秋元通信

勘違いは大火傷のもと、広告記事とは異なる「パブリシティ」を解説

  • 2023.7.31

メディアで自社の(あるいは「自分の」)ことが取り上げられると嬉しいですよね。
 
TV、ラジオ、新聞、あるいはWebメディアなどは、それぞれ強い情報発信力を持っています。取り上げてもらった内容が、自社の製品・サービスなどであれば、大きな広告宣伝効果も期待できます。
 
ところが…
メディア業界関係者の間では、「あの企業は記事にしないほうがいいよ」と噂されている企業がいくつもあります。
 
理由はいくつか考えられるのですが。
よくあるのが、「広報・宣伝担当者やマーケティング担当者が、パブリシティを理解していないから」です。
 
 
 

パブリシティとは

 
メディアが制作する番組や記事内で、ある企業のコトを取り上げ、報道してもらうことを指します。
 
ここで言う「コト」とは、企業そのもののケースもあれば、製品やサービス、あるいは従業員や、企業が行っている社会貢献活動や地域活動などのケースもあります。
パブリシティのポイントを挙げておきましょう。
 

  • メディアに対し、対価を支払う必要はありません。
  •  

  • 報道内容のコントロールは、メディアが握っています。原則として、企業側(報道される側)は報道内容に口出しをすることはできません。

 
どちらも、視聴者(あるいは読者)の側から考えれば当たり前のことです。
 
もし見ているニュース番組・記事が、取り上げられた企業からお金をもらって制作されたものだとしたら、皆さまだったらどう思いますか?
「裏切られた!」「結局、広告じゃないか?」、そして「もうこの番組(記事、あるいはメディア)は信用ができない」と思いませんか?
これは、(お金をもらっていなくても)取材対象となる企業の校閲を受けた内容であっても同様です。
 
公正公平な報道は、メディア運営であり、ジャーナリズムの基本です。
 
もちろん、報道する側であるそれぞれのメディアや記者・ライター・ジャーナリストには、それぞれの基本方針や考え方があります。その意味で、真に公正公平であることはありえないのですが。
 
視聴者や読者は、メディアがそれぞれ備えている、基本的な方針や考え方を(恣意的かどうかはともかく)認識した上で、自分自身の好みにあったメディアを選択しています。
 
実際には、世の中には対価をもらって番組や記事を制作しておきながら、それを視聴者・読者には一切明らかにしていないメディアもありますけどね。
 
 
 

広告記事とは

 
広告記事とは、主に文字主体のコンテンツ(新聞、雑誌、Webメディアなど)で用いられる広告宣伝手法であり、対価を支払い、コンテンツ内で企業が依頼した製品・サービスなどを取り上げてもらう方法です。
 
「文字主体のコンテンツ」とは言いましたが、最近ではYoutubeなどで、広告宣伝であることを明らかにした上で、Youtuberが特定の製品・サービスの宣伝を行うケースも見受けられる機会が増えてきました。
 
とは言え、「お金を払っているんだから、とにかく広告主の言うとおりの記事(番組)を作りなさい!」というのはNGです。
 
公序良俗に反する内容をコンテンツ化できないのは当然として、嘘はNGです。
 
極論ですが、「来年3月に◯◯地方において大地震が発生するから、今すぐ◯◯地方に家・ビル・土地などの不動産を持っている人は手放しなさい!」などといった根も葉もない与太話をコンテンツ化することはできません。
 
ただし、この延長線上にある問題として、「メディア側の主張や考え方と、広告主側の主張・考え方が意見相違した場合にどうするのか?」、という問題があります。
 
これを掘り下げると、それだけでひとつふたつ記事が書けてしまうボリュームになってしまうのですが。
 
広告主とメディアが話し合うことにはなりますが、筆者自身、「この主張は、メディアの立場として書くことはできない」と広告主に折れてもらったケースを経験しています。
 
「世界で一番効果の出る◯◯」といった表現などは、このケースに該当します。
 
なお、広告記事のことをペイドパブリシティと呼び、前述のパブリシティのことをノンペイドパブリシティと呼ぶケースもあります。
ただし、一般的にパブリシティと言った場合には、ノンペイドパブリシティのことを指します。
 
 
 

パブリシティのメリット

 

  • 低コストで広告宣伝ができる。
    広告宣伝費用を支払わないので、費用対効果は抜群に高いです。ただし、パブリシティとして、各メディアで自社の製品・サービスなどを取り上げてもらうには、日頃からプレスリリースを発行したり、メディアやライターなどと付き合いをしておくなどの根回しや準備が必要です。
    その意味では、パブリシティと言えども、コストはゼロにはなりえません。
  •  

  • 視聴者・読者から信頼される。
    「TVで取り上げられていたから信用できるはず」、皆さんも、こんなふうに思ったことかはありませんか?
     
    元々、各メディアは、それぞれの視聴者・読者を掴んでおり、また信頼も得ています。つまり、広告記事よりも、信頼・信用してもらえる情報発信手段であるというのが、パブリシティ最大のメリットでしょう。
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  • 情報発信力・拡散力が高い。
    これはピンキリではありますが、一般論として、メディアは企業一社よりも高い情報発信力を備えています。
    ここに自社の製品・サービス情報を載せてもらえるメリットは大きいです。

 
 
 

パブリシティで絶対にやってはいけないこと

 
ここまで書いてくれば、もう分かりますよね。
 
「自社の宣伝を、無理やりねじ込もうとしないこと」です。
 
筆者は、複数のメディアで記事を執筆していますが、これ、取材先から何度もやられたことがあります。実際、どうしても取材相手が折れてくれず、記事からその企業に関する内容をすべて削除したこと(取材内容を記事化しなかったこと)もあります。
勘違いしないでほしいのですが、メディア側が間違った情報をコンテンツ化しようとしているのであれば、それは企業側も指摘し、修正を求める権利がありますし、そうすべきです。
しかし、見解や主張、あるいは記事全体のテイストに対し、取材してもらった企業側が必要以上の注文をつけるというのは…、それはおこがましい行為です。
 
 
これはある大手Webメディアの編集長から聞いた話なのですが。
 
メディア業界から嫌われていた大手企業A社がありました。
A社は、自社が関係する報道について、メディア側に厳しい情報統制を要請することで有名でした。
 
いかなる記事も、必ず広報担当の校閲をうけること。
A社に不利と思われる情報は、すべて修正すること。
 
A社は大手です。
例えば新製品の発売情報などは、メディアとしても取り上げないわけにはいきません。いきませんが、あまりに厳しい情報統制を要求するため、各メディアとも、A社に関する報道を控えるようになり、どうしても報道する場合でも、最低限の情報だけを掲載した報道に留めるようになっていきました。
 
しかしある時、A社自身も「このままでマズイ」と気が付きました。そのあたりは、やはり大手の大手たる所以です。
そこである日から突然、情報統制を一切行わないようになったのです。
 
「最初はおっかなびっくりだったけどね…」、このエピソードを教えてくれた某メディア編集長は、このように振り返ります。
 
やがて、A社が本当に方針転換したことを確認した各メディアは、A社に関する報道を積極的に行うようになりました。結果、A社に関するパブリシティは大幅に増加し、A社自身も、方針転換の効果に満足していたと聞きます。
 
 
広報宣伝担当者の中には、パブリシティをきちんと理解していない人や、あるいはむしろ「ウチのゴリ押しをメディアに対して実行させることこそ、広報宣伝担当者の腕の見せ所だ!」と勘違いしている人もいます。
 
パブリシティは、広告宣伝予算の少ない中小企業でも実施可能な戦略です。
だからこそ、きちんとその主旨を理解し、上手に活用したいものです。
 
 
 


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