秋元通信

「『物流の2024年問題』をテーマに記事を書いて欲しい」、SEO至上主義のマーケティングが忘れがちなこと

  • 2023.3.31

「うちの会社も、マーケティングによりチカラを入れていくことになりまして…」、最近、こんな言葉をよく聞きます。筆者の生業がライターであり、かつ秋元運輸倉庫以外でも、複数の企業オウンドメディアで執筆をしているためかもしれませんけど。
 
実際、従来のプッシュ型/アウトバウンド型の営業スタイルを見直し、マーケティングを駆使したプル型/インバウンド型の営業を強化する企業が増えているのは事実でしょうね。
 
 
例えば、以下はGoogleにおける検索キーワードのボリュームを、時系列で確認できる「Googleトレンド」で、「オウンドメディア」を検索した結果です。
 

 
キーワード「オウンドメディア」は、2012年頃から急激に検索されるようになり、2020年6月に急激に検索数が跳ね上がった後、再び2022年以降、継続的に数多く検索されていることがわかります。
 
 
 

新型コロナウイルスとマーケティング

 

マーケティング【marketing】 とは?
顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、最も有利な販売経路を選ぶとともに、販売促進努力により、需要の増加と新たな市場開発を図る企業の諸活動。
 
 
営業とは?
1 利益を得る目的で、継続的に事業を営むこと。また、その営み。特に、企業の販売活動をいう。「年中無休で―する」「―マン」
2 得意先を回って顔つなぎをし、商品の紹介、売り込みをすること。また、新しい得意先を開拓すること。「担当地区の―に行く」「新ビルに出店する企業に―をかける」
3 法律で、継続的に同種の営利行為を行うこと。また、その活動のために供される土地・建物などの財産をいう。
 
※出典は、ともにデジタル大辞林

 
 
営業活動とマーケティング活動は、似ていますが、異なる点も多くあります。とは言っても、「企業における売上向上」を最終目的にするという点では一致しています。
 
営業(※営業マン、あるいは営業部)は、文字通り契約を獲得し、売上を積み上げる部門であり、担当者です。顧客と直接折衝する役目を担います。
 
対して、マーケティング(※マーケッター、あるいはマーケティング部)が行うのは、顧客との直接折衝というよりも、搦め手をあれやこれや講じ、「顧客が製品・サービスを購入したくなる状況を生み出す」ことを目的としています。
 
これまで、マーケティングは、どちらかと言うと、営業活動のサポートや、おまけのように扱われることも多かった気がします。僕の知人も、「専門はマーケティングなんだけど、結局営業をやらされているんだよなぁ…」と嘆いていましたっけ。あるいは、広報・宣伝部の一部門として扱っている企業もありました。
 
ところが最近では、それまで営業をやっていた人がマーケティングを任されるケース、あるいはマーケティング部を新設するケースも現れています。マーケティングに対する評価、あるいは期待が高まっているわけです。
 
なぜなんでしょうね?
 
 
 

マーケティングが注目される理由

 
大きいのは、新型コロナウイルスの影響でしょう。
新型コロナウイルスは、私たちの日常を大きく変えました。一番の変化は、人と直接会いにくくなったことです。
 
飛び込み営業にせよ、ルートセールス、あるいは御用聞き営業にせよ、人と会うことがスタートです。そのスタートにすら、コロナの影響で立てなくなったことから、プッシュ型/アウトバウンド型の営業がやりにくくなったのです。
 
ただし、コロナ禍以前から、プッシュ型/アウトバウンド型営業の限界は見えつつありました。
主たる原因は、インターネットです。
 
現在のインターネットには、ありとあらゆる情報があふれています。誤解を恐れずに言えば、知識の乏しい(あるいは話術の下手な)営業マンの話を1時間聞くよりも、ネット上で求める情報を30分探し、閲覧したほうが、より多くの情報を知ることも可能でしょう。
 
「売り込みをかけるよりも、問い合わせをくれた相手に営業をかけた方が、効率的なんだよね」、このような言葉を聞くことも増えています。
これって、10年前、20年前も基本は同じだったのでしょうが、今はよりその傾向が強まったのでしょう。
 
 
 

なんちゃってマーケッターがたどる道

 
しっかりとマーケティングを勉強した人(あるいは企業)、あるいはマーケティングの本質を理解し取り組んでいる人(企業)と違い、「プル型/アウトバウンド型の営業がしにくくなったから」という、消去法によって、マーケティングを選んだ人(企業)が考えることは、ほぼ同じです。
 
「やっぱりネットだよね。ウチのWebサイトで情報発信すれば良いんじゃない!?」
 
だから、キーワード「オウンドメディア」がGoogle検索されるケースが増えているのでしょう。
 
プル型/インバウンド型へと営業活動を転換し、マーケティングを強化しようとする人たちが行うことは、だいたい同じです。
 

  • オウンドメディアを充実させる(製品・サービス情報や、関連情報を記事にまとめる)。
  • メールマガジンを開始する。
  • 記事広告を出稿する。
  • セミナーを開催する(ウェビナーを含む)。
  • 展示会に出展する。

 
これ、やり方としては間違っていません。問題は各施策の精度や質です。
特に「なんちゃってマーケッター」(とあえて呼んでしまいましょう)が失念しがちなことがあります。それは、競合他社も、同じことを考えているという点です。
 
 
 

「なんちゃってマーケッター」が望みがちな、SEO一位の獲得

 
2~3年前ですかね、筆者の書いた記事が、キーワード「物流の2024年問題」でGoogle検索結果の一位だった時期がありました(今は違います)。
その頃、複数の物流企業から「『物流の2024年問題』の解説記事を書いて欲しい」という依頼を頂きましたが、私はすべて断りました。理由は単純です。
 
検索一位を取った記事は、大手Webメディアで執筆した記事です。そのWebメディアは、SEO対策にもチカラを注いでいますし、強いドメインパワー(※SEOで上位に表示されやすいだけのバリュー)を備えています。
 
同じライターが、同じテーマで記事を書いたら、ドメインパワーの強いWebメディアに勝てるわけがありません。そもそも、物流企業が「インバウンド営業を強化したいから『物流の2024年問題』をテーマにした記事を客引きパンダにしよう!」なんて、誰もが思いつくことです。
私にご依頼してくれた企業の中には、かなりの大企業もありました。私の選択は、ライターとしては、かなり生意気でしょう。しかし、結果が出ないとわかっていることを請け負うのは、私も良心が痛みます。
 
ただ、勘違いしないでくださいね。
私は、「『物流の2024年問題』をオウンドメディアで取り上げる物流企業」を頭ごなしに否定するつもりもなければ、ましてやオウンドメディアそのものを否定するつもりもありません。
 
 
 

大切なのは、「あなたの会社に問い合わせをしたくなる」理由付け

 
SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)は強力な武器です。それゆえにSEOで上位を獲得することそのものが目的になり、「そのSEO結果が営業活動(あるいは売上)につながるのか?」が忘れられがちです。
 
例えば、メルマガ「秋元通信」は、検索キーワード「四谷怪談、真実」や「方向音痴」で、SEO上位を獲得していますが、当然ながら、これらのSEO結果が、秋元運輸倉庫の売上に直結する可能性は皆無です。
 
ではなぜ、「秋元通信」では四谷怪談や方向音痴をテーマに取り上げた記事を書いたのでしょうか?
 
それは、読者の皆さまが、喜んでくれたり、おもしろがってくれたり、あるいは読者の知的好奇心を満たす役目を果たすことを期待しているからです。
「秋元通信」の目的は、当社のブランディングであり、「物流業界の井戸端会議」をコンセプトにしているのですが…、この話は、過去に何度もしておりますし、本稿のテーマとはずれるので割愛しましょう。
 
そもそも、SEOで上位を獲得するのは難しいです。良い記事を書けば、それだけでSEO上位を獲得できるというものではありません。SEO対策は、時間と手間、投資が必要です。
つまり、SEOは、「やれば必ず結果が得られる」というものではないのです。
 
「そんなことを言ったら、そもそもマーケティングなんて意味がないし、インバウンドセールスなんてできないじゃないか?」──そんなことはありません。
 
マーケティングと営業は、顧客獲得活動における車輪の両輪のような役目を果たします。
また、SEOは大切ですが、そもそもオウンドメディアの目的は、SEOだけではありません。
 
これまた誤解を恐れずに申し上げれば、SEOというのはWebサイトを含めたメディア・広告・宣伝戦略に、相応の資金投入、相応の人材投入を行うことができる企業に向いたやり方です。あえて言えば、SEOとは強者の戦略なのです。
 
対して、資本力や人材に乏しい企業でもオウンドメディアや、プル型/インバウンド型セールスは可能です。
その方法論は、事例とともに次号でご案内しましょう。
 
 
 


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