅雨を象徴する花と言えばあじさい(紫陽花)。
実は、あじさいには毒性があるってご存知でしたか?
直接食べなくとも、食事とともに皿に飾ったあじさいが原因で、中毒事故も発生しています。あじさいそのものを口にすることは論外ですが、あじさいの花を触れたり、活けたりする際には十分に注意してくださいね。
特にお子様のいる家庭では、気をつけたほうが良いかと存じます。

さて、今号のメイン記事は、「給料アップを望まないトラックドライバー」と題して、草食系サラリーマン(…?)についてお伝えします。



■ 今号のメニュー ■
1.給料アップを望まないトラックドライバー
2.物流関連ニュース
3.日銀物流レポート



■ 給料アップを望まないトラックドライバー  ..。..。..。..。..。..。..。

突然ですが、筆者は趣味で自転車を楽しんでいます。

自転車仲間のひとりが、また新たな自転車購入を目論んでおりまして。
「また」と書いたのは、彼は既に50万円前後の自転車を3台持っているにも関わらず、同様の価格帯の自転車購入を考えているわけです。

「君は可処分所得が多いからなぁ~」と(ひがみ半分)からかったところ、彼はこう返してきました。

「だから俺、結婚するつもりないし。給料上がるような仕事じゃないから、俺だっていろいろ考えているんだぞ」

ちなみに、彼は食品配送のトラックドライバー。
今回は、「給料が上がらない」と言った、彼の言葉を考えてみたいと思います。


物流業界は、小売などの接客業、建設業、最近では介護・福祉業界などとともに、典型的な労働集約型産業のひとつと言われます。
全日本トラック協会の平成25年度統計※によれば、運送コストの37.2%が人件費であり、運送コスト全体の中で、燃料代や車両減価償却費を抜き、人件費の占める割合がいちばん高くなっています。

労働集約型産業について、確認をしておきましょう。
労働集約型産業とは、コストの中で人件費の占める割合が高く、またビジネス活動全体の中でも人の労働力に依存するプロセスが多い産業を指します。また一般論として、労働生産性が低いことから賃金が安く、離職率も高いとされています。

給料は、原則として当人の生産性に比例して上下します。
例えば営業職などと違って、「頑張って稼ぐ。頑張って売上を増やす」ということがやりづらいトラックドライバーの場合、給料をアップするのは簡単なことではありません。残業して稼ぐ、ということも、ドライバーさんは、コンプライアンス上、限度がありますからね。

「給料? アップできるんであれば、俺だって、もっとたくさんあげたいよ。だけど、運送じゃ限界あるだろう…」
これは、筆者がトラック協会の懇親会で、大先輩である某社長から聞いた言葉。
「安い給料でこきつかえれば、その方がいいや!」なんて、ハレンチなことを考えている物流企業の経営陣は、今の時代、あまりいないんじゃないでしょうか。物流業界における賃金水準の低さは、業界全体の課題のひとつであることは間違いがありません。


冒頭の彼の話に戻ります。
彼は、先日40歳になりました。会社から、事務職(管理職)への転換を打診されたそうですが、断ったそうです。理由は、面倒くさいから。趣味の自転車に乗る時間が減る可能性もあり、休日出勤も増えそうだからというのも理由。
給料は上がるはずだったのですから、「給料上がるような仕事じゃない」と言った当人の言葉とは裏腹に、自分自身で給料が上がらない道を選んでいることになります。


こんな記事がありました。

【希望は定年退職】俺たちサラリーマン224人「絶対出世したくありません!」
http://www.huffingtonpost.jp/sirabee/busjinessmen_b_7655628.html

刺激的なタイトルですね。記事の内容を抜粋してみましょう。

・36.1%が「出世したくない」

「出世したいと思わない」、その理由
 ・普通に生活ができれば良いです(男性・30代)
 ・プライベートが一番なので(男性・30代)
 ・責任ばかりで権限がない、イヤなことばかり(男性・50代)
 ・出世しても、仕事の責任のわりに給料があがらないから(男性・40代)
 ・ミスをしてクビになるより出世せずに定年までいるほうがよい(男性・50代)
 ・そもそも、働かなくても良いなら働きたくないので(女性・30代)

考えてしまいます…
ただ、会社内での出世や、給料アップを期待していない人が少なからず存在することは、本記事を引き合いに出すまでもなく、間違いのないことなのでしょう。

僕の友人も、そのひとりですね。
個人的には、仕事で出世を望まない人は、給料のみならず人生のさまざまなチャンスを狭めることになってしまうと考えてしまいますが。

物流業界、とりわけトラックドライバーは、人不足が業界全体の課題となっています。
よく、「給料が安いから人が集まらない」とおっしゃる方がいますし、それは課題のひとつではありますが、今回取り上げたような、出世を望ます、給料もそこそこでいい、だけどプライベートは大切にしたい、といった人の存在は、物流業界の人不足に対するヒントのひとつではないでしょうか。


※出典 「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2014」 12ページ
http://www.jta.or.jp/index_truckgaiyo.html



■ 運送関連ニュース ..。..。..。..。..。..。..。
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 ピックアップしてご案内いたします。
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◇ アルコールチェック 検査結果異なり荷主から乗車拒否
◇ 存続の方法「事業継承M&A」 事業安定のメリット、マッチングの難しさ
◇ ドライバー不足深刻化 自工会・普通トラック市場動向調査
※記事本文は物流ウィークリーWebサイトをご覧ください。




■ 日銀物流レポート ..。..。..。..。..。..。..。

日本銀行調査統計局が発行したレポート「わが国企業の物流機能の強化に向けた取り組み」をご紹介します。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140602a.pdf

同レポートは、昨年6月に発行されたもの。少し時間は経っていますが、現在の物流業界の変化を的確に捉えている、良いレポートかと思います。

レポートは、物流企業および荷主企業の新たな「物流機能強化」の取り組みに関し、マーケットのニーズや物流不動産ファンドの動向など、物流ビジネス環境全般を俯瞰的に眺めつつ、簡潔にまとめられています。
レポート内では、「物流機能強化のきっかけ」として、以下三点が挙げられています。

・「物流の需要面における変化」
高齢化の進展やネット通販市場の拡大などによる消費者の購買スタイルの変化に伴い、小口・多頻度の輸送ニーズが高まっていること。

・「物流の供給面における変化」
具体的には、物流関連テクノロジーの高度化や、圏央道など都市圏における道路網のさらなる整備進捗などが、物流機能強化を促していること。

・「金融面の後押し」
REIT やファンドなどが、物流不動産ビジネスを活性化させていること。

国内貨物総重量そのものが伸び悩む中、なぜ物流が活性化し、また大型物流倉庫が新設されるのか。
同レポートでは、その理由として、荷主側の高機能化に対する要求の高まりと、物流企業側の高付加価値化による生き残り策を示唆しています。

先日発売された、週刊東洋経済「物流大激突」などが売り切れを起こしたように、一般メディアでも物流に関する特集記事が組まれ、かつその注目も高まっています。

ただし、その多くは最新物流ビジネスの華やかな一面を切り取ることが多く、人口減少、高齢化など、日本が抱える問題を議論の材料にまで加えた考察を行った記事は少ないように思います。

「物流機能が将来にわたって安定的に供給されるためには、物流業界における労働生産性向上への取り組みも一層重要になっていくと考えられる。
物流は、わが国経済のインフラとして、わが国企業全体の成長に対し重要な役割を担ってきた。今後も、本稿でみてきたような物流機能の強化が継続的に進展し、わが国経済全体にプラスの影響をもたらすことが期待される」

これは同レポートのまとめです。
繰り返しになりますが、物流業界の現状と課題について、とても良くまとまったレポートかと思います。
お勧めです。




最後までお読みいただきありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。


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