秋元通信

「クルマはどうなるのか?」、「Post COVID-19の移動に関する消費者意識調査」(デロイト トーマツ)を読み解く

  • 2023.11.21

「単なる移動手段」「意味なし」と答えた人が、全体の7割…
 
デロイト トーマツが2023年10月11日に発表した、「Post COVID-19の移動に関する消費者意識調査」の調査結果からは、クルマに対する意識の変化が如実に表れています。
 
しかもですよ。
 
「クルマに対するイメージ」という設問に対し、コロナ前後で「単なる移動手段」「意味なし」と答えた人のトータルは7割で変化ないのですが、「意味なし」と答えた人が、17.6%(コロナ前)から21.4%(コロナ後)と増えたと言うのですから。
 
しかし一方で、本調査では、「ホントにクルマは必要とされていないの?」と勘ぐりたくなるような結果も得られています。
 
秋元通信流に読み解いていきましょう。
 
 
 

移動傾向のサマリー

 

  • 2018年比で人々の移動量は7.0%増加
    • 特に増加しているのは、「三大都府県居住者」(31.8%)と「30代」(37.3%)。
    • 逆に減少しているのは、「三大都市圏郊外居住者」(マイナス11.7%)と「50代」(マイナス9.1%)

     

  • 「出張」(マイナス27.7%)や「業務」(マイナス23.7%)の移動量は減少しているものの、「通勤」(10.5%)、「通学」(34.2%)「買い物」(28.3%)が2018年比で増加
    • 7割以上の人が、コロナ前と同等の頻度で通勤している反面、20%強の人が在宅勤務を実施している。
    • 「コロナ前よりも通勤頻度が減った」という人は、「三大都府県居住者」で17.8%。「三大都市圏郊外居住者」では「20.7%」。
    • 通勤のための移動時間は、全体で3分増加。「三大都府県居住者」では4分、「三大都市圏郊外居住者」では6分増加。
    • 「飛行機利用者」は、マイナス33.0%。「新幹線利用者」はマイナス28.6%とそれぞれ減少。

     

  • 「マイカー利用者」は18.6%。「自転車利用者」は87.5%、それぞれ増加している。

 
移動量が増加しているのは当然でしょう。
特に、就業者のリモートワーク以上に、学生はリモート授業が広く長く行われていましたから。
 
通勤時間が長くなっている原因として、本調査では「コロナ禍をきっかけとした郊外への引っ越し」と「公共交通機関のダイヤ見直し(運行本数の減少)」を挙げています。
 

飛行機・新幹線の利用が減っているのは、コロナ禍をきっかけにリモート会議が普及した影響もあるのでしょうね。
 
ただし…、ですよ。
マイカーの利用が増えているにも関わらず、クルマに対する再評価につながらず、「『単なる移動手段』『意味なし』と答えた人が、全体の7割”もいるというのは、少し解せません。
 
 
 

移動手段とクルマに対する意識の変化

 

  • 移動手段に求めるニーズとして、「安心」がTOPに来るのは、コロナ前後で変化なし。
    • ただし、「三密回避」「安全性」といったニーズが低下し、逆に「乗換なし」(20.0%)や「快適」(12.7%)、「時間通り」(10.8%)が上がっている。
    • プライベートの移動ではコスト意識が下がっている。

     

  • 「クルマに対するイメージ」では、低所得者層、高所得者層で二極化
    • 低所得者層では74%が、「単なる移動手段」「意味なし」と回答した。
    • 高所得者層では、「家族・友人との時間」(16%)、「運転が好き」(9%)、「自己表現・ステイタス」(11%)と、計36%がクルマの所有を肯定的に捉えている。
    • マイカー保有者、非保有者ともに、今後の保有意向は下がっている。
    • マイカー保有者の28.8%が、今後マイカーを保有しない理由として「ローン・維持費」を挙げており、コロナ前の15.0%と比べ大幅に増加している。
    • 同時に、「運転が好きではなくなった」(15.4%)や「(通勤通学や送迎のために)不要になった」(15.4%)が増加している。

 
移動距離の増加に伴って、「マイカーの利用者が増えている」「移動手段に対するコスト意識が下がっている」にも関わらず、「マイカーが欲しい」と思う人が減っています。
 
これはクルマ保有における購入費・維持費用に対する問題意識が上がっていることに加え、「予定時間通りに乗換なし(手間なく)移動すること」という移動に対するコストパフォーマンス意識の高まりが原因となっているのではないでしょうか?
 
同時に、カーシェア、レンタカーなどの利用を前提に、クルマを保有しないと考える人が増えたのではないか?、という推測も成り立ちますが、実は本調査からは、その傾向が見て取れません。
 

  • レンタカーの利用者は、コロナ前:8.4%からコロナ後:5.0%に減少。
  • カーシェアの利用者は、コロナ前:1/25からコロナ後:1.3%に微増。

 
特に注目されるカーシェアについては、認知度が向上しているものの(コロナ前:87.5%→コロナ後:92.8%)、利用希望動向はむしろ減っています(コロナ前:4.9%→コロナ後:2.3%)。
 
 
 

クルマ利用者を増やす方法は

 
筆者自身は、免許を取得してから40歳半ばまではマイカーを保有していましたが、現在はカーシェアを利用しています。
そんな話をある30代女性と先日話していたら、興味深い話をしていました。
 
「たまたまレンタカーでポルシェに乗ったら、その魅力にハマってしまい、月に10万円近くポルシェを借りていたんですよ。『これは買ったほうが安いな』と夫とも話し、ポルシェを買ってしまいました」
 
本調査において、高所得者層にクルマ好きが多いというのも、この文脈上にあるのではないでしょうか。
 
端的に言えば、「購入してみたい!」と思うほど魅力的なクルマが少なくなったということです。
最近のキャンピングカーブームも、同様の文脈上にあると、筆者は考えています。「より高いお金を出してでも、趣味やライフスタイルに合致するクルマが欲しい」、そう考える人が多いということですから。
 
別の考え方もあります。
クルマを単なる移動手段と捉えるのであれば、移動がラクなクルマをマーケットに提供すれば良いのです。つまり、自動運転自動車です。
 
現在、完全な自動運転自動車はまだ存在しませんが、自動運転に近しい機能を持つAAC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やレーンキープアシスト、追従ドライブ支援機能などが搭載されたクルマは、既に存在します。
ただし、こういったクルマは比較的高価なクルマを中心として普及しています。
実はコレ、マーケティング戦略としては逆で、クルマを移動の手段としてしか必要としていない、軽自動車などに搭載したほうが、結果的にクルマは売れるのかもしれません。
 
もしかすると自動運転技術が進化、あるいは社会実装されていく現在は、EVやFCV(燃料電池車)の普及と合わせ、このままクルマの利用が衰退していくかどうかの転換期にあるのかもしれません。


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